第7話 魔物との初戦闘

 よし、トイレ問題は片付いた。

 スッキリした俺は自部屋に戻り今日の予定を考える。


 まずは昨日と同じで探検しながら食料確保かな。


 その前に朝食だ。

 普段の俺は朝食を食べたり食べなかったりで、必ず食べるという習慣持ちではないが、どうせ簡単な野菜サラダ(野草の直接食い)だしチャッチャと済ませてしまおう。


 シャキシャキ、モグモグと5分程で朝食を済ます。

 食後に水筒の水を飲む。


 装備を身に着け出発だ!


 空は雲もなく良く晴れて太陽の光が眩しくいい気分になる。

 敷地の外の森へ足を踏み出す。

 木々の隙間から木漏れ日が地面に降り注ぎ、草の葉っぱについた朝露に反射してキラキラと光を放っている。


 とても幻想的な風景だ。

 今日はまず南方向へ足を伸ばしていこう。


 周囲を観察しながら時々立ち止まり、野草を摘んでいく。

 昨日と同じなので慣れてきている作業だ。


 そんな感じで探検を続けていると、視界の隅に何かが動くのがチラッと目に入った。


 何だろうと顔を向けた途端にそれは俺を目掛けて突進してきた。

 咄嗟に左手を出し、それを払い除けようと手を振り回す。

 かなり重い衝撃を左手に受け、同時に左手に痛みが走る!


「痛てぇー!」


 痛みに堪えながら左手を見ると、手の平が裂けて血が流れていた。

 少しパニックになりながらも俺に突っ込んできたものの正体を見極める為にそいつに目を向ける。


 その正体は頭に鋭利そうな角が生え、凶悪な顔をした巨大なうさぎだった。


 もしかしてコイツが魔物って奴か?


 左手は痛いが、奴の眼を睨みつけながら俺は背中に背負った剣を抜いて巨大な角うさぎと対峙する。


 剣術なんてものは習った事もないが、右手に持った剣でいつでも相手を攻撃出来るように構える。


 さすがに魔物との初戦闘なのでビビって足が震えそうだ。


 巨大なうさぎは足元に力を溜め、ジャンプして一気に俺に迫ってくる。

 凄い跳躍力と速さだ。だが、俺の動体視力はその動きを捉えており、それに合わせて剣を振るうと相手の角と剣が当たり「ガキッ!」と音がして巨大うさぎの突進攻撃を防いだ。


「よし、今度は俺の番だ!」


 体勢を崩し、地面に叩きつけられ今まさに起き上がって再度攻撃してこようとする巨大うさぎに向かって右手の剣を一閃する!


「どうだっ!」


 俺の剣は見事に巨大うさぎの首を刎ねる!

 胴体から首が離れた巨大うさぎの魔物はその場で崩れ落ちた。

 そして、ようやく戦いの決着がついたのだった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 暫くの間、軽く放心状態になりながらその場で立ち尽くし、目の前に倒れる巨大なうさぎの魔物を見下ろしていた俺はようやく我に返った。


 すると、レベルも上がり新しいスキルも獲得したようだ。

 確認するとレベルは2に上がってる

 そして新しく獲得したスキルは《剣術Lv.1》《格闘術Lv.1》のようだ。


「おー! 剣術のスキルを獲得したぞ!」

「これで憧れの剣と魔法の世界を生きるのにようやく本当の第一歩を踏み出した感じだな」


 ところで格闘術はどうして獲得出来たんだろう?

 戦闘中にそんな要素なんてあったか?


 暫し考えてみると、たぶん最初に魔物が突撃してきた時に手で払ったのが格闘として認められたのだろうという結論に至った。


 たぶん、これもユニークスキル【神のきまぐれな力添え】の恩恵なのだろうがアバウトすぎないか?


 まあ、この魔物がどんな魔物なのか今はわからないがどうにかしなくちゃな。


 その前にまだ血が流れている左手がズキズキと痛む。

 剣を一振りしてから背中の鞘に戻し、右手で左手首を握ってどうしたもんかと思案に暮れる。


 とりあえず、水筒を出して水で血を流す。

 絆創膏も包帯もないし、どうやったら手当が出来るだろうかと考えたら知識が降りてきた。


《白魔法》を獲得したようだ。

 白魔法は回復魔法のヒールが使えるらしい。

 早速、心の中で自分に向けて呪文を念じる。


「ヒール!」


 すると俺の身体が軽く光に包まれ、傷が塞がり手は以前と同じく元通りになった。

 魔物との戦いで若干疲労した俺の身体も同時にリフレッシュされる。


「とうとうこの俺が魔法のヒールを使えるようになったよ!」


 嬉しくてちょっと感動!

