8話 野営
家から持参した自作のテントを張り、幸い川の近くだったため夜に食料を調達しに行く必要がなかった。
ライルと魚を捕るために釣竿を準備していると突然ライルが素足で川へ入っていき、見ていると魚をこちらに向けて弾き始めた。まるで熊が魚を捕るかのように。
その魚はすべてレンがキャッチしすぐに捌いていき、捌き終わった魚から『収納』に入れた。
川から出てきたライルにタオルを投げ、串に刺した魚を焼いていく。
「このタオル自作?」
「うん」
それもそのはず。レンは自分の家から家具、必要な物から全て自分で作って生きてきたのだから。料理も試行錯誤しながら作ったものだ。
「そっか……ねぇ、このタオルから女の匂いがするんだけどどういうこと?」
ライルから黒いオーラが見える。
やばい、間違えてミオのやつ渡してしまった。
「それは殺された幼なじみがたまに使っていたタオルだ。ちゃんと洗ってるから匂いはそんなにしないはずだが」
「ふーん」
複雑な顔をしながら濡れた手足を拭いている。そうしてるうちに魚が焼け、塩を振りかけた後ライルに手渡す。
「この塩も自作なんだ……普通塩よりいい匂いがする」
そう言って魚に食らいつく。
「美味しい!この魚何て言うの?」
「桜イワシで他は魔鮭、金鮎だ」
気に入ってくれたようで10匹ほど平らげてしまった。現在魚52匹。
次は何を作るか……考えておくか。
「片付け終わったしテントの中で寝ていいぞ」
「レンさんは寝ないのですか?」
「神聖魔法の結界を試してみたくてな」
「なら見てから寝ます」
本当に寝ないきなのか。ん?ちょっと待てなんで足の間に入ってくる。
レンはあぐらをかいていたのだが、その中にすっぽりと収まってしまう。
「えへへ、特等席です♪」
抵抗する気も失せるほど嬉しそうにしていたためそのままにしておくことにした。
レンは記憶の中から神聖魔法の結界について探し出す。すぐに大量の種類の結界が頭にうかんでくる。
……見つけた。野営に適している結界はこれだ。
神聖魔法を発動し自分のいる場所からテントの一メートル離れたところまで結界を張る。
「普通の結界に見えるのですが」
「この結界は『不可視結界』といって外からは結界の中が見えないようになってる」
しかもレンが張ったこの結界はワイバーンの攻撃でもヒビが入らないほど硬く認めているものしか出入りできない。
「終わったから寝る」
「結界は消えないんですか?」
「解除するか壊すまで常時発動する結界だから大丈夫」
普通の結界は常時発動なんかしない。そんなことも知らずにいるレンだった。
「ライルはテントに入って寝ろ」
「やです。一緒に寝ます」
「駄目だ。男と女が一緒に寝ては―――」
「知りませんさあいきますよ」
嘘だろ。ステータスでは勝ってるはずなのに負ける!
そのまま引きずられてテントの中に連れていかれ、抱き枕として寝ることとなった。
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