おれの新幹線


おれの新幹線が暴走した

いや

そうじゃないんだ

正確に言おう

物事はなるべく正確であるべきだ

かつておれの新幹線が暴走していた

「おらおらそんなとこにいると撥ねられて殺されちまうぞ」

そんな感じだった

呑気に黒糖飴なんて舐めてる奴はみんな巻き込まれて死んだ

おれの新幹線

それは凄かった

ぐんぐん進んだ

しかも滑らかだった

繊細かつ大胆な存在だった

一つの完成形を提示した

「おれの新幹線どうよ?」

自信満々で問い掛けた

博士が言った

新幹線博士だ

「確実に暴走していますね」

ふふん

おれの新幹線は凄まじい速さで直進して行った

だがおれを置いて成層圏の彼方へと行ってしまったのかもしれないな

取り残されたおれの抜け殻

かつておれの新幹線が暴走していた

今はただその記憶があるのみ


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