偽りの花嫁
ねむりねずみ@まひろ
【声劇台本】♂1:♀1
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■キャラクターの性別は、絶対ではありませんが、世界観を壊すような無理な変更はやめてください
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『キャラクター』
蛇♂:深い森に封印された、化け物。人の姿に化ける事ができる
咲♀:森に迷い込んだ、近くの村の少女。化け物とはしらずに蛇と仲良くなる
『 コピペ用配役表』
蛇:
咲:
以下台本
――――――――――――――――
化け物が住んでいると言われる
森で道に迷った幼子が泣いている
咲6歳
咲「えーん、えーん…おっとー…おっかー……えーん、えーん」
洞窟の中で声をきき
蛇M「…煩わしい…我の眠りを妨げるとは…許せん」
咲「えーんえーん、おっとーおっかー…」
人の姿に化け、洞窟から出てみる
蛇「……何だ…声が聞こえたと思って来てみれば…童か」
咲「えーんえーん」
蛇「小僧…泣いているだけでは解らんぞ…いったいどうした」
咲「おっとーと、おっかーとはぐれた…」
蛇「おっとー?おっかー?ああ、両親か。何だ、お主…迷子なのか…」
咲「えーん!!!おっとー!!おっかー!!!」
蛇「ああ、大声出泣くな、耳が痛いではないか!」
咲「…おっちゃん誰?」
蛇「おっちゃんではない、確かに今は人の姿を模しているが、けしておっちゃんでは無い!」
咲「ふぇ…」
蛇「ああ、泣くな!人里に送ってやるから…泣くんじゃない!」
咲「本当?」
蛇「ああ、いつまでもここで泣かれたら迷惑だからな」
咲「おいら…おっとーとおっかーの所に帰れるんだな!」
蛇「そうだ、だから大人しくしていろ…」
咲「…わかった!おっちゃん、ありがとう!!」
蛇「だから、おっちゃんではないと言うのに!」
蛇M「化け物がいると恐れられたこの森に、迷い込んだか、捨て去られたか…そこに居たのは、顔も体も小さな人の子だった……泣き声の煩わしさから声を掛けてしまったが、人の子は驚くどころか、我の事をおっちゃんと呼び、村へ送ると言うと嬉しそうに笑った。
それが小さきものとの、出会いだった」
咲10歳
咲「おっちゃーん!!」
蛇「だから、我はおっちゃんなどではないと、何度言えばわかるのだ!!」
咲「おっちゃんはおっちゃんだよ、あたいの命の恩人だって、おっとーとおっかーが言ってたもん!」
蛇「全くだ、幼きお主を村の傍まで連れていったのが運の尽きよ…」
咲「でも、そのお陰で、あたいはおっちゃんに会えたんだけどな!」
蛇「たわけ…我はお主らと関わり合うことなく、余生を過ごそうとしておったのに」
咲「よせー?」
蛇「ああ、お主にはまだ難しいか…余生とはな、いわゆる魂の残り時間だ」
咲「魂の残り時間」
蛇「そうだ、我は様々な歴史を、この目で見てきたからのう…ここでは、何もせずゆっくりと過ごしたいのだよ」
咲「誰ともかかわらずに?」
蛇「ああ」
咲「それって、寂しくないの?」
蛇「…もう長いこと1人だ…寂しさなどとうに忘れたさ」
咲「ふーん、あたいはおっちゃんと会えなくなるの、寂しいけどな!」
蛇「たわけた事を…」
咲「あー!嘘だと思っただろ!!嘘じゃないんだからな!!」
蛇「ははは、そう怒るでない」
咲「じゃあ、信じてる?」
蛇「ふむ…そういうことにしておいてやろう」
咲「もー!それ絶対信じてないじゃん!!おっちゃんのばかー!」
蛇「はっはっは…そんな物痛くも痒くもないわい。…む?お主、傷が増えてるではないか…」
咲「ああ、これ?……この間転んじゃってさ。えへへ、それにしても、おっちゃんって、結構頭硬いよね!」
蛇「なに?!小僧…言わせておけば…」
咲「だから、小僧じゃないってば!!!あたいには咲って名前がちゃんとあるんだ!」
蛇「お前なぞ、小僧で十分であろう」
咲「おっちゃん!!酷い!!」
蛇「はっはっはっは」
咲「わぁ、おっちゃんの目、綺麗だな!」
蛇「なんだ、急に」
咲「笑った時のその黄色い目!」
蛇「あぁ、珍しいのか?」
咲「うん、あたい達は皆黒い目だから、おっちゃんの目は珍しいと思う、でもすごく綺麗だ!、おっちゃんの目は、お日様の様な目だな!うん!あたいは大好きだぞ!」
