第二十節:湖上の悪魔

 船が汽笛を警告で発信し始めた。


 そして急減速に近い後進全速くらいの勢いで速度を落とし始めた。


 嫌な予感がしたので「装備を!」と私がいった。


 『セリア』と私は女性部屋へ行くと即装備を付け始めた。


 男性陣はそのまま装備を付け始めた。


「エグジスタンス!」と唱えると船の停止したさらに前方に異界が出来上がっていることが分った。


 小さいが島が丸々一つ異界であるのだ。


 しかも半島のようにカイリの街のほうにも伸びていた、まるで島で通せんぼでもするかのように。


「メインデッキへ」と私がいった。


『セリア』はガードだけ付けると部屋を飛び出した。


「『ウィオラ』は?」と『ゲルハート』がいった。


「装備中よ。状況確認のために、メインデッキへ上がりましょう」と『セリア』がいった。


「船は後進してる状態の様だ」と『ウィーゼル』がいった。


 そして私も部屋からフル装備で飛び出した。


「船の前方に異界がある進入しないように!」と皆にいった。


「とりあえず、メインデッキへ」と私がいった。


……


「外が見えないと何もできない!」とクルーを説き伏せた。


 すでに魔物はメインデッキに数匹降りて来ていた。


 クルーは一部の者しか戦えず、セイラーも同様だった。


「メインデッキに上がりたい! 通して!」とメインデッキへの扉を閉めた副船長にいった。


 目の前でカタナを抜いた。そのまま「マジックソードエクストラクション!」と唱え刀を光らせた。


「船に、取りつかれている。今、出ないと遅い!!」と副船長をも説き伏せる。


「分かった。頼むお嬢様」というと一瞬開けてくれるその一瞬で十分だった。


 私たち四人が瞬間に飛び出して、私は目の前にいた化物を一体即斬り倒した。


 それを確認すると、また扉は閉じられた。



「ショックバレット!」と魔法も見舞う、さらに三匹倒した。


「誰かいるー?」残っているのは誰かいないか確認しながら前方の扉前まで駆け込んだ。


「メインデッキより上に行かないとブリッジに取りついている魔物を払い落とさないと!」と言ってブリッジの上に上がる階段に脚を掛けた、その上に人がいるようだったが味方ではなさそうだった。


「敵がいる」とだけいうと一気に駆け上がり、ブリッジの上に居る術者に斬りかかった。


 私の後ろには『ウィーゼル』が来ていた。



◆ 私『セリア』視点


 メインデッキでは『ゲルハート』と私が敵が尽きない攻防戦を前の扉前で繰り広げていた。


「敵が減らん!」と『ゲルハート』がいいながら数匹をまとめて薙ぎ払った。


「無数にいるわ!」と私はレイダーを船中心で球状に展開していた。


 数を数えることもできるのであるがそのカウント数は百五十体と表示されていたレイダーの半径は船を中心にしたため二百メートルである。



◆ 私『ウィオラ』視点


 ブリッジ上では術者VSバーサス私と『ウィーゼル』の戦闘が繰り広げられていた。


 当たらない、「アタックシフト!」とほぼ攻撃全振りにすると術者にはかすり始めたが致命傷にはならない。


「ゴアァァァァ!!」と『ウィーゼル』の後ろに降り立った大型一体が叫んだ。


 『ウィーゼル』と私が背中合わせで陣を組んだ。


「戦場居合!」と私が叫んで突っ込んだ、そして「刀嵐ブレード・ストーム!」と叫ぶ。


 私に取りつこうとしていた魔物と術者が吹き飛ぶ魔物は全て飛び散った。


 相変わらず、回避だけは術者はうまいそれも今の刀嵐で全容がわかった。


 相手は、人族ですらない。


 中級悪魔だったのだ。


 上級呪文が要るか? と思い納刀する。


 真の居合を討つ気だった。


 対象との距離を詰めつつ一点ブリッジ中央部で動きを止めた。


 異界感覚ですでに対象の位置は確認している。


残像剣ディレイ・ソード」と静かに術をかける。


「居合!」といいながら「真空刀ソニック・ブレード!」と叫びその直後、術者が回避する寸前! 割込インタラプトで「回避阻害アヴォイダンス!」と続けざまに魔法を連撃する。


 流石にそれは予測できなかったか今度は胴体を深く抉り斬った。


 今のは致命傷のはずだがさらに攻撃を加える。


 問答無用の零距離戦場居合が、最大連撃七連居合が深々と抉り斬った。


 流石に今度こそ対象が沈黙するが、まだ終わらない。



過剰出力オーバーロード!」と突きさしたままの対象に追い打ちをかけた。


 さすがに刀から青白い聖なる炎を噴き上げるさまは、周囲の魔物たちを近くに寄せ付けないだけの威力を見せつけた。


 同時に、事切こときれる中級悪魔。


 刀を引き抜くと同時に、中級悪魔だったものが黒い粉となって散った。


 吸い込まないように口元を押さえ、少し後ろに下がる。


 その間に後ろでも『ウィーゼル』が、大型の魔物を聖なる力で持って叩き伏せていた。


 サイズは関係ないらしい。


 要は意志力のぶつかり合いだった。


 接戦の末、相手が根負けし殴り合いと勝負に『ウィーゼル』が勝ったのであった。



◆ 私『セリア』視点


 ブリッジの扉前では『ゲルハート』にとっては、死闘と呼べるたたかいぶりで襲い来る小悪魔をグレートソードで薙ぎ払っていっていた。


 私からの支援、と情報を頼りに。


 レイダーの表示敵数は、残存十と表示されていた。


 味方の色を緑に変える、と残存は七と表示が変わった。


「後は見えてるやつだけよ!」と私が叫んだ。


「ショックバレット!」と数匹纏めて撃ち抜いた。


 レイダーの表示が、残存二に変わる。


 そしてブリッジの上からも、二点が消え残存:零に変わる。


「何匹やったのかもう数えてねえぜ!」と『ゲルハート』が私にいった。


 『ウィオラ』と『ウィーゼル』の二人がブリッジ上から降りてきたのを私は確認した。


「大丈夫、それは味方よ」と『ゲルハート』の行動を口頭で留めた。


 『ウィオラ』に怪我というものはほとんどないが『ウィーゼル』は壮絶な殴り合いだったらしくかなり傷ついていた。


 そのほとんどが打撲であり、骨まで届いたものは無いようだった。


 そして目の前で神の奇跡「プレア」を発動し『ウィーゼル』自身と私たちの怪我を一瞬で治療した。


 中級悪魔が滅びた段階で、島は跡形もなく異界に消えて行った。


 残っていた悪魔も異界へ強制的に返された。



第三章 第二十一節へ

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