九月の雨・その2

話しは、日本時間8月28日正午過ぎのことであった。


場所は、たつろうさんの実家の大広間にて…


大広間のテーブルに、近くの印刷工場の男性従業員さんたち8人が(給与引きで注文した)お弁当を食べていた。


そんな中で、みつろうがランチを摂るために帰宅した。


帰宅したみつろうに、優香がやさしく言うた。


「あなた、お帰りなさい。ランチできてるわよ。」

「ああ…和子はおるで?」

「今、呼ぶわね。」


この時、男性従業員さんのひとりが気になる表情を浮かべながら部屋から出てきた和子を見つめた。


和子を見つめていた男性従業員さんは、蔵本将之(くらもとまさゆき・35歳・機械主任)である。


将之は、小さいときに母親の内縁の夫から受けた暴力が原因で養護施設に保護された。


中学の卒業式の翌日に施設を出て、地区の印刷工場に就職した。


20年の間、なにひとつ文句言わずにひたすらガマンして印刷工場で働く将之は、和子に思いを寄せていた。


となりの広間にて…


みつろうと和子は、カレーライスを食べながら話し合いをしていた。


みつろうは、ものすごくあつかましい声で和子に言うた。


「和子、お前はオトンとオカンのいいなりになってお見合いする気でおるんか!?だまっとらんとなんぞ言え!!」

「(泣きそうな声で)おにいはうちにどないしてほしいねん~」

「(イラつき声で)せやけん、はよ結婚相手を見つけろといよんや!!」

「(泣きそうな声で)分かってんねん~」

「(イラつき声で)ほな、はよ動け!!」

「(泣きそうな声で)はよ動けと言うても、相手がおらんのにどうやって結婚するのよぅ~」

「(イラつき声で)せやけん習い事せえといよんや!!」

「(泣きそうな声で)習い事せえと言われてもぉ~困るわよぅ~」

「(イラつき声で)この地区の若者たちは、みーんな習い事で結婚相手を見つけよんや!!」

「(ムキになった声で)ほな、習い事せえへん人は結婚する資格なんぞないと言いたいのね!!」

「(怒鳴り声をあげる)やかましい!!習い事せえ言うたら習い事せえ!!」

「(おたつき声で)あなたやめて!!」


優香は、おたついた表情でみつろうと和子を止めた。


その後、優香は過度にやさしい声で和子言うた。


「和子さん、和子さんの怒る気持ちはよくわかるけど、おちついてね。」

「はぐいたらしい兄嫁ね!!きょうだい間のもめごとに首を突っ込まないでよ!!」

「(過度にやさしい声で)和子さん。」

「(怒った声で)この地区の若者たちは習い事しないと結婚できないのはホンマなの!?」

「(過度にやさしい声で)そななことは言うてへんわよぉ~…だけど、この地区には結婚相手と出会う場所が全くないのよぉ~」

「せやけん習い事しかないのね!!」

「(生ぬるい声で)そういうことに、なるのよ…」

「ひとえに習い事と言うても、どれをすればええのかわからへん!!」

「(怒鳴り声)和子!!」

「(おたついた表情)あなたやめて!!」


必死になってみつろうをなだめた優香は、過度にやさしい声で言うた。


「あのね和子さん、うちの知り合いの人がインストラクターしてはるフィットネスクラブに女性会員さんがきてくれん言うてこまっとんよぉ~」

「(怒った声で)せやけんうちに行けといよんで!?」

「(ますます困った声で)せやけん、男性会員さんたちが困っているのよぉ~若い女性の会員さんがおらんおらんと言うて…」


(バーン!!ベチョ!!)


ブチキレ起こした和子は、平手打ちでテーブルを叩いて立ちあがったあと、食べかけのカレーライスをみつろうの顔に押しつけて、右足でけとばした。


優香は、泣きそうな声で和子に言うた。


「ちょっと!!なんでお兄さんに暴力をふるうのよ!!」

「やかましい!!パチスロしてくる(激怒)」


(ピシャッ!!)


和子は、ふすまをピシャッとしめたあとパチンコ店へ出かけた。


和子からイカクされた優香は、頭を抱えてその場に座り込んだ。


(ゴロゴロドザー!!)


時は、夜9時過ぎだったと思う。


取引先の会社に出向となった英彦は、残業を終えて帰宅していた。


その時に、1時間に80ミリの雷を伴った猛烈な雨が降り出した。


日本の南の海上に台風から流れてくる湿気によって、紀伊半島に停滞している秋雨前線の活動がより活発になったことによって生じた大雨である。


(ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ!!)


遠くから強烈なブザー音がけたたましく鳴り響いた。


夜8時59分ごろに三重県南部に大雨警報、たつろうさんの住んでいる地区に避難勧告が発令された。


(たつろうさんの実家がある場所は、地すべりの危険度が高い上に、近くに土石流の危険度が高い渓流がある)


ずぶ濡れになっている英彦は、中央町にある中村山公園にいた。


その時であった。


「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


突然、白のブラウス1枚でずぶ濡れの姿の若い女性が泣き叫びながら走っていた。


この時、顔に肌色のストッキングをかぶった変質者が追いかけてきた。


とっさになった英彦は、あしもとにあった鉄パイプで変質者の顔を殴りつけた。


(ガーン!!)


「グワアー!!」

「ワーッ!!ワーッ!!」

「グスングスングスングスングスングスングスングスングスン…」


襲われた女性は、その場に座り込んでグスングスンと泣きじゃくった。


女性の話しによると、近くの建築現場で雨宿りをしていた時に、変質者が突然やってきて、その場に女性を倒してスカートを無理やり脱がされたと言うた。


女性は必死に抵抗したあと、英彦がいる公園に逃げ込んで助けを求めた。


その時に英彦と出会った。


女性は、ジャスコ(イオン)の女性従業員さんの貞光果那(さだみつかな・27歳)である。


英彦は、鉄パイプで激しい力を込めて変質者の男を殴りつけた。


変質者の男は、その場で死亡した。


さて、その頃であった。


たつろうさんの実家の近辺にある渓流で土石流が発生する危険性が高まったので避難指示が発令された。


しかし、2・5世帯の家族たちは避難しなかった。


2・5世帯の家族たちは『うちは大丈夫』と言うてノンキにかまえていた。


危ないからはよ避難せえよ!!

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