メデュシアナの戯言(たわごと)

春秋 好

はじめに

 ステンノー、エウリュアレー、そしてメデューサ。彼女たちは、ギリシア神話に登場するポルキュスとケトの間に生まれたゴーゴン三姉妹である。中でも、知恵の女神アテナを冒涜したとして醜い姿にされたメデューサは、蛇の髪の毛と、覗きこむと石になる瞳を持つ怪物として有名だ。ゼウスの息子、英雄ペルセウスに首を切られて最後を遂げたメデューサだが、抜け落ちた蛇状の髪の毛(メデュシアナ)は、メデューサ亡きあとも現世で男たちを狙い、彷徨さまよい続けているようだ。

 メデュシアナに狙われた男たちは、その牙から放たれた毒に全身を病み、身もだえしながら朽ちて行くのだろうか。はたまた、鷲や鷹のように雄々しく立ち向かい、我が身の糧とするのだろうか。

 狙った獲物を捕獲できるほどの毒も持たず、かてにすら成り得ないメデュシアナがいたとしたら、それは果たしてメデュシアナと呼べるのだろうか?

 突然かかってきた1本の電話。ねぇねぇ、これって妊娠詐欺じゃない? 我が家に起きた一連の流れを、つらつらと思い出しながら文字に記し、記録として残しておこうと思う。

                                令和二年七月

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