土居さんとキング・オブ・クソ
「初夏の風が頬を掠める季節に戸惑いながらも、ライデンは大きく息を吸い込んで吐いた。さて、前回までふざけまくっていた三人だったが、遂に見ず知らずのオッサンを救うべく動き出す──そして、モンスターだらけの森の中で、マイキーは大きく首を傾げた。」
「いやそれ地の文だから!! マイキーの台詞じゃないから!」
「台詞とかメタいこと言うなよ……」
「初期の頃はライちゃんが一番狂っていたんですがねえ。いつの間にかツッコミキャラに……まるでユージンのようだ」
「マイナーなネタは慎め」
「またプロ作家に喧嘩を売っていく……!」
誰もが予想していなかったであろう、四話目が投稿されて三人は焦っている。
どうせ人格が変わったように
「はぁ──また脱糞しますか」
「なんでそうなるんだよ!?」
「ライデンも一話目でお●ぱいとか叫んでたでしょ……」
『ドン!』
三人が馴れ合っている中で、突然地面が大きく揺れた。黙れドン太郎も涙目の擬音語の使い方に、
「ほんとにバトルもの書いてたんでしょうかねぇ」
誰に向けてか、マイキーは愚痴をこぼす。
「というか、今の衝撃は……?」
安全確認のためサユキは辺りを見回した。するとほぼノータイムで、
「あっふん♡♡あぁん♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
と咆哮が森一帯に轟く。あまりに不快だったのか、
「うるせぇ!!!!!!!!!!」
ライデンが負けじと声を張り上げた。
「今のは……」
サユキはそれらを見つめながら、推理していた。あっふん♡とか叫び出すような人はマイキーとライデン以外には知らない──知り合いの顔を高速で思い浮かべる彼女だったが、やはりそんな高レベルなドMは存じていなかった。
「まさかとは思いますが……」
マイキーはこの作品の全てを察する。今回の依頼は『土居さんを助ける』というものだ。
即ち、声の主は明確であった。
「あはん♡ やったぁ♡ あのね、あのね! 僕ね♡ 僕はね、僕は」
「とりあえず落ち着いて喋ろやジジイ!」
ライデンは声を張り上げて損したと言わんばかりにゼーゼーと息を吐いている。
彼らの目の前には、喘ぎながらこちらまで走ってきた汗だらけのおじさんが居た。彼こそが土居さん(57)である。中肉中背で、着ているタンクトップは傷だらけだ。
三人は若干引いていた。こいつが保護対象の『土居さん』か──とにかく、喘ぎながら走ってきたおっさんに困惑していた。
「やはり、あなたが……」
「んっふん♡ 僕の名前わぁ♡ 僕のぉ♡ あのね、あのね♡ 僕の♡ 僕のぉ♡ あはぁん♡♡♡」
「ダメだこいつマトモに話にならないわ!」
「土居です」
「急に名乗りやがった!?」
ま、とりあえず保護して帰って金稼ごうぜ──そんなライデンの眼差しに、サユキは同調する。が、やはりマイキーはそれを許さなかった。
まずは目の前の困っている人と目を合わせ、言葉を交わす。それこそが彼の信念であり、モンスターを狩って生活をする者としての使命であると考えていた。
「まず、どうして迷っていたのですか? あ、僕たちはギルドであなたの保護を頼まれてここにやってきたのですよ。決して貴方と援●をするためにここに来たとか、そういうのじゃありません」
「別にそこは疑ってないはずでしょ!?」
「そうか♡ よかった♡」
「わぁ〜すごい!」
「サユキがツッコミ放棄したらオレたちは終わりだぞオイ!!」
まぁなんやかんやあり、♡だらけのジジイこと土居さんに、ここに迷い込んだ経緯を聞くこととなった。サユキは早く帰りたかった。
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