軽い気持ちで同級生の占い女子に高校生活について占ってもらったら、自分こそが俺の運命の相手だと言い出した

相田誠

第1話 占いなんて信じない

 突然だが、皆さんは”占い”というものを信じるだろうか?


「ねえ、ユミ。結局昨日占ってもらったの?」

「もち! やってもらったよ!」



 ……テレビ、雑誌、SNSで。

 星座占いから○○診断まで。


 昨今色々な場面で様々な占いを目にするようになった。


「私、塚田先輩と相性バッチリって言われちゃった!」

「マジ?! やばくない?!!」



 ……確かに。

 俺も家族や友人と一緒に占い結果に一喜一憂し、あーでもないこーでもないと騒ぐことは嫌いじゃない。



「私、告っちゃおうかなー」

「いいじゃんいいじゃん! 言っちゃいなよ!」



 けれど、それはその場のノリというやつで、一時的なやつだ。

 俺は占いの結果を人生の訓示にしたりはしないかな。


 ……あ、いや。

 あくまでこれは俺、梶本健人かじもとけんとの個人的な意見であって。

 占い業界の全てについて貶めたり否定するものではありませんので!

 そこのところよろしくお願いいたします。



「えー、でもまだ知り合って数週間しか経ってないしぃ……」

「大丈夫だって! 浦内さんの占いは百発百中なんだから! 私だって浦内さんのいう通りにして昨日帰りにギザ十拾っちゃったんだから!」

「マジ?! やば!」


 ……話を戻して。


 この八家はっけ高等学校に入学してから一ヶ月が経とうとしているが、周りの女子たちは毎日この調子。

 占いの結果を受けてあーでもないこーでもないと、至る所でかしましくしている。


「やっぱり、我がクラスの”浦内フィーバー”は今日も健在だな。なあ、梶本」


 後ろの席の北原涼介きたはらりょうすけが声をかけてくる。

 椅子に座ったまま体を捻って振り返ると、赤みがかった茶髪に爽やかフェイスを持つ男が訝しげにこちらを見ていた。


 ”浦内”……。

 俺が今一番聞きたくない名前だ……。


 この話を断ち切ろうと「ああ、そうだな」とだけ返して前を向こうとするも、「待てよ」と北原に肩をガッチリ掴まれて強制的に話を続けられる。


「んで? お前あの後どうなったんだよ? え?」


「どうなった、って?」


「とぼけんな、浦内さんだよ! お前が出てった後、結局俺は占ってもらえなかったんだからな!! どうしてくれるんだ!!」


「文句なら俺じゃなくて浦内に言ってくれ!!」


 北原の理不尽な文句に少し声を荒げてしまう。


 すると、その声を聞きつけたのか、俺の顔と北原の顔、その中間に一人の女子がひょっこりと文字通り顔を突っ込んできた。


「なになに? 私の話してるの?」


 その女子は、長い黒髪とぱっちり二重が特徴で、はっきり言って可愛いタイプの美形だ。おまけにスラッとした細身が好みだ。

 しかし、今俺が一番会いたくない人物でもあった。


「浦内……」

「ん? なーに? 健人さん」


「け……け……ケントサン?!!!」


 北原が浦内の俺に対する呼称を大声で拡散し、クラス中の生徒がこっちに振り返った。


 俺の顔のすぐ横に浦内の顔。

 飛びのく北原。

 そして教室に響き渡った”ケントサン”。


 クラスメイトがざわめき出すには十分すぎる材料が揃っていた。


 俺は喧騒に包まれて思わず頭を抱える。


「さ、最悪だ……」



 事の発端は昨日の授業後だ。

 まさか、あんなことが起きるなんて……。

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