 小躍りしたい気分。


 喜びの余韻に浸っていたいが、魔物の死体をこのままにしておくのはマズイので簡単な処理をしないとな。


 頭の中にあるラノベの謎知識で土魔法で穴を掘り、逆さにして血を抜く。

 それが済んだら穴に土を被せて元通りにする。

 そしてマジックバッグに収納。


 一旦、拠点に戻るか…


 そう決めた俺は拠点に戻る事にした。


 魔物との初戦闘を経験した俺は拠点に戻ってきた。

 さて、バッグに入れた魔物の死体をどうしようか。

 この肉って食べられるのかな?


 この世界に来てまだ野菜(野草)しか食べていない俺にとって、動物の肉は貴重なタンパク源だ。


 暫くの間、どうしようかと考え、とりあえず水場の水路に向かうことにした。

 食べられる部分を選り分けないといけないからな。

 血は水路で洗い流せるし。


 今朝作った水路は綺麗な水が流れている。

 トイレ用に作った建物もバッチリ鎮座してる。

 そこで俺は閃く。


 ついでに解体用の小屋も作っちゃおうかな。


 よし、決めた!

 解体用の小屋も作っちゃえ!


 トイレ用に作った建物の脇に土魔法で小屋を作っていく。

《造形》スキルを活用しながらイメージを作り上げ土魔法発動!


「おー! さっきより上手くいったな」


 かなり大きめの小屋が出来上がった。

 今度は最初から広めの入り口も大きなひさしも付いている。

 この小屋は床に工夫をして水路の水を小屋に引き込み直接水の流れで洗えるようにしている。

 水路の流れはかなり速いので、ものが沈殿する心配はないだろう。


 魔法、マジ万能!


 マジックバッグから魔物の死体を取り出す。

 床に置き、ナイフを右手に持つが…


 解体ってどうすりゃいいんだ?


 ここでまた躓く事になった。

 だって、元の世界じゃ動物の解体なんて業者以外の一般人はやらないじゃん。

 解体のやり方なんて知らないって!


 そう毒づいた俺の頭に例の知識が舞い降りてきた。

 どうやら《解体》スキルを獲得したようだ。


 ホント、アーク神様にはお世話になりっぱなしでありがたやありがたや…


《解体》スキルを獲得した俺は今までの悩みが嘘のように手に持ったナイフで魔物をサクサクと解体していく。

 見た目は半端なくグロい作業なのだが、俺の精神ステータスが余裕でフォローしてくれるので何という事もない。

 あっという間に解体は終わり、選り分けられた肉と毛皮や骨、そして角や歯。

 心臓付近から取り出した魔石が俺の手元に残った。


 丸く赤い色をした小さな魔石。


「これが魔石ってやつかね」


 勿論、魔石の現物を見るのは初めてなのでファンタジー感満喫中なのは言うまでもない。


 この肉はいざという時の為に保存しておくのがいいのかなと考えながら、でも今日は初戦闘のお祝いで早速食べた方がいいよなと食い意地の方が勝る俺。


 夜を楽しみにしよう。


 解体した肉などと魔石をマジックバッグの中に収納して自部屋まで戻る。

 上流側で水筒の水を入れ替え補充しておく。

 身体にもクリーンをかけておいた。


 探検が途中になってしまったので再度仕切り直しだ。


 この世界に魔物がいるのが確認出来たので改めてもう一度気を引き締める。

 死と隣り合わせの世界だもんな。


 だが、《白魔法》のヒールを使えるようになったおかげで心にはかなり余裕が出来た。

 一度戦闘を経験した事で心にゆとりも生まれている。さっきまでの俺に比べて成長してるはずだ。


 その後、周囲の探検を続け野草やキノコを採り、巨大うさぎの魔物と二度遭遇して倒し経験値も稼いだ。

 そして、その日の探検で俺はレベル3に上がったのだった。

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