第11話 ギルド、そして予期せぬ事態


「ニマよ、大丈夫ゲ?」


「えっ、なにが?」


「あのロックスという男じゃ、お主の姉について知りたい欲がダダ漏れでちょっと危なくないかゲ?」


「んー・・・でも乱暴とかは絶対しないと思う。あの人優しいし・・・」


「まだ今日あったばかりの相手ゲよ?もうちょっと警戒したらどうじゃゲ?」


「大丈夫だよ、私こう見えてもカンはいいんだよ!」


「本当かゲ・・・」



客室でニマは準備をしながら、そうナルと話す。


髪を整え、いつの間にか洗濯され綺麗になって戻ってきていた自身のローブに身を包みロックスが待つ部屋の外へと向かう。


ガチャ


部屋の外へ出ると驚く顔をするロックス


「お待たせしました・・・」


「あ、ああ・・・」


「?

どうしました?」


「いや、部屋の中からニマちゃん1人のはずなのに話し声が聞こえるから不思議に思ってたんだが・・・」


「なんじゃ、騒がれると面倒じゃから黙ってたのに聞かれてたゲか」


今までロックスの前では黙ってたナルが口を開く。


「ほ、本当に人の言葉話す魔獣いたんだな・・・」


「ごめんなさい・・・黙ってて」


「いや、少し驚いただけだから大丈夫だよ

でも世の中には悪い奴らもいて、人の言葉喋れる魔獣とか希少価値高いから売買目的で攫うやつもいるかもだから、なるべく喋らない方がいいかも」


「なるほど、ならば黙っておこうかゲ」


「うん、そうした方がいいかも・・・」


「じゃあ、早速行こうか、とりあえず外に出て歩こうか」


そう言いロックスとニマは外に出る。


馬車や様々な人々で賑やかな音が絶え間なく聞こえてくる。


「そういえば、どこに行くんですか?これから」


歩きながらニマはロックスに問いかける。


「ギルドだよ」


「ギルド・・・聞いたことはあるんですけど、具体的にどういうところか分からないです・・・」


「まあ、簡単に言うと色んな場所から来る依頼を管理する場所だな。


依頼が来たら張り出して、冒険者がその依頼をこなして、その報酬を渡す。


それがギルドの仕事で、ほとんどの冒険者はギルドを利用として依頼の報酬で生活してるんだ。


ニマちゃん、他に行く宛無さそうだから、とりあえずギルドに登録さえしといて、生活費とかに困ったら依頼こなして食い繋いだらいいんじゃないか?」




「え、そこまで考えてくれてるんですか・・・

ありがとうございます・・・正直この先どうしたらいいか全く分かんなくて・・・不安だったんです・・・



・・・でも私がその依頼こなせるんでしょうか、そこまで自分に自信がないです・・・」



「何もみんなひとりで依頼こなしてる訳じゃないさ。複数人でパーティを組んで依頼をこなして報酬を山分けしてる冒険者がほとんどさ、皆各々の役割があるからね。


報告で聞いたけど、ニマちゃん、強化魔法の使い手なんだって?中々いないからきっと何処のパーティにも引っ張りだこと思うよ」



「そ、それなら大丈夫ですかね・・・」


「あー、あとどうせならあのジグって子が起きたら、その子に誘ってみたら?


知らない人より知ってる人の方が安心と思うけど」


「え・・・、どうだろう・・・私、まだあの人のこと分かんないことが多くて・・・迷惑にならないかな・・・」



「んー、僕らジグって子は何も知らないからなんとも言えないけど、とりあえず誘ってみるだけはタダじゃない?

ニマちゃんみたいなサポート型の人はなかなか居ないから、あの子にとってもメリットが大きいはずだから迷惑にはならないと思うけどね」



「分かりました・・・誘ってみようと思います・・・」


「うん、そうしな。



おっ、見えてきたよギルド」


ロックスがまだ少し遠くのギルドに向かって、指を指しニマに教える。


ニマはロックスの指を指した先を見ようとした、


その時





「 隊長おおおおお!!!! 」




ビクッ


突然の大声に街の中を歩いていた通行人みんな声の主に視線を集める。


当然、ニマとロックスも振り向き声の主に視線を向ける。


するとそこにはロックスと同じ軍服を着た青年が息を切らしながら立っていた。


「ど、どうした。そんなに慌てて」


自分の部下が自分を読んだことに気が付き、その様子に心配するロックス。


「た、大変です!!


隊長の自宅が襲われたとの報告が届きました!!


近くにいた住民からの報告です!!!」



「なっ!!?」


顔から血の気が引くロックス。


「今、隊のものを向かわせましたが間に合うかどうか・・・!」


「分かった」


突然のことに状況が掴めないニマ。

そんなニマに対してロックスが詰め寄る。


「ニマちゃん、強化魔法が使えるんだったよな。

君の強化魔法を僕にかけてくれ。

お礼はいくらでもする。今すぐかけてくれ頼む。」


状況に混乱しながらニマは応える。


「で、できますけど、先に言うと、あまり距離が離れると効果が切れます・・・近くにいないと無理ですよ」


もしかして強化魔法で自身の身体能力を上げたあと走って急いで駆けつけようとしてるのではないか、と考えたニマは混乱しつつも説明する。


「わかった。じゃあこれでいいな。」


「わぁっ!?」


「ぎゃっ、何してるゲ!!」


ロックスが片腕で、肩に乗せるようにニマを抱える。


突然の事で黙っていたナルも悲鳴をあげる。


「これで僕が抱えたまま行けば、大丈夫だろ」



「えっ・・・」


そしてロックスはニマを抱えたまま風のごとく駆け出した。

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