第45話


 すみません投稿ズレました申し訳ない!!

 と、取り敢えず投稿です。



──────────────────────────────



 ───久しぶりの、再会だった。


 拓磨たくまいつき叶恵かなえ美咲みさき。そのいつもの四人に加えて雄平ゆうへい竜太りゅうた神無月かんなづき近添ちかぞえの合計八人。


 まぁ、なんてことは無い。別にもう会えないと思っていたわけでも、何年も会っていなかった訳でもなく、単に毎日会っていた状態から少し会えなかった状態に移行していただけなのだ。


 だからそう、だから久しぶりに拓磨達と会ってもいきなり話し込んだりせず、ギルドで初対面の体と言う形で芝居を打って、周りの人に見せた。


 筋書きとしては簡単。黒髪黒目の家族二人組である俺達を見つけた拓磨達が、興味を引かれて近づいてくる。そうして話している中で、好奇の視線を煩わしにしている俺達に対し、拓磨達は持っていた姿を変える魔道具マジックアイテムを渡した。

 これで俺達は銀髪碧眼の家族に早変わり。その事実を周囲に広め、かつ黒髪黒目であることを内密にするようそれとなく周りに促し場の雰囲気をつくりあげ、元々俺達が黒髪黒目であることを知っている人達も、銀髪碧眼という偽の姿を取る行為に対し詮索しないなどといった暗黙の了解のようなものを立てた。

 更にその縁から俺達は拓磨達と共に行動するようになる……と。


 普通の人なら、拓磨達は単に俺達に同情して行動したように思えるし、拓磨達が勇者と知っている者なら、黒髪黒目という故郷を思わせる色合いに興味を引かれ接触したと思うはず。

 そこまで考えない人間ならそれはそれで疑問を抱かないと思うので問題は無い。


 別に深い知り合いがいた訳では無いが、元々黒髪黒目で目立っていたからか予想以上にギルド内で視線を集めていたので、あれだけ見られていたなら真実として広まるのではないか。これならある程度は支障なく姿を変えられる。

 少なくともこれでヴァルンバ側に、俺が勇者の関係者だと深く疑う人は居なくなった……と思いたい。何せこちらはヴァルンバの人材も内情も何も知らない。クリスの言う通りにしているだけなのだ。


 でも、取り敢えずこれでこれからはいつも通り接することが出来るだろうな───なんて。


 当然、そんな訳がない。無いんだよな、俺。無いんだよ。だって今回の遠征メンバーには叶恵が入っているのだから。


 ───ギルドから一度離れ、拓磨達が泊まることになっているらしい高級そうな宿屋の広間に集まって、本来ならばここから久しぶりに喋る、ということなのだが、その前に清算しておくべきことがあるのを俺は思い出していた。

 いや、拓磨達に会うということでずっと思考の隅で過ぎってはいたのだ。叶恵が珍しく怒ってるとか前聞いたなーと。


 だから、その清算だ。


 「───良いね? 刀哉君行くよ? 良いんだよね?」

 「おうドンと来い。準備はいつでもおっ───ぶっ!?」


 俺が言っている途中で横合いからかなりの衝撃が俺の頬を襲ってくる。バチン!! と乾いた痛々しい音が響き渡って、倒れこそしなかったがその分痛みが分散されずダイレクトに頬がジンジンと痛み出す。


 これ、確実に真っ赤になるやつだ。


 「───痛い。せめて話し終えてからにして欲しかったんだが」

 「ご、ごめん。力んだら思わず叩いちゃって……ひ、ヒールかける?」

 「……いや、いい。回復魔法じゃ痛みは消えないからな」


 そう言いながら俺は頬を押えつつも首を振る。叶恵の方はスッキリしており、何の違和感も感じさせないような振る舞いだ。


 「っ……」


 ルリが微かに顔を強ばらせる。いや、変なの見せてほんとにごめん。いきなり近い距離感の相手が叩かれる光景を見せられるって中々変な事だよな。


 「うわ、痛そー……」

 「夜栄ってバカなのか? 叩かれたがり屋? ドM?」

 

