何より美しい花


わたしが

わたし自身に囁きかけた

壊れてしまえと

闇の中で

ただ息を殺し

じっとしている時間はもう終わり

ああ

わかっているよ

あと少ししたら

ここから抜け出すさ

とても静けさに満ちた地下室で

破裂寸前のわたしが

まだ行儀良くそこに座っていた

視界の端に映る造花たちは

永遠にそこで咲き続ける

逸脱、出来ない

きっと騙されている

わたしは最初からある夢も希望も興味が無い

ぬいぐるみが突然、喋り出す

「きみもぼくの仲間だと思っていたよ」

悪かったね

わたしは人間なのさ

さあそろそろさよならしよう

利き腕をゆっくりと持ち上げ指を開く

それは何より美しい花さ


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