蛇「そうか」
咲「あー、また疑ってるんだろ?!」
蛇「ふふふ…どうだかな」
咲「おっちゃんっって、性格も悪いのな!」
蛇「ふふふ、小僧…そこになおれー!!」
咲「あはは!やーだよー!!」
蛇M「幾度となく繰り返される人の闇に嫌気がさし、我は、人と関わることを辞め、この地に封印された。
だが、人の子は、あれから毎日森へやって来る。
泣きじゃくっていた頃とは違い、今では帰り道に迷わぬようにと、道すがら石を起き、森の奥までやって来る知恵をつけた。だが、変わらず人の子は、よく喋り、よく怒り、よく笑い…我の領域にズカズカと入り込んでくる。
もちろん、最初は嫌悪した…だが、いつの間にか、それが心地よいと思えていたのだ…
我は…その小さきものとの出会いで…思い出してしまった…誰かと関わり合うことの、喜びを……」
咲16
咲「おっちゃん、はい!これ!」
蛇「なんだこれは…」
咲「おにぎりって言うんだ、食べてみてよ!」
蛇「我は、食事なぞせぬとも、生きていられるが…」
咲「もー!そんな事はどうでもいいの!食べなくても生きていけるかもしれないけど、食べられない訳じゃないでしょ!だから、食べて!ほらー!はい!あーーん!!」
蛇「ん…あむ………もぐもぐ」
咲「どう?美味しい?」
蛇「……うまい」
咲「本当?!よかったぁ!初めて作ったから心配だったんだ!」
蛇「これは、お主が作ったのか?」
咲「あ…バラしちゃった…そ、そうだよ!美味しかったでしょ!!」
蛇「ああ、久しぶりに、美味いと思えた…」
咲「そ、そんなに褒めないでよ!…えへへ、嬉しいなぁ………あ、お腹なっちゃった…」
蛇「…珍しいのう、お主も腹が減ったのか?」
咲「へへ、最近森の動物が少なくなったっておっとー達が言ってて…あ!でも食べてはいるよ?その、おなかいっぱいって程では無いけど…」
蛇「ふむ、小僧…こっちを向くが良い」
咲「だから!小僧じゃないってばっ…むぐっ…」
蛇「うまいか?」
咲「…美味しい、でもこれはおっちゃんの為に作ってきたのに…」
蛇「1人で食べるより、2人で食べた方が美味かろう、どうだ?我と一緒に食うてくれぬか?」
咲「っ…そんなに言うなら、しかたないなぁ!えへへ、一緒に、食べよう!一緒に!」
蛇「はっはっはっは…そうだ、一緒にだ。…む?…小僧、頬についておるぞ」
咲「へぁっ?!あっ、ありがとぉ!?」
蛇「うむ?どうかしたか?顔が赤いぞ?」
咲「な、なんでもないよ!あーおいしいなぁっ!!」
蛇「む…これは…痣か?」
咲「ああ、これ?」
蛇「これも…転んだのか?」
咲「…うん、もう、そんなに痛くないし」
蛇「そうか…ならば……痛いの痛いの飛んで行けー」
咲「へ?」
蛇「む?違ったか?人の子は、こうして痛みを和らげると、とおい昔に聞いたのだが…」
咲「ぷっ…あははは!!おっちゃん…それ小さい子にやる事だよ!」
蛇「何を言う、お主もまだまだ童ではないか」
咲「私はもう立派なレディだよ!!」
蛇「ふむ…口元に米粒が着いているレディか」
咲「へ?!うぅぅ、恥ずかしい…」
蛇「はっはっはっは!!」
蛇M「鋭い日差しが降り注ぐ夏も、色とりどりの葉が舞い散る秋も、全てを覆う雪のふる冬も、小鳥が歌う安らぎの春も…幾度となく、季節がうつり変わろうとも、小さきものは、出会った頃となんら変わらぬ笑顔で森にやって来る。あぁ…今日も来た。時折、体に傷を負っていたが…いつも転んだと言って、少し寂しそうに笑っている。その様な顔で笑うな…と声に出してしまいそうだった。お主の笑顔はそんな物じゃない。笑って欲しくて、大人気無いことをしてしまう事もあった。生きる屍の様だった何も無い日々が、鮮やかに彩られていく…いつしか、我は小さきものが来るのを…待ちわびるようになった」
咲18
蛇「どうした、浮かない顔をして」
咲「…おっちゃん…この森に化け物がいるってしってる?」
蛇「化け物…か。あぁ…知っておる」
咲「そいつのせいで、村じゃまったく獲物が取れなくなったんだって」
蛇「なに?」
咲「化け物がこの森の動物を全部食っちまったんだよ!!」
蛇「そのような事…ありえぬ」
