日本で一番馬鹿にされた『悪魔』の告白

下谷ゆう

ある人殺しの告白

私が疲れた表情をしているって?

そりゃそうだ。だって私は人を殺したんだから。


何人も殺したんだ。

何人も何人も、殺したんだ。

何でだと思う?


「……それが、貴方の役目だから?」


アイツらみたいな事を言うんだね。

私が世のため、人のために……人を殺してるって。

本当にそう思っているのか?


「……。」


気を遣わなくていい。今ここにいるのは私とお前だけだ。

言ってみてくれ。


「貴方は、人を殺すことでしか、自分が生きている価値がないと思っている」


はっきり言うじゃないか。

まあ、正解だね。さすがだね。


子供の頃、皆に馬鹿にされてたんだ。

出来のいい弟と比べられて、恥さらしと言われ、親には縁を切られた。

馬鹿だ、馬鹿だ、と皆は陰口を叩いた。


私はずっと一人ぼっちだった。


それがどうだ?


一人殺し、二人殺し、殺せば殺すほど、私は人気者だ。

人を殺すのは馬鹿じゃないんだろうか?


「皆、『悪魔』と恐れています」


ああ、そうだろう。

私は恐ろしい殺人鬼だから。

血も涙もない殺人鬼だから。

だけど、違うだろ?


「 ? 」


お前たちは、私を恐れてなんていない。

むしろ、私が『悪魔』であることを望んだのは、お前たちだろ?


「……」


それでもいい。

私は馬鹿だから、自分がどうしたいのかなんて、わからない。

だから、いいんだ。

望まれるなら、『悪魔』でも『魔王』でも。

これからも、殺す。

これからも、ずっと、ずっと……。


「失礼ですが、」


何だ?


「『今、ここにいるのは貴方と私だけ』、そうおっしゃったのは貴方です」


そうだな。


「嘘はつかなくてもいいんです」


嘘など……、


「『悪魔』は泣きません」


……。


「人を殺した夜、許しを請いながら泣いたりしません」


……。


「皆、知らないでしょう。貴方がどれだけ傷つき、苦しんだか」


……。


「それでも、貴方は『悪魔』であろうとした。完璧に」


「きっと後世まで語り継がれるでしょう」


「本当にそれで、」


「いいんですか?」



……もしも、嫌だ、と言ったら?



「簡単ですよ」


「私が貴方を殺します」




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