第十三節:噂

 『ゲルハート』は「一応倒したという証だ」といって大剣とかぶとを魔法の布で包んで衛兵詰め所に持ってきていた。


 衛兵は、「ああ間違いない、この禍々しい魔力……、デスソウルイーターのものだ」という確証が得られ、報奨金をまたもやもらって来たのである。


「四人であの数をヤッたのか? すげえな」といわれそこでも冒険者証を提示したため、ランク十六のパーティーがレナウンに現れたという噂でもちきりになってしまったのであった。


 そのまま泊まる宿の話はせずに広場で落ち合って、レナウンで二番目に大きな商会の宿屋に泊まる案が決まったのであった。


 御者は改めて『ウィーゼル』が引き受け私たちは馬車の中を見えないようにして報奨金の分配を行っていたのであった。


 今回は相手が軍団規模ということもあり報奨金の額も大きく、一人当たり二十五プラナだった。


 私の現額が、四十七プラナ二千七百九十七ゴルト七十七シルズ八十ブロスとなったわけである。


 旅行財布の中身[3.972kg]

 十P×四[0.18kg]、五P×一[0.03kg]、一P×二[0.012kg]、

 五十G×五十四[3.24kg]、十G×九[0.27kg]、五G×一[0.025]一G×二[0.03kg]、

 五十S×一[0.05kg]、十S×二[0.07kg]、五S×一[0.025kg]、一S×二[0.04kg]


 旅行小銭入れの中身[0.16kg]

 五十B×零[0.00kg]、十B×八[0.16kg]、一B×零[0.00kg]、

 五十Ca×零[0.00kg]  貨幣全重量四.一三二キログラム、


 体重を除く全備重量が六十九.〇〇二キログラムとなったのであった。


 宿代はなぜか『ウィーゼル』が四人分と馬車分全て払っており、「いいの?」と聞いたくらいであった。


 元々カルトルでの長期滞在に向けて、節約していたそうなのでこれくらいはしないとということらしい。


「フレイまでなら宿の面倒は見るぜ」と『ウィーゼル』がいったこともあり、そういうことになってしまったらしい。


 久しぶりのエンシェントフォース一部屋であったがシャワーもバスタブこそついていないものの共同で使えるらしいので、女性組が先行して入ることになった。


 当然武器や鎧を外してからである。


「久々のお風呂ですねーシャワーだけですけれども」というと髪を例の魔法で洗いって魔法でコンディショナーを馴染ませると今度は体や顔を洗い、髪を乾かしながら熱いシャワーを浴びたのであった。そのまま上がり、髪や体を乾かすと普通の服に着替え一見冒険者と見えないようにしたのであった。



「久しぶりの夕食ですね」と話しながら部屋に戻ると男性陣は武具を外して、戦術駒の真っ最中であった。


「お風呂空いたわよ。行って来たら?」と『セリア』がいった。


「そしたら部屋は任せるぜ。よろしくな」というと男性陣は着替えを持ち部屋から出て風呂場に向かったのであった。



「特殊繊維のドレス買っちゃえば?」とは『セリア』の誘惑ではある。


「もう少し貯めていいデザインのシンプルなものがあったらそれに決めます」と答えておいた。


 実際のところ今買うのでは、重いものを抱え込むだけになる可能性もあるのであった。


 そういうモノは部屋に置いてあったカタログだけでは、判断できないのである。


 私の感覚が少し変なのかもしれないが、私はあまりゴテゴテしたドレスが嫌いなのであった。


 シンプルこれに尽きた、地が綺麗でシンプルであるモノそういうモノが好きであるのだ。


 その割にはゴテゴテした鎧を着てるって? そんなことは無い私の鎧はばらしてもすぐに組上げられるほどシンプルな創りで軽い白いサーペントメイルなのだ。


 師匠もおっしゃっていた。


 装備は軽いものに限ると。


 とふと時間が過ぎていた、「男性陣遅くないですかね?」と『セリア』に聞いた。


「どうせまた我慢比べしてるに決まってるわ。男ってそういう生きものですもの」と達観した感想を述べた。


 するとその時であった。


 丁度というか二人が帰ってきたのであった。


「まだまだこの歳だから、負けねえぞ……」と。


「ね、そうだったでしょ」と『セリア』が達観した答えを述べた。


「どうかしたのか?」と『ウィーゼル』がいった。


「そろそろ夕食ですよ」と私がいった。


「すまん、つい熱くなっちまってな」と『ゲルハート』が謝った。


「まあ間に合いそうですから良いですけど」と私が答えた。



 そして夕食、一泊二十シルズは取るだけあってかなりいいものは出た。


 前菜が柑橘系白身とカルラフィッシュの白身魚とカルラ蟹身のテリーヌだった。


 双方ともカルラ内海(塩湖ソルトレイク)で捕れる魚介類であアリ濃い塩分の中生きていると言う不思議な生体の生き物なのである。


 柑橘系はレナウンの旧街道沿いで栽培されている、クライプの果実だろうと思われた。


 濃厚な塩味の白身に赤い淡い味の蟹身が合って、そこに酸味のある甘みが付くのである。


 間にゼリー状の甘みを引き立てる、レナスタのゼリーが含まれているので美味しいものだといえた。


 そしてスープである濃厚なカルラ内海の塩を使用した、ベーコンと白野菜カブのコンシウムスープである。


 塩湖であるため良質な塩が取れるのである。


 その塩で漬け込んだ白野菜とベーコンの塩漬けをベースにコンシウムと呼ばれる複合調味料を贅沢ぜいたくに使ったものだった。


 そして魚料理である。


 カルラジャケという、塩湖特産のジャケのムニエルである。


 赤身がかったと言うよりも紅色に近いその身には、クライプの温ゼリーがかけられている。


 独特の味であるカルラジャケが、さわやかな風味になるのだ。


 牛の乳より作られるバターで焼かれたコクたっぷりのジャケに、柑橘類のサッパリゼリーとはよく考えられている。


 そう思った。


 さらにエッレナスタアンドクライプ(この辺りでエッが付くのはシャーベットの証)が口直しに出るのだ。


 これはこれで、とても美味しく頂ける工夫だった。


 そこでメインの肉料理、カルラ牛フィレステーキレッドフルボディー仕立ての登場である。


 カルラ牛は通常の牛より体躯が一回り大きくフィレのとれる量も違うためかなりのボリュームではあるのだが、性格自体は温厚であまり暴れないと聞く。


 それに通常のフィレ肉よりも肉質が柔らかく、レッドフルボディー大胆に使ったソースとの相性も抜群である。


 コレも美味しいと思った。


 最後に登場するのはカルラ牛をまんべんなく使ったといえる、クライプとのレアチーズケークであろう。


 共に白いため境界線を導き出すのは難しいらしいが、色が若干異なりクライプが寒色系の白、チーズケークが暖色系の白であることが分った。


 これもまた美味であったことを書き記しておく。


 静かに食べているときに気になったことがあった、夜な夜な若い娘をさらう悪魔の話であった。



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