 ちげーよ、と心の中で変なことを抜かす竜太に否定を告げる。当然現実の竜太はそれを理解するはずなど無い。

 これはなんというか、叶恵が想像より怒っていないことに逆に不安になった俺が申し出たことなのだが、そう、取り敢えず叩いてもらってそれでチャラにしてくれと。


 「これでいいんだよな?」

 「う、うん、良いけど……良い、のかなぁ? 私はなんか、凄く微妙なんだけど……叩かせられたみたいな?」

 「罰を与えるってことが重要なんだ。そっちの方が俺がスッキリする」

 「別に私はもう怒ってなかったんだけどなぁ……」


 と、苦笑いで叶恵は自身の手をさする。多分本気で叩いたのだろう、そちらも少し赤くなっていて、微妙と言う割には加減がなかったことが分かる。


 ただこれでチャラにしてくれるあたり、叶恵はやはり緩い。

 一応、これから傍に居るから的な発言をした翌日に居なくなるというとんでもないクソ野郎のような行為をしてしまっていたのだが、拓磨が以前言っていたような怒りは何処へやら、今は本当に気にしていない様子。


 それでも叩かせた訳だが。もう俺がとにかくスッキリしたかったということが分かりやすい。


 「……二人とも、そろそろ良いか?」

 「あ、ごめんね拓磨君」

 「悪いな、変なのに付き合わせて」


 声をかけてきた拓磨に謝罪をしながら、改めて俺は彼らに向き直ることにした。


 拓磨と樹と叶恵と美咲。普段の、いつものメンバー。その姿を目にするだけで張り詰めた精神が一気に弛緩するような錯覚を覚えるほどに、俺は彼らのことを大事に思っている。

 だから自然と笑みが零れるのだろう。


 「取り敢えず、改めて久しぶり。3週間ぐらいか?」

 「そんくらいだな。一応叶恵だけじゃなくて俺とか美咲とかもお前をぶん殴りたい所存だってのをお忘れなきよう。だよな?」

 「そうね。なんなら刀哉君の胸ぐら掴んで何度も何度もそのカッコイイ顔がボコボコになるまで殴りたいぐらいには最初はムカッときたわ……ちょっと、冗談だからそんな顔しないでよ」


 いや、冗談には聞こえなかったのだが。念入りな描写がそれっぽい。

 穏やかに久しぶりと言ったのに、返ってくるのは物騒な言葉ばかりだ。それだけ心配させたというか、驚かせたのだろうということは分かってはいるのだが、そんなになるほどかなぁと。


 「とまぁこんな感じでな、少なくとも初日に関しては俺が苦労したと分かるだろう刀哉? いくらリーダーを請け負っているとはいえ、この代償は高くつく」

 「この先誠心誠意手伝わせていただきますんでご容赦を」

 「それなら、許すのも考えておこう」


 考えるだけですか。

 腕を組みながら不敵に笑う拓磨に、俺は肩を竦めて流した。


 そのまま視線を動かしていけば、雄平や竜太、神無月と近添が目に入ってくる。

 雄平と神無月に関しては、最初にゴブリンを倒した時に一緒に居たので凄い久しぶりという程ではない。


 「ふっ……どうした夜栄よ。会っていない間、何か困ったことでもあってこの俺に助けを求めたくなったのか?」

 「もし本当に俺に解決できない問題があったとして、それをお前に任せるのは気が引けるな」

 「遠慮などしなくても良いさ。俺と貴様の仲ではないか」


 何も言っていないのに、雄平は違和感のある低音ボイスを出しながら口角を上げている。別に自分に酔っているだけではなく親切心もしっかりと入っているのは分かるのだが、多分俺が解決できない問題だったら雄平にも厳しいと思うのだ。


 「なら尚更、迷惑かけたくないから無理だな」

 「ふっ……謙虚な事だ。だが貴様のような人間は嫌いでは無い」


 それにしても雄平は相変わらず厨二病を患っているようで、右手は自身の顔の半分を覆っている。左目にはいつの間にか眼帯が装着されていて、両手には指抜きグローブ的なものをはめていた。

 相変わらずというか、更に厨二病を悪化させている。そうだよな、学校とは違って服装に制限なんかないのだから雄平は好きな装備を付けるに決まっている。


 一応指抜きグローブは手の保護と指先の動作確保を同時に出来るので、単に装飾という意味以外にも便利とは言えるため雄平の装備が無駄かと言われたらそんなことは無い。

 いや、今のところ使う予定は無いけども。


 そんな雄平を押し退けるように入ってくる人物。


 「厨二病クンちょっと退いて」

 「っ、このっ、矮小な存在めが……」

 「ん?」


 雄平がウザそうな顔をするも、反応した神無月が顔を向けるとすぐに視線を逸らした。

 雄平、もうちょっと頑張れよ。男じゃんか。こういう時こそ厨二病ムーブを保て。


 神無月は既に雄平のことなど気にしていない。少し可哀想だ。


 「刀哉クン、会いたかったよ~。はい、撫でて?」

 「それ好きだな……クラスメイトの頭は撫でられないぞ」


 雄平から場所を奪った神無月は早速とばかりに俺の前に頭を出してくる。厨二病クンって呼ぶのは止めてやれよと思いつつ、良くもまぁそんなことが言えるなと。

 別に神無月の頭を撫でるのが定着してたりとかそんなことは全くないし、そもそも神無月の頭なんて一回か二回ぐらいしか撫でたことがない。それでもまるで『いつものやつお願い』みたいな感じで言ってくるものだから周りからの視線が。


