夏休み編
第17話
夏休み初日。
ミズキ先輩がいじめられることはなくなり、平穏な日々を送っていた。悩みはなくなり、一段落した俺だった。
俺は、惰眠をむさぼっていた。
カシャカシャとシャッター音が聞こえる。
「ぅぅ、朝から煩いけど......」
寝ぼけた声を出すと、勢いよく扉が閉まる。
母さんは滅多に入ることはない。さては絆か。
よろけながら自室を出て、絆の部屋の前に立ち扉をノックする。
「だーれ~。ってしつこいっ!うっさいってーのっ!」
キレている絆だがいっこうに出てこない。
「俺だよ。絆ー、絆ちゃーん。......っ、絆さーん。ゲームしてもいいぞー、絆の好きな──」
部屋の中から足音が聞こえ扉が開く。
「ほんとっ、あに......」
満面の笑みの絆が部屋から出てきて、固まる。
「話があるから、それが終わったら言う通りにするから、なぁ。き・ず・な」
「い......い、いぃ──」
「戻ろうとするな、絆。二度とやらないと誓って反省するなら、早くゲームが出来るぞ。どうする?」
「叩いたりしない?痛いことしない?」
「一度でもしたことあったか?素直に言えばすぐ終わる」
「ごめんなさい。勝手に寝顔を撮ってしまって」
頭をさげて謝罪する絆。
「ネットや他人に見せてないよな?」
「そ、それ......はぁ、なんといいますか、言いにくい......と、友達に見せましたっ。ごめんなさいっ」
「見せたぁ、友達にって今言ったのか?」
「叩かないよねぇ。殴らないっ、ひっぃぃ」
震えながら、うずくまる絆。
「何もしないって、絆。これに懲りたなら、もうやるなよ。泣き止んでゲームやるよ。なぁもう泣き止んでくれよ、悪かったって、絆ー」
10分ほど泣き続けた絆を自室に連れていき、ゲームを起動させ、絆にコントローラーを持たせる。
鼻をすすりながら、コントローラーを操作する絆。
ゲームに丸一日費やしただけの夏休み初日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます