感謝解題
ジュン
第1話
「『感謝』という言葉が好きだ」
「なにが好きなんだい?」
「謝る(あやまる)を感じるって書くだろう?」
「そうだね」
「感謝ってあやまることじゃないだろうか?」
「何に対して?」
「僕が僕の欲望を満たしたいがために、あなたの時間をちょうだいしてしまって、どうもすみません。という感じか」
「罪悪感を持っちゃうってこと?」
「いや、そうじゃないんだ。『罪悪感』じゃなくて『償い(つぐない)』っていう感情なんだ」
「『償い』?」
「うん。つまり、僕に付き合ってくれてありがとう。その埋め合わせをさせてほしいって気持ちが償いっていう感情だと思う」
「で、具体的にどう償ったの?」
「おかしいのだけれど、小説を読んでもらって、それに対する償いの方法は、小説を書くことなんだ」
「償う対象と償う方法が混同してるじゃないか」
「そうなんだ。矛盾してる。でも、だからこそ『感謝』というものは、いよいよ精彩を放つものになると思うんだ」
「というと?」
「こんな矛盾だらけの僕に付き合ってくれてごめん」
「ごめん、か。確かに感謝は謝ることを感じることと言えそうだ」
「繰り返しになるけど、感謝は償いであって罪悪感とは違う。罪悪感だと、謝るが『誤る』の方のあやまるの意味になっちゃう」
「そうか(笑)。ところでなんで、今回は『感謝』がテーマなんだい?」
「ありがたいことに、『これ』で、50作品目を迎えることができました。感謝の気持ちを込めて『感謝解題』を書いてみました。読者の皆さん、本当にありがとう。」
感謝解題 ジュン @mizukubo
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