 「それより神無月、髪とか服を変えたのな」

 「あ、そうなの! どう、似合うかなこれ? 髪は初めてやったんだけどさぁ」

 「服もそうだし、良く似合ってるんじゃないか。俺個人の感想だけど」

 「えへ、刀哉クンに褒められちゃった。嬉しいなぁ嬉しいなぁ」


 意図的な上目遣いと、普通の男女にしては近い距離。ただ俺の周りにはルリとか叶恵とか、やたらと距離感が近い異性が居るので慣れている。

 例えば樹にこの距離は辛いだろう。目を逸らし、鼻腔をくすぐる甘い香りに動揺してしまうに違いない。


 そして神無月は狙ってやっている。だからあざとい感じが強い。


 そんな神無月だが、最後に会った時とは髪型を大きく変え、ラピッドスタイル───耳の上に結び目が来るように結い上げたツインテールとなっていて、その髪色は金髪だ。

 ただし、神無月のそれは例の魔道具マジックアイテムによって変えたものではなく、地球の頃から染めているもののためこの中では唯一髪色を変えていない事になる。


 結んでいる黒いリボンは見慣れないものなので自前ではなく、どこかで購入したものに違いない。むしろリボンに合わせて髪型を変えたのかもしれない。


 服装も少し派手だ。ピンクと黒がメインの服であり、スカートも付いた上下一体型。雰囲気としてはロリィタファッションと言えばいいのか。

 身長は150と少しだった気がして、この中でもルリとクリスに続いて小柄。随分と似合っているのはそういうのもあるかもしれない。


 マスコット……と言うには純真とは言い難いが、目の保養にはなる。


 ルリがちょっと警戒している通り、容姿はとても良い。ただどちらかと言うと性格は少し悪めというか、故に雄平のことも厨二病とからかったりしてしまう。 


 「服が似合ってる? おいおい夜栄、コイツのは派手すぎて目が痛むっての」

 「筋肉バカには意見求めてませーん。私は刀哉クンに聞いてるからね。ね、刀哉クン?」

 「そこの意見は求めてくるなよ、神無月。竜太もそう言うな。似合ってるのは確かだと思うから」

 「俺にはわっかんねーけどなぁ。だって、神無月だぞ?」

 「語彙力皆無のおバカさんには何が嫌なのかも説明できないんですよねー」

 「あぁ!? んだとこの……」


 視線をずらし、その横にいるのが龍伽たつとぎ竜太りゅうたという名の男。

 簡単に説明すれば、純体育会系。勉強嫌いで運動好き。成績を表すならば運動最上の勉強下の下。

 決して大柄でもないし、身長が高い訳でもないが、この中でただ一人半袖である彼の腕はかなり鍛えられていて実際の身体的数値より大きく見える。


 あまり訓練の様子を見た訳では無いが、魔法は不得意で肉弾戦が得意、みたいな感じだった気がする。武器を使った戦いではない。文字通りだ。


 つまり彼は、素手で戦うのである。理由は簡単で剣の使い方がてんでダメだから。叶恵のように致命的ではないが、技術的なものを身につけられず性にあわないようだ。


 戦闘ではガンガン突っ込んでくれそうなのでこの中だと一番適性があるかもしれない……が、見ての通り神無月とは相性が悪い。

 物言いがハッキリするタイプで、同時に色恋とか全然興味が無い。ようは神無月のあざとい行為に対し『何言ってんの?』となるのがこの男なのである。


 言い争い始めたらキリがないので、無視しても良い。


 「ウチは可愛くて良いと思うけどなぁ、果穂かほちゃんの服」

 「竜太と神無月はちょっとアレだからな……素直じゃないというか、多分竜太は服の善し悪しを判断してないだろうし」

 「竜太ぁ、バカやもんなぁ」


 そして最後のメンバーは近添ちかぞえ亜由美あゆみ。ポニーテールの運動部系の女の子だ。

 別に関西から来たわけでは無いはずだが、聞いてのとおり口調が微妙に関西弁チックで、少しマイペースな性格からか言葉も微妙に間延びしている。竜太とは中学からの付き合いのようで、同じ運動系ということもあってか仲は良い方のはずだ。

