たかしの相棒
ゆーどら
たかしの相棒
ぼくは、たかしのカルシウム。
ぼくらは、もうすぐいなくなってしまうだろう。
カルシウムは、たかしの小学生時代を思い出していた。あの頃は自分も若かった。毎日が骨作りに精を出していて、骨から伝わる振動で、たかしが歩くことや、走っているのを感じていた。
「負けるなたかし」
ぼくはたかしをずっと傍で応援していた。たかしからは見えない、たかしの骨を何年も何年も作りあげてきた。ぼくらは一心同体だ。
そして、たかしもぼくもおじいさんになった。
ぼくもたかしも昔よりも体力がなくなり、ぼくはカルシウムとしての仕事が徐々に衰えてきた。
もう長くないと思うんだ。カルシウムだけど分かるんだ。
老いたカルシウムは、ゆっくりゆっくりと丁寧にまた骨を作り出した。これがぼくができる、残り少ないたかしへの最高のプレゼントだ。
「へへへ、ただ、助けたかっただけなのに、結局自分が嬉しくなっちゃってらぁ」
カルシウムは骨をふかしながら、作り上げたきれいなたかしの脚の骨を見上げた。歳はとったがこの骨は、人生で一番の最高傑作だ。
カルシウムという見えないたかしの相棒は、確かにたかしを作り上げていた。
カルシウム自身、今まで生きていて幸せだったなあと感じていた。僕の骨がたかしでよかった。
たかし100歳。今も見えない相棒の努力によって、健康に自分の脚で歩いている。
終わり
たかしの相棒 ゆーどら @yuudora
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