ギザギザハートの子守唄

そのまた翌日も、工場の従業員さんがひとりやめたようだ。


社長さんは、やめて行く従業員さんを必死になって引き留めに出たけど、またしても返り討ちを喰らってもうた。


「待ってくれぇ~」

「どけや飼い殺し魔!!」


やめて行く従業員さんの行く手をふさいだ社長さんは、必死になって説得する。


「おってくれぇ~」

「どけや飼い殺し魔!!オレは高校に行きたいからやめるんや!!」

「高校に行きたいのであれば、ワシが知人に頼むけん…」

「オレは全日制高校へ行きたいんや!!」

「せやから、働きながら学べる高校を世話してあげるけん…」

「オドレの言うことなんか信用でけん!!オドレのくさった性根をドブ川で洗い直してこい!!」

「ああああああああああああああああ!!」


(ドボーン!!)


従業員さんからボコボコにいて回された社長さんは、道端を流れるドブ川に頭から落ちた。


従業員さんは『ああ、これで(印刷工場)と訣別することができた…ほな、クニへ帰ろーと…』と言うて出ていった。


ドブ川に落ちた社長さんは、笑いながら『オレ…最初から従業員さん養う資格なかったんや…ハハハ…』と言うてガックリ肩を落とした。


その頃であった。


たつろうさんの実家の大広間に、将之がボストンバッグを持ってやって来た。


大広間には、政子と将之と社長の奥さまの3人がいて話し合いをしていた。


将之は、実家の両親から『3人のおにいがドアホになったけん帰ってこい。』と言われたので、印刷工場をやめると奥さまと政子に話した。


それを聞いた政子は、せっかく入った印刷工場をやめるなんてもったいないと将之に言うた。


「実家の都合が悪くなったけんやめると言うけど、どう言う理由があると言うのよぉ~」

「せやけん、実家の両親が『3人のおにいが親の想いにそむいたけん帰ってこい…』と言うたのです…理由はそれだけです。」

「3人のおにいは、なんで親の想いにそむいたのよぉ~」


社長さんの奥さまは、政子に将之の3人のおにいが両親の想いにそむいた理由を説明した。


「蔵本くんの実家は、東海道五十三次で江戸時代からつづいてはる高級旅館なのよ。」

「高級旅館…」

「せや…歴代の将軍さまや歴代内閣総理大臣などのえらいさんやおかたいさんの御用達の高級旅館なのよ…外国のツアー客の御用達の高級旅館でもあるのよ…そななエエトコの家だから、セケンテイがあるのよ。」

「セケンテイだがなんだかしらんけど、なんで3人のおにいがドアホになったのよぉ?」

「蔵本くんの3人のおにいがオカマになったのよ。理由はそれだけよ。」

「蔵本くんの3人のおにいがオカマになった?」

「ひとりは栄(名古屋)のオカマバーに入店した…あとのふたりは、男とえげつないカンケーを持ったのよ…せやけんご両親はまともな蔵本くんに旅館をついでほしいといよんのよ!!」


社長さんの奥さまの言葉に対して、政子は煮えきらない表情で言うた。


「話しは分かったけど、だからといってすぐに帰る必要はないと想うけどぉ~」

「それはどう言うわけよ?」

「だから、蔵本くんのご両親は単に強がっているだけよ。」


政子が言うた言葉に対して、将之はハンロンした。


「奥さま!!それではアカンねん!!」

「どうしてアカンのよぉ?」

「オレは、親孝行がしたいから実家の旅館をつぐと決めたんです!!」

「蔵本くんの気持ちはよくわかるけど、蔵本くんのご両親のホンネはちがうと思うけどぉ~」

「どうちがうと言うのですか!?」

「だから、ご両親は蔵本くんが親元を離れて自立した暮らしをがんばっているだけでいいと思っているのよ。」

「ほな、3人のおにいはドアホのままにしとけと言いたいのですか!?」

「そななことは言うてないわよ…ご両親のホンネはおにいに旅館をつがせるというているのよ。」


(チッ…)


ブチキレ起こす手前におちいった将之は、チッと舌打ちしたあと『オレ、ここやめて他へ行くけん…その気になればなんでもできるわボケ!!』と言うて出ていった。


政子と社長の奥さまにタンカ切って家出した将之は、地区を出たあと行方不明になった。


将之が家出してから5分後のことであった。


(ジリリリリン!!)


ダイヤル式の黒電話のベルが鳴り響いたので、政子が電話に出た。


「多賀でございます…えっ?社長さんを呼んでって…どないしたん?…分かったわ…奥さま大変よ!!(機械工の主任の男性)くんの婚約者のコが、7~8人の従業員さんたちに襲われるけん助けを求めているわよ!!」


それを聞いた奥さまは、ドカーンと爆発したあと女性がいるアパートへ走って行った。


それから30分後…


7~8人の彼らは、手首をしばられてじゅずつなぎにされた状態で奥さまに無理やり引っぱられる形で帰された。


その後、7~8人の彼らは六郎にもので頭をどつき回されたあと、政子六郎夫婦からボロクソにおらばれた。


『社長さんにあやまりなさい!!』『あなたたちは男子チュウボウに入るべからずだから料理できんのよ!!』『給食サービスを利用しなさい!!』『あなたたちの数万円のお給料では結婚なんかできません!!』…


政子六郎夫婦は、7~8人の彼らの心がズタズタに傷つくまで怒鳴りつけた。


陰で見ていた和子は『ブザマね…』と言うてクックックッ…とほくそ嗤んだ(えんだ)。


夕方5時頃であった。


「ウェーン!!ウェーン!!ウェーン!!」


アパートの部屋から7~8人の彼らの女々しい泣き声が響いた。


そこへ、社長さんの奥さまがやって来た。


「あんたたち、お弁当食べなさい!!」


社長さんの奥さまは、7~8人の彼らに給食サービスからお弁当が届いたから食べなさいと言うたが、彼らは女々しい声で泣いてばかりいた。


「あんたたち!!フツーにしていれば、神さまが自然に結婚できる機会を与えてくれるのよ!!わかっとんやったら月曜日から元気な顔で働きなさい!!」


社長さんの奥さまは、彼らに『フツーにしてればよい』と言うたけど、フツーと言うのはなんやろか…


私にはトーテー理解できましぇんけどぉ~(ブツブツ…)

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