 

 同時に女子の中でも運動神経は高い方で、戦闘でも試合の時は積極的に攻めるタイプだった。また樹のように剣ではなく槍を使う数少ないメンバーでもある。


 果穂……神無月は同性から好かれやすいとは言えない性格だが、そんな神無月とも仲が良かったりとマイペースな性格がとても助けになっている。


 ふと、一応皆顔ぐらいは知っているとは思うがしっかりとルリを紹介しておくこうかなと隣に顔を向ければ、いつの間にかルリは居なかった。

 

 そう、ルリは叶恵や美咲に捕まっていた。なんなら竜太を無視した神無月が参戦していて、更にそこに近添も乗じて近づいて行った。

 クリスも城に居た頃と違い意外と打ち解けているのか、違和感なく会話に入り込んでいる。


 果たして何を話しているのか。ルリを中心としているようなので、どうせ俺達の度のことだろうが、ともかくこの分なら少なくとも女性陣に紹介は必要無さそうだ。和気藹々としているし。

 和気藹々というか、ルリは叶恵に後ろから抱き締められていて逃げられない。叶恵がその状態でずっと頭を撫でていて、ルリはムスッとした顔をしていた。

 ただその無愛想な顔も、ルリはやはり可愛い。男の俺が可愛いと思うので、女性陣からしたらもっと可愛く思えるだろう。


 目が合ったら助けを求められそうなのでそっと視線を逸らせば、ガバッと樹が背後から肩を回してくるところだった。

 この絡みが、まるで学校に居た頃を思わせて一瞬だけ懐かしく思うが、顔には出さず。


 「───ところで刀哉、実は拓磨からとある情報を頂いたんだが、その真偽を確認しても?」

 「……少なくとも俺にとって愉快な事じゃないんだろうな」


 何故そんなに嬉しそうな顔をして話してくるのか。樹は衝撃でズレた眼鏡を整えながらも、インテリキャラとは思えないこの絡み方に竜太や雄平、拓磨も近づいてくる。


 「そうそう、俺もおもしれぇこと聞いたんだよなぁ」

 「おいバカ止めろ、行動を封じるな」


 竜太もまた樹と同じように何か聞いたのか、嬉々として俺を羽交い締めにしてくる。雄平は俺の前で「ククク……」と喉で笑っていて、何かを吹き込んだ張本人である拓磨は、俺からサッと視線を逸らした。


 そして場を取り仕切り始めた樹は、ニヤリと笑う。


 「で、何だって? お前、あそこの図書館の司書の子と一緒の部屋で寝泊まりしてるらしいな」

 

 男連中が気になる話としたらそういう系統だとは思ったが、確かに拓磨が知っている情報ではある。

 そりゃ視線を逸らすわな。


 「別に俺ぁ興味無いけどよ、夜栄とあっちのがどういう関係かは気になんな。男として」

 「ふっ……本能に従ってのことか……」


 おい雄平失礼なこと言うな。いや竜太も竜太で大概だが。

 よくある、自分のことはともかく他人の話を聞きたいと言うやつである。当然だが、なにか自分から話すことはしない。


 「……別に、単なるパートナー的な感じだ。変な関係とかなんにもないぞ」

 「本当にそうか? 最初に会った時はあの子と随分近かったし、なんならあれは叶恵とか美咲みたいな凄く仲のいい異性にしか許さない距離だろ? となれば、結構お互いに信用し合ってるだろうし、かなり親密なんだろうな」


 相変わらず良く見ている。というかよく推察できるもんだ。樹の問い詰めに俺はついつい視線を逸らしたくなる。

 一応取り繕っておいた方が良いだろう。何がなんでもパートナーという立ち位置に落ち着かせないと、ちょっと面倒だ。こいつらは面白半分で聞いているし、好奇心的な面が強いのだろうが、実際にそういう少し変な関係がある、となるとこんな場所で話す内容でもない。

 

 どうにかして、誤魔化すしかなさそうだな。



──────────────────────────────


 いや、気がついたら23:09でした……はい、ごめんなさい。

 取り敢えずね、どうにか拓磨達と合流出来て良かったって感じです(話逸らし)


 次回は明後日辺りに出来たらいいなぁって感じです。明日、どうもIPadが届くらしいんですよね。

 音ゲー用ですはい。なのでもしかしたらそっちに没頭しちゃってまた遅れるかもしれませんのです……い、一応頑張りますゆえ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る