パシェニャとクイルスルグ地獄 2

 アキラとパシェニャはトンネル管理オジサンのあとに続いて、洞窟……否、直径3メートルの円形の水路を、進んでいく。

 一同の足は水に浸かっている。


「ちゃんと、長靴を履いてきたわ。長靴業界も大儲けね! きまりました」

「何がきまったんだ?」

「当時の頭の悪い政治家の失言よ」

「当時……? まあいいや」


 2キロメートルほど歩いた。


「あ、あれです、あれが、変なオジサンです……いや、間違えました、あれが『肉塊』です」

 直径2メートルのまるまるとした肉塊があった。

「ぶよぶよして、少しうごめいてるわね」「思ってたのと同じくらいグロいな」


「ちょっと以前よりやや大きくなっている気がします……そうだ、火は使わないでください、火事になりかねません。あと、散弾銃で撃つくらいは試してみましたが、ただぶよんぶよんとなるだけでした」

「ぶよぶよと……キンタマみたいね」「ヒロインがそんな事言うな」

「睾丸みたいね」「言い換えたところで……」


「それじゃ、とりあえず、ギルドに画像を送っておくわね」


 ギルドには、魔法おばけキノコから混沌の邪竜をもまで網羅するモンスター・データベースがある。画像をよみとり、分析することができ、モンスターの出来る限りの情報を得ることが出来るのだ。


「どうしたもんでしょうかね」

 と、トンネル管理オジサン。

「テコでは?」「棒を突っ込んで転がすのか」

「そうです、わたすが……いや、それは試しましたが、5分で1メートル動かすのがやっとでした」


「じゃあ荷車に乗せて運べばいいんじゃない?」「そうだね」

「なるほど。いい考えかもしれませんね」


 一同は、いったん入口まで戻って、荷車を持ってきて、また肉塊のところまで行った。


「どうやって乗せるの?」「そりゃ、テコでいけるだろ」

 いけた。

「あとは通路を2キロメートルほど戻るだけね」

 パシェニャとアキラは荷車を引っ張った。

「ふん、ぬ……! 重いわ」「やっぱり重いね」

 車輪がじゃぶじゃぶと水面をうつ。

「水の抵抗のせいで余計に重いのかしら」「たぶん」


 非常にしんどい思いで進み、ようやっとといった感で、雨水道の出入り口まで運んだ。


「ようやく依頼達成ね!」「疲れた……」

「どうもありがとうございました。では報酬金を……」


 管理オジサンがカバンから報酬を取り出そうとしたとき、パシェニャが、

「あっ!」

 と叫んだ。


「どうしたの?」

「き……消えたわ」


 なんと、3人のすぐそばにあったはずの肉塊が、突如として消えたのだ。


 そこらじゅうを手探りするが、透明化でもないようだ。

「テ……」「テレポートか……」

「そうです、わたすが……いえ、やはりこうなりましたね。おそらく、テレポート先は元の場所です」


「せっかく重労働で運んだのに!」「……どうしよう。めんどい。そして、めんどい」


 カレイにい変身するでー♪


「唐突にギルドのデータベースからデータがきたわ」「ええと」


 モンスターデータベースより

 一致度97%「クイルスルグ」

『クイルスルグは、位置が不確定だったり、確定した位置だったり、他のモンスターの位置を確定させたりする肉塊である。

 外敵から身を守るためモンスターの位置を確定させるもので、ドラゴンを召喚するドラゴンクイルスルグや、生ける屍を召喚するアンデッドクイルスルグなどの亜種がいる。クイルスルグは、細かく切り刻むことにより倒せる。何も召喚しないのであれば、それはミートクイルスルグ、つまり肉を召喚して身にまとうクイルスルグだと考えられる』


「クルイスグル?」「クイルスルグだよ」

「クイスルグル?」「クイルスルグだよ」

「クイルスグル?」「おしい! クイルスルグだよ」


「あー名前までメンドイとは!」「細切れにすればいいみたいだからその道のプロに頼もう」

「いい考えね」「そうだろう」

「そうですね。わたすが管理オジサンです……いや、そういえば知り合いにそんな感じの人がいます」

「じゃあ呼びましょう」「細切れ? 肉屋ブッチャーかな?」


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