第十六節:給仕付き

 時計の針が十七時五十分を指し示した。


「さて時間になったぞ」と『セリア』はいうとベッドの上から飛び起き椅子の背にかけてあるドレスを速攻で着込んだ。


 その時間わずか一分。


 私はベッドに腰かけていただけだったため立ち上がってドレスのすそそろえるだけで済んだ。


 一緒に部屋から出て、男性陣の部屋をノックした。


「そろそろ夕食ですよー」と『セリア』は声をかけた。


 すると、すぐに二人とも出て来たのであった、『ゲルハート』はラフな格好のままではあるが着替えており少し服装が違っていた。


 『ウィーゼル』のほうもちゃんと着替えており。


 風呂に入ったことをにおわす、会話もしていた。


 男性陣のほうが一枚上手うわてだった様である。


「船内売店見に行ったんだけど今一つでねー、特に何も買ってこなかったんだ」と『セリア』はいった。


 そして一緒に食堂へ行くのであった。


 今度は三分前に着き、誰も入り口に並んでなかったので「一番最初ですね」といいながら並んだのであった。


 そして一分前に食堂が開くと案内係が出て来て、最初の一グループとして案内してくれた。


 座る席は決まっているようなので、昼食と同じ席に案内されたのである。


 相変わらず特等の席は、ガランとしたままで誰も来ないようであった。


 そしてディナーは始まった。

 初手から肉料理であった。


「サラト産のローストビーフでございます」と昼と違って専門の給仕が付いた。


 ローストビーフも当然普通に存在する。


 冷蔵庫があるし、製氷機や冷凍庫も魔導式ではあるが存在するのだから。


 変わったところでいえば、魔導電子レンジも存在しているところであろう。


 サラト産ということは目的の港から一日と少し離れたところの街である。


 ひょっとしたら迂回うかいして行くことになれば、通るはずの街である。


 因みに給仕さんは、このテーブル専属のようで離れることは少なかった。


 ほぼ離れずに私のそばにいたのであった。


 給仕が付いても、私のテーブルマナーはブレず健在であった。


 実家では、常に給仕が付くのであるからして。


 ローストビーフは硬すぎず、柔らかすぎず、丁度良いものであった。


 皆のも同様で皆堪能たんのうして前菜を食べたのであった。


 次の料理がやってきた。


「キシリ産の野菜によるものとキシリ名物の魚の押し酢漬すずけでございます」と説明された。


 野菜の和え物は三種の野菜により構成されていた、青物と赤物と白物である。


 青物は柔らかい葉の部分を使っているが鉄分が多めでホウレンソウに近いものと推測された。


 赤物はキシリでのみ栽培されている赤苗レッドシードリングと思われるこれも葉の部分のみを厳選して使用していた。


 白物はキシリ特産の砂糖大根のすべてが白いバージョンのこれも葉の部分を厳選して使用しているものと思われた。


 白物は甘かったからである。


 赤物は少々酸っぱかった。


 押し酢漬けは保存食として比較的ポピュラーだが、まさかここで出て来るとは思わなかった。


 問題は何の魚の押し酢漬けかである、臭みがあるがうまい魚として名前が上がるのが底床サラトナマズの可能性があった。


 数が取れるが、身が独特の臭みがありそのままでは調理できず、塩漬けや酢漬けにしてから調理することが知られていたからである。


 酢はそこまで濃くなく軽く、酢漬けにしてから一旦あぶったものと推測できた。


 白身で炙った後が、あったからである。


 味は淡白ではあるが、高栄養である。


 アルギニンと呼ばれる成分を多く含むからといわれている。


 その身を和え物と一緒に食べるとこれがまたたまらなく美味いのである。


 男性陣は堪らず、追加で白葡萄酒ホワイトワインをオーダーしたようだった。


 給仕さんにいったところ給仕さんは追加メニューを了承し人を呼んで白葡萄酒とワイングラス二つを持ってこさせ、新規で開けて白葡萄酒を上手く注いだのであった。


 そして二人に渡したのである。


 『ゲルハート』も『ウィーゼル』もほほが落ちそうだといいながら白葡萄酒を飲み和え物と白身魚を美味しそうに食べていた。


◆ 私『セリア』視点


 私は冷静に分析しながら食べていた。


 なぜ、今なのか? 給仕は付くとすれば昼から付いて居てもおかしく無かったはずなのだ。


 『テッラエ』のファミリーネームが、頭に引っかかった。


 それを聞いた船長が、特別に手配しない限りこんなボーナスはあり得無い、そう思ったからであった。


 但し、確証はなかった。


 そしてメインディッシュの時間になった。


「ベリル産の子牛のイチボでございます、レアで焼いておりますので」と給仕さんは説明してくれた。


 男性陣は赤葡萄酒レッドワイン重量級フルボディーを、さらに追加した。


 給仕さんにいったので、さっきと同じようになった。


 メインディッシュの後に海鮮パエリアが追加されていた。


 こっちはメニューに載ってないものであり明らかに後付けしたものだといえた。


 何故ならば同じ一等であるが他の方はバゲットが出ていたからであり、このテーブルのみに後付けされていたからである。


「サラト湖で取れた素材のみによる湖鮮パエリアでございます」と給仕さんは説明してくれた。


 もちろん味がおかしいなんてことは無く、私としては“ウマッ”と思わずいいかけたからである。


 口はウの形になったが、発声までには至らずしのげたわけである。



 そしてデザートの番になった。


 エッシャレオン一品になって居たが、明かに他の卓に出ている量の一.五倍はあった。


 明らかに、ゴマすりっぽいものを感じたわけであった。


 ただ昼のエッシャレオンとは格は違うと思われ、より上級のエッシャレオンであったのは確かであった。



第三章 第十七節へ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る