第7話 馬車の中にて
『ねえお母さん』
『なあに?ニマ』
『また今日も魔獣さん達と契約できなかったよ・・・』
『あら・・・あぁっ!泣かない泣かない!恥ずかしいことじゃないのよ!!』
『グズッ・・・でもお友達皆魔獣と契約して旅に出ていくし・・・もう私しか同期で残ってないよ・・・』
『大丈夫よ!!!ニマ、言ったでしょう?ニマの魔法は自分にはかけれないけれど、パートナー、つまり魔獣さんにかけたらとても強くなるの!でもその分ニマの強い魔法に耐えれる強い魔物なんて中々いないの、だからなかなか魔獣さんと契約できないなんて当たり前!泣いてたら余計魔獣さんが寄り付かなくなるわよ?』
『うん・・・分かってるけど・・・旅に出て、人間の仲間を見つけてその人に魔法をかけてサポートしながらの旅をしてその途中で強い魔獣さん見つけるんじゃダメなの・・・??』
『それはダメ。私たち魔獣魔道士の集落の人間は、魔獣と契約すれば膨大な魔力が使えるようになるけど、契約しなかったら普通の人の10分の1以下の魔力しかないの。そんな人間と仲間になってくれる人なんていないのよ。だから、ちゃんと契約してから旅立つのが掟なのよ。』
『で、でも・・・』
『ニマ・・・大丈夫、あなたと契約する魔獣は必ずあなたを幸せにしてくれる。私やパパ以上にね。必ずあなたなら見つけれるわよ。だってあなたは・・・』
◇◇◇◇
パカラッパカラッ
ゴトッ ゴトッ
馬が駆ける音が聞こえる。
そして同時にその馬に引っ張られる車輪が付いた箱が時折揺れ、鈍い音を発する。
その揺れと音に鼓膜を刺激されニマは目を覚ます。
自分が眠っていたことを理解し、今の現状を理解し出す。
ニマは手当と応急処置が終わったあと、フューに案内され、集落の外に置いていた馬車に乗り、集落をあとにした。
ジグは医療班に少し恥ずかしそうに抱えられ、馬車内の布団に寝かせられていた。今は戦闘の影響もあったのかいびきをかきながら爆睡している。
そしてニマは自分の手に微妙な不快感を感じる。
その手は土で汚れていた。その瞬間少し前の記憶思い出す。
ニマはフューにお願いし、自分の家だった焼け焦げた建物に行き、自分の両親と思われる両親の焼死体を家の裏に穴を掘りその手で埋めたのだ。
その途中、何度も手を止め、胃の中を吐き出し、咽び泣きながら一生懸命に一人で埋めたのだった。
それはまだ大人にもなっていない少女にはとても耐えられるような体験ではなかった。一生のこのトラウマは消えることは無いだろう。
その様子を念の為の付き添いで来たフューは黙って見届けていた。自分の両親をその手で土に埋めるなど誰にでもできるものでは無く、それを成し遂げようとするニマの背中にフューは涙を流していた。
ニマの作業で馬車に乗る時間が随分遅れたがフューは余計な言葉はかけず、馬車へと案内した。
一連の記憶と状況を思い出し、理解したニマ。
再び涙がこぼれ、その手でぐしぐし、と涙を拭く。
すると自分の肩から寝息が聞こえてくる。
「ヒュー、ヒュー...」
トカゲの魔獣であり、ニマと契約した魔獣、ナルはニマの肩で寝ていた。
その様子をニマは観察し頬を緩める。
「・・・お母さん。言う通りだった。私と契約してくれる魔獣さん、ちゃんといたよ・・・。」
そう呟くニマ。
「・・・あーー、もう大丈夫か?」
「!」
気まずそうにフューがニマに声を掛ける。
「す、すみません。もう大丈夫です・・・!」
「それならいいが・・・もう頭起こしてシャキッとしといた方がいいぞ。見えてきたからな。」
そういいフューは馬車の中から外へ目を向ける。
ニマもフューに釣られて同じ方向を見る。
「わあ・・・!!」
その目に映るのは、中心には巨大な城が建っており、無数の建物が羅列している都市。その周りには高い壁で覆われている。
その規模の大きさにニマは思わず息をのみ、目を見開く。
フューはニマのその様子を見て、ニマはこの都市へ来るのは初めてだと察し、微笑みながら口を開く。
「ようこそ、アリス王国都市。通称“全ての架け橋ワンダーランド“へ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます