おれには才能がある


おれには才能がある

そう自分に言い聞かせた

通りすがりの誰かに言ってみた

「おれには才能があるぞ」

そいつは困ったように言った

「は?」

自分が今、天才と対峙しているということに気付いていないのだ

おれは憐みを込めた目で言った

「おれには才能があるけどきみには無いね」

残念だけど頑張ってね

おれには才能がある

それは間違いない

ただなんというか………

おれの思っていたのとどうも若干、違うらしい

才能があればいいというものでもないらしい

「………」

時々、耐えられなくなる

ぬいぐるみをぶん殴ったりして解消する

もしかしたらこのまま終わってしまうのではないか?

だがそんなのってありか?

ありらしかった

おれには才能がある

それはまず間違いではない

だからなるべく大きな声でそう口にする必要がある

「おれには才能があるっ」

真新しい森で

早く他の誰かが来るのを待っている


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