私の周りは恋うつつ

月白藤祕

第1話 はじまりは…

私は大学生になった。大学は2つ上の姉と同じ大学である。


何故姉と同じ大学に行ったか気になる?

それは、姉が大学から帰ってこないという事態が多々起こるからである。

BL作家として売れっ子になってしまった姉は作業に集中しやすい大学に籠り、

時間を忘れて作業を行っているがために、私が回収役に任命されたのだ。


それと私がその回収役を引き受けたのは、姉を売れっ子にしたこのBL本に出てくる主人公の男がその大学にいると聞いたから。私はその主人公が最推しだから、会えるのならば行くしかないと思ったのだ。



さて、私が入学してから姉を初めて迎えに行った日。本来ならば講義は昼までに終わっていて、すでに帰っているはずの私が夕方まで大学のカフェテリアにいるのはおかしな話である。しかし、姉を回収する日々が始まったので仕方ない。姉には18時に迎えに来てほしいと言われていたので、18時ぴったりに漫画サークルの部屋をノックした。中からは笑い声などの楽し気な声が聞こえるだけで、返事はない。

仕方がないので、ゆっくりと扉を開けた。


開けた先には姉がこちらを向いて座っていた。姉の前には男の人が二人座っており、後頭部しか分からない。私が姉の視界に入るように、手を大きく振った。


「あ!結~お迎えありがとう!」


そう言って姉は私に気づき、声をかけてきた。姉のその行動で私の存在に気づいた二人が一緒にこっちを向いた。一人は黒髪のイケメンで、少し驚いているようだった。もう一人は…ぜっっったいに私の推しだ!!!!という確信が持てるほど、推しの雰囲気が出ている優しいお顔をした方だった。そしてニコッと笑った顔が尊い…。


二人は立って私の前に来た。この子が言ってた子だよね?と推しが私を視認している。視界が霞んできた。姉が私の横に立った。


「結は分かるかもしれないけど、こちらの方がいつもお世話になっている私の漫画の主人公 天野 尊さん。で、こちらがお友達の藤ヶ崎 竜さん」


ほらほらほらほら!やっぱりそうじゃないか!と私の心臓が太鼓を打ち始めた。祭りのようで、心が叫びすぎて声に出てきそうになり止めるのが大変だった。


いつもお世話になっていますと二人は挨拶してくれた。笑顔が眩しい。

正直そこからの記憶はない。姉からは泣き始めて、そのまま倒れたと聞いた。

あまりにも嬉しかったのだろう。でも推しの前で醜態を晒してしまったことは、後悔してもしきれない。もし次に会うことがあれば、謝罪しようと心に誓った。


そうやって、この物語の主人公である二人の男たちと出会った。

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