おれの好きな


おれの好きなザリガニは赤い

おれの好きなザリガニは強い

おれの好きなザリガニは臭い

おれの好きなザリガニは疎開

おれの好きなザリガニの特急列車の旅

二泊三日で岐阜へとひとっ飛び

おれの好きなザリガニ

おれの好きなクワガタは固い

おれの好きなクワガタは痴漢冤罪

おれの好きなクワガタは有罪から無罪

おれの好きなクワガタは上半身が無い

おれは戦わせることにした

おれの好きなザリガニと

おれの好きなクワガタを

二匹は激しく争った

おれはガムを噛みながらそれを閲覧した

「名勝負だ!」

ガム

おれはそれだけで三ヶ月は生き延びる自信がある

母ちゃんに一回だけ言ったことがあるんだ

「晩飯はガムでいいよ」

って

そうしたら母ちゃんが激怒した

「ガムってなんだい、母ちゃんをバカにしてんのかい!」

だって

ただおれはガムが好きなだけなのに………

母ちゃんは言った

「まさか母ちゃんの手料理よりもガムの方が美味しいなんて言うんじゃないだろうね? もしそんなことを抜かしたら四肢をもいで屑籠に捨てるからね」

おれは首をぶるんぶるん横に振った

母ちゃんは続けた

「母ちゃん、そんなこと言われたらたとえ我が子でも殺害しない自信が無いよ」

包丁を握り締め鬼気迫る表情でおれを見つめる母ちゃん

この詩はここで終わる

夏の海で溺れて死ぬようなもんだな


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