咲「何で!?森の化け物はずっと昔からこの地に居座り続けてて、いずれ森の動物達をすべて食いつくすって、おばば達も言ってたよ!!」
蛇「ばかな…」
咲「そのせいで、村じゃ…餓死寸前の子達もいる…それに、その化け物は村も襲ったんだ!!皆が寝静まった深夜に…須賀の爺ちゃんの所の羊がやられた…高田のおっちゃんの所の牛もだ!!化け物のせいでっ!!皆迷惑してる!!」
蛇「そんな…事が…」
咲「なぁ、おっちゃん!おっちゃんはこの森で生活してるんだろう?化け物を見た事はないのか?!」
蛇「……姿は…見たことがない」
咲「…そっか。村の皆に酷いことする化け物なんて、居なくなっちまえばいいのに!おっちゃんもそう思うだろ?!」
蛇「……そう、だな…居なくなった方が、良いのかもしれぬな」
咲「だよね!!近いうちに村で、討伐隊が組まれるんだ!化け物は酒に弱いらしくて、色々準備してるんだって!!あーあ、早く化け物を退治して、美味しいご飯が食べられるようになるといいのに」
蛇「…そうだな…。ほれ小僧、ここはじきに暗くなる…帰らなくてよいのか?」
咲「そうだった!おっちゃんと居ると楽しくてあっという間に時間が経っちゃうなぁ…」
蛇「そうか」
咲「へへ、実はさ…化け物退治が終わるまで森への出入りが禁止されてるんだ」
蛇「…そうなのか」
咲「だから、暫く会えなくなっちゃうと思う…あっ!でも!化け物退治が終わったらまた会いに来るから!!…なんなら、おっちゃんも一緒に村に…」
蛇「我は、ここでよい…」
咲「…そっか、そうだよね…おっちゃんは村の人とは違うんだもんね…」
蛇「すまない…だが、お主の気持ちは…嬉しかったぞ…」
咲「えへへ、良かった!じゃあ帰る!またね!おっちゃん!」
蛇「あぁ、また…な」
蛇M「なぜだろう、自分がその化け物だと…言い出せなかった。心のどこかで、自分であってほしくないと思っていたのだ。動物を食べた記憶も、人里を襲った記憶も無い…我は何もしていない…何もしていないのだ。だが、村のもの達にとっては、我の事情なぞ、どうでも良い事なのだろう…人は弱い。誰かのせいにしなくては、生きていけないのだ…」
蛇「いっそ、どこかに行ってしまえたら…この封印がある限り、我はここから動けぬ。 この化け物の身が恨めしいと、思う日が来るとはな…」
蛇M「あれから数日が経った。村の方から…深夜にも関わらず、大勢の人の気配がする。小さきものの言っていた、討伐隊だろうか。奴らは森の奥深くまでやって来て、何やら沢山の酒樽を抱えていた。その酒樽を洞窟の前に置き、ぶつぶつと何かを唱えながらどこかへと行ってしまった。洞窟の前に置かれていた樽は、大きい樽が8つと一回り小さい樽が1つ。そうか…この姿を、誰かに見られていたのだろう、やはり小さきものの言う化け物とは、我の事だったか」
蛇「そうか…やはり…か。ならば、期待に応えねば…ならぬな」
蛇M「酒樽を、端から、1つづつ飲み干してゆく。恐らく、酒に毒が入っているか、酔うた所に討伐隊がやってくるか、そのどちらかだろう…。ひとつ、またひとつと飲み干してゆく。樽を開ける度に思い出すのは、あの小さきものの事ばかり。よく喋り、よく怒り、よく笑う…不思議な童よ。芋が焼けたと持ってきては、勝手に火傷したり、我が怪我をしたと知ると、雨の中びしょ濡れになりながらも、薬草を抱え 走って来たり、魚を釣りにきて、池に落ちた事もあったな…小さきものはいつも笑っていた…ああ、思い出と言うのは、こんなにも暖いものだったのだな…。」
蛇「…これで、最後か」
蛇M「八つの樽を飲み干し、最後のひとつに手を伸ばす…次の瞬間、我の目に飛び込んできたのは…美しい花嫁衣裳を身にまとった…小さきものの姿だった」
咲「化け物め!これでもくらえ!!!!」
蛇M「小さきものの手に握られた短刀が、我の身体に突き刺さる…痛みなど感じぬ身体だが……ああ、これは毒か…」
咲「どうた!!おばば特性の猛毒だ!!おい化け物!!お前のせいで、村は滅びる寸前なんだ!!お前のせいで、おっとーとおっかーは…お前のせいで!!お前のせいで…私は!!村の生贄にされたんだ!!」
