第4話
あさ美が指を差した方向を見ると、200メートルほど前方に人影が見える。
俺はすぐさま双眼鏡を覗き確認する、俺達と同じ白い防寒具の上下を着こんだ人間が4人…… その中に女が2人いる、男女のペア? 能力者なのだろうか、肩には89式小銃を担いでいる、自衛隊だ。
彼らも双眼鏡でこちらを見ている、その人物が何かを指さしている、俺たちに向かってだろうか? 指さす方向を確認すると半分雪に埋まったドローンが落として行ったと思われる補給物資があった。
何故こんな所に彼らが? 偶然では無いだろう。
俺達は警戒しつつ彼らの元へ向かった。
ゆっくりとスノーモービルを走らせ彼らの前方に回り込む、自衛隊の目的が何なのか分からない以上大きく距離を取る。
「君達は円山から派遣された追跡隊か?」
彼らの代表が大きな声でこちらに語りかける。
「そうだが、俺達に何か用でも?」
俺はスノーモービルを降り聞き返した。
「実は我々も石動凪と長月麗香を追っている、君達は北見に行くんだろ?」
「だとしたら?」
「我々が独自に設置したアンテナが北見市内でかなり強い反応を示した、だがこちらもたったの4人しかいない。出来れば協力して市内を分割して捜索して欲しい。君らの意見を聞きたい」
「情報は確かなのか?」
「ああ、ただ捜索範囲を縮める為に更にアンテナを追加し範囲を絞りたい」
「何をすればいい?」
「簡易アンテナを3つ設置し、強い反応を示した地点に更にアンテナを移動させて奴らの場所を突き止めたい。君達にはそのアンテナの1つを任せたい」
俺は少し考え、答えた。
「まあ、いいだろう、協力しよう。ところでアンタらは能力を行使出来るのか?」
「ああ、任せてくれ」
「浅波だ、宜しく」
俺は彼に近づき右手を差し出した。
「噂は聞いている。私は中山だ、宜しく頼む」
彼は俺の手を強く握った。
俺達3人は補給物資をあさ美のスノーモービルに積み込み、積みきれない物は後ろに繋げたそりに載せた。
彼らから受け取ったアンテナをリュックに入れ羽衣に担がせると俺達は北見市の北側に向けてスノーモービルを走らせた。
「あの人達、信用できるの?」
羽衣はスノーモービルの後席でエンジン音にかき消されないように大きな声で俺に聞いた。
「信用はしてない、ただ、目的は同じだろ。上手くいけば凪を捕捉出来る」
俺は振り返り後ろに乗る羽衣に大声で話す。
「見つけたらどうするつもり?」
「監視までが任務だ、後の事は司令部に任せる」
「あの人達は攻撃するのかな?」
「さあな、自衛隊の力を見せて貰おうじゃないか!」
今の俺達の装備で凪を倒すのは難しいだろう、しかも円山最強の能力者である麗香も同行している。
まともに戦えば苦戦は必至。だが、つけ入る隙があるとすれば麗香、彼女が妊娠していたとしたら行動に制限がある筈だ。
なぜ彼らは子を欲しがるのか?
能力者と代行者の子供だとしてもその意味は何だ?
まさかとは思うが………… だから自衛隊は能力者の妊娠をさせなかったのか?
いや…… それは考え過ぎかもしれない。
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