この花がしぼむまで

七瀬モカᕱ⑅ᕱ

香水

 ふと、懐かしい香りがした。昔好きだったラベンダーの香り。

 ラベンダーの香りと共に思い出すのは、大好きな幼なじみのこと。


「今更だよねぇ......昔の事だし。」

 昔を思い出して少しセンチメンタルになっている自分に笑えてくる。もう三年も前のことなのに、今でもはっきりと覚えている。もし、今更会えたところで、どうやって気持ちを伝えようかなんて考えている自分が馬鹿らしくて仕方がない。


「なつかしいなぁ......」

 昔はその幼なじみ、そらとたくさん遊んだり、ちょっとしたイタズラをしたりした。

 ある時そらが、『香水ってどうやってつくるんだろう?』なんて聞いてきた事があった。


 そらは可愛い男の子で他の男子にまじって、野球やサッカーをするというよりは、お裁縫や料理の方が得意だった。だから周りの男子達からは、戸籍上男子なんて言われていた。本人は全く気にしていない様子だったけれど。

 香水をら作るために理科室の実験道具を借りてこようとか、理科の先生に聞けばわかるかもしれないとか。香水作りの話をしている時のそらは本当に楽しそうだった。


「今どうしてんのかな.....。」

 そらとは、別々の高校に進学した。

 よっぽどの事がない限り、そらも今高校三年生になっているはずだ。お互い就職活動や大学受験が落ち着いたら、一度会いに行きたい。その時には、昔の話を沢山して笑い合いたい。


 私の彼への気持ちは、しぼむまで心の中にしまったままで。



 ラベンダーの花言葉・・・沈黙、あなたをまっています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この花がしぼむまで 七瀬モカᕱ⑅ᕱ @CloveR072

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