蛇M「憎悪に満ちた瞳で、泣きながら我を見据える…そうか、我のせいでお主は、死ぬことを強いられたのだな…人間とはなんと愚かな…あの時、お主の事を攫ってしまえば良かったのだろうか。どのみち、この地に封印されしこの身では、何も出来なかっただろう。だが、そのせいで、お主は泣いておるのだな…ああ、この毒は、思いのほか強いらしい。…我の身体を蝕んでゆく…すまない…すまない…」
咲「お前なんか…この毒で、滅びてしまえ!!お前が森の動物達を全部食べたから悪いんだ!!その爪で、その牙で!!村を襲ったから!!なのに…何で…抵抗しないんだよ…猛毒だぞ…少量で象すら殺せる…猛毒なんだぞ!!苦しみのたうち回れ!!!私のおっとーとおっかーをかえせ!!!」
蛇M「そうか…お主の両親や村人が食われたのか……そうか…そうか」
咲「な…んで…お前が…泣くんだよ、なあ!!お前が皆を喰ったんだろう!?」
蛇M「ああ、意識が朦朧とする……人の子よ…最後に会えたのがお主で良かった…」
蛇「…小僧」
咲「?!……何で……その声…」
蛇「すまな…かった…な」
咲「…何で化け物からおっちゃんの声が…」
蛇「我は、大蛇…八岐大蛇…この地に封印されしもの…」
咲「おっちゃんが、八岐大蛇……」
咲M「信じられなかった、信じたくなかった。でも、化け物の瞳は、あの時に見た、おっちゃんの…お日様の様な…黄色い瞳だった」
蛇「我は、この洞窟付近から…動く事は出来ぬ」
咲「嘘だ!!!だって…じゃあ…村を襲ったのは……」
遠くで狼の遠吠えが聞こえる
咲「っ?!」
蛇「この森のヌシ…であろう……奴らは生きたまま人を喰らう」
咲「そんな…そんな…じゃあ私は…何のために…」
蛇「ぐぅぅっ…」
咲「はっ?!おっちゃん!!!…そうだ…私…おっちゃんに毒を……」
蛇「なんて事はない…」
咲「どうしよう…おっちゃん…ごめん…私…あぁぁ、ごめん…」
蛇 「小僧…村へ戻れ」
咲「無理だよ…村からは化け物の生贄になるように言われたんだ。おっとーとおっかーの仇を打てるなら、死んだって構わないって思って…。だから、みんなに言われるまま…毒を…」
蛇「そうか…辛かったのだな」
咲「うぅぅ、おっちゃん…ごめん…ごめん」
蛇「泣くな人の子よ…我は、お主の笑った顔が見たい」
咲「笑った…顔?」
蛇「ああ、我の為に…笑ってはくれぬか?」
咲「そんなの…無理だよ」
蛇「頼む…我はそなたの笑顔が好きなのだ…」
咲「…っ。わかった……ははは…こう…か?」
蛇「あぁ…そうだ、その笑顔だ…。最後にその笑顔がみれて…良かった…咲、あり…が…とう」
咲「おっちゃん!!おっちゃん!!嫌だよ…おっちゃん…おっちゃん!!…ねえ、起きてよ…私はさ、化け物の生贄なんだよ…だから、ずっとおっちゃんと一緒に居なくちゃダメなんだ。ほら、見てこの衣装。綺麗だろう?…憫に思ったおばばが、せめて服装だけでもって、この衣裳を着せてくれたんだ!だから、目を開けてくれよ…、もう一度名前を呼んでくれよ!なぁ!!ずっと…一緒にっ…うわぁぁぁぁぁぁ」
蛇「…………」
咲「おっちゃん…おっちゃん…。っ?…あれ?何だか…頭が…クラクラする。ああ、そっか、樽の中で、ずっと握りしめてた…も…んな」
近づく狼の遠吠え
咲「…おっちゃん…今度こそ…一緒に…」
狼の遠吠えがこだまする
蛇M「その日…小さきものは、化け物と共に長い眠りについた。森のヌシ達は、容赦なく村を襲い、全てを喰い漁った。結果、小さきものを死に追いやった村人は、誰一人として生きておらず、村は跡形も無く消えていった。だが、森のヌシは、小さきもの体だけは、喰らう事が出来なかった。
あの時、化け物は、小さきものを包むように倒れていたのだ、そのため森のヌシですら手が出せなかった。その姿はまるで、死してなお 小さきものを、守っているかのようだった。静寂の中、満月が辺りを照らす。月の光に照らされた2人の顔は、安らぎに満ちたものだったという。
2人の姿を発見した村人から、また別の村人に話が伝わり、いつからか、八首の龍の死骸に 花嫁姿の亡骸を捧げると、その花嫁は死後も幸せになれる という噂が流れたのだった」
END
偽りの花嫁 ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta
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