第三章 鬼人戦 船旅

第一節:嫌な噂

 今回のキマイラ退治事件はアマルテオではかなりの噂にはなっており、あの手強いキマイラを四人パーティーが倒したらしいぜ、ってなわけで街道沿いを噂と一緒に走っているようなものであった。


「コレだからゴシップは困るんだ」とは『ゲルハート』の弁である。


「事実なんだから仕方ないでしょ、あきらめときなさい」とは『セリア』からの話であった。


「ですよねー、派手にやっちゃいましたし」というのは私の意見である。


「隠しようがない所だからなあ、大衆の手前で上手く片付けるってのは難しいって言う、見本みたいなものだな」とは『ウィーゼル』の意見であったりする。


「商人だらけのところでやっちまったんだ、当面は噂は消えないと思うぜ」とは『ゲルハート』がいった失念であったりした。



 現財産額が二百四十一ゴルト九十六シルズとなったわけである。


 旅行財布の中身[0.715kg]

 五十G×四[0.24kg]、十G×四[0.12kg]、一G×二[0.030kg]、

 五十S×一[0.05kg]、十S×三[0.105kg]、五S×二[0.05kg]、一S×六[0.12kg]


 旅行小銭入れの中身[0.00kg]

 五十B×零[0.00kg]、十B×零[0.00kg]、一B×零[0.00kg]、

 五十Ca×零[0.00kg]


  貨幣全重量〇.七一五キログラム、


 体重を除く全備重量が六十三.三三五キログラムとなったのである。



 皆、六ランクから七ランクにまで成長しており、キマイラがかなりの強敵であったことがうかがえたわけである。


 そして、センシヴズラまでの道のりをひた走るのであった。


 センシウズラまで最速でも一日の距離であるため、その日はセンシウズラまでの道のりとなってしまった。



 そしてセンシヴズラでに夜に入り、村長の家の前の広場で円陣を組んでいる最中に街道沿いの悪い噂をセンシヴズラの村長『ハヤマ・キレーヌ』から『キルヒャ』さんが聞いてしまったのである。



 まず一つ目は、サライまでの街道沿いに今まで出没していなかった新しい盗賊団が追剥おいはぎのように現れるというのである。


 遭遇確率は低いが、見張りが居るらしいとのことで、盗賊団としての体裁ていさいたもっているということであった。


 新しい盗賊団は規模こそ小さめだがボスが厄介でという話を聞かされる。


「ボスがオーガノイドなんじゃ、アイツらとキマイラのせいでセンシウズラも孤立しかけておったのだが、キマイラが倒されたようだのうおぬしらが来れたということは、運では無く誰かがキマイラを討滅したからであろう」と村長は話した。


 そして二つ目は、ラームリッツァ遺跡に巣食う盗賊団がラームリツの町を占拠しており現在はサライが完全に孤立しているという話まで村長から聞かされたのである。


「サライそのものはアマルテオと同等の規模の街なので少しは持つと思うが……籠城戦には向かない作りだからな心配なんじゃ」とのことであった。


「王都ヴェゼルニアが比較的近いと言ってもラームリツまではどんなに速く軍勢を進めても十日は掛かるんじゃ、一番近い城塞都市シグネイチャからでもラームリツまでは四日は掛かる。今はここで休むがよかろう何もない村じゃがな」という話を『キルヒャ』さんが聞いてしまうのであった。


「サライまで歩を進められませんか?」と『キルヒャ』さんがわざわざ五号車にやってきた。


「ウチの商会の支店があるので魔導通話機があるんです。大旦那様にこのことを一刻も早く相談しないといけません、サライまで何とか護衛をお願いしたいのです」と『キルヒャ』さんがこうべげた。


「確かにラームリッツァまで行くのが当面の俺たちの目的ではあるが、盗賊団だろう。仮に俺らはまだいいとしても、他の二ランクパーティーの面倒までは見きれないぜ」と『ゲルハート』がいった事実である。


「それに俺たちだけでは、他の馬車までは守り切れないぞ」と『ウィーゼル』もそれには同意した。


「それに相手の規模が分かりません、現状は国王軍に任せるのが手でしょう」と『セリア』も同じ考えのようだった。


「私は戦術家じゃないから詳しくは知らないけど、オーガノイドってどういう人たちなの?」と私は問うことにした。


 それには『セリア』が答えてくれる。


「オーガノイドは体躯が最低でも三メートル、大きい者で五メートル以上といわれる亜人種です、力も桁外けたはずれに大きいですし俊敏しゅんびんさもあわせ持っています間違いなく強敵の一角です。それに盗賊団の規模が分かりません、全員がオーガノイドである場合はまず勝てないでしょう」と分析して詳しく解説してくれた。



「それは辛いな、五メートル以上か、飛び上がっても掴まれちゃう」とは私の出した答えだった。



「ワリイな『キルヒャ』さん、今回ばかりは慎重にならざるを得ない。盗賊団だからな何人いるか分かって、いても腕が並なのか強いのか分からない以上迂闊うかつには動けない。しかもオーガノイドと来た。あいつらは尋常じんじょうじゃねえんだ。戦ったことはあるから言えるんだ。そん時は仲間だったから、軽く手合わせをお願いしたんだが直ぐに負けちまったよ。今は無理はしない方がいい。アマルテオから早馬か他の商会の魔導通話機を借りるって線で手を撃たないか? 流石にパーティーの危機がかかっているときに無理は通せねえ」と『ゲルハート』はいった。



 それに頷く形でパーティーリーダーの『セリア』も同意の意を示した。

「何でしたら百ゴルトを資金として供出しましょうか?」と『セリア』がいった。



「コレは遊びじゃないからな。今までは行き当たりばったりで何とかなったが、今回ばかりはお手上げだ。こっちも傭兵団だっていうならカチあってもいいかもしれないが、小さなパーティーにそれは無理な相談だ」と正常な判断を『ウィーゼル』も下した。



「せめて人数とか規模が分れば戦況分析は出来るんだが、でもその分析ができてもこの規模を守り切るのは無理だぞ」と『ゲルハート』がいうに留めたのであった。



 いくら依頼人の前でも無理なものは無理と、通すことが大事な判断だ教えられたのである。


 コレは私にとって良い勉強になった。無理を貫くのではなく戦況判断をしろと師匠からも口を酸っぱくなるほどいわれていたことが、立証されたからでもあった。




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