寿司屋爆破事件


おれの寿司屋が爆破された

そうならなければいいと願っていたが

その願いは届かなかった

神様は空にいなかった

おれの寿司屋は木端微塵に吹き飛ばされた

「ああ! おれの寿司屋があ!」

おれは叫んだ

寿司屋が粉状に変化した

膝を突いて項垂れた

それはとある平日の午後に起こった

爆破予告された

「あなたの寿司屋、これから爆破します」

何、言ってんだこいつ?

おれは思った

頭おかしいんじゃねえか?

受話器を置いた

頭がおかしいのはおれだった

この世界のことをなんにも知らなかったんだ

ただ寿司だけを握って来た

それでなんとかなると思っていたんだ

一生懸命、頑張って魚の死体を処理した結果がこれだ

おれの寿司屋は爆破された

飛び散った残骸を呆然と眺めさせられた

信じられない出来事が起こった

だって

だって………おれの寿司屋が爆破されたんだぞ!

やがて警官がやって来た

おれに問い掛けてきた

「何か心当たりはありますか?」

あるわけない

どんな心当たりで寿司屋を爆破されなくてはならないのか

かつてここにおれの寿司屋があったと言ってももう誰も信じてはくれないだろう

それほどまでにその場所は荒廃しきっていた

涙が出た

止めどなく

こんな理不尽、到底、受け入れられそうもない

どうしておれの寿司屋が爆破されなくてはならなかったのだろう?

どうしてそれは他の寿司屋ではなかったのだろう?

この世界はめちゃくちゃではないか

寿司屋が一つや二つ吹っ飛ばされても誰も何も言いやしない

皆、耳にイヤホンを突っ込んで足早に去って行くだけだ


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