第十五話 幽霊と交わる
会社員の渋井さんは、幽霊でいい思いをしたことがあるそうだ。
名古屋への長期の出張があった際に借りた1LDKのマンションは、築十年ほどで綺麗なところだったが、いわゆる出る物件だった。
最初に遭遇したのは、引っ越して一週間後くらいのことだ。
仕事が遅くなり、帰宅は0時を回っていた。翌日が休暇だったこともあり、風呂にも入らずにすぐにベッドに横になった。
窓は開いていたが、蒸し暑く寝苦しかったのだろう、そう時間も経たずに渋井さんは目を覚ました。外はまだ暗かった。
もう少し眠りたいな。
うとうとした頭でそう考え、寝返りを打とうとして、あれ? と思った。
体が動かない。
まるで自分の体が自分の物ではなくなったような感覚だ。
金縛りだ。今までにも何度か経験したことのある渋井さんは冷静にそう思った。
金縛りというのは頭だけが起きている状態だ、という知識があったからそのまま、ぼーっと新居の天井を見つめていた。
するとふいに蒸し暑かったはずなのに、ゾクっと寒気が背筋を走った。
続いて、柑橘系の甘い匂いが鼻をついた。
女だ。
渋井さんがぼんやりとそう感じたと同時に、身体の上に見知らぬ女が乗っていた。
肩までの髪の、スタイルのいい、キャミソール姿の幽霊だった。
顔立ちは整っていて、表情には妖しい笑みが浮かんでいた。
何されるんだろう。
恐怖と混乱の中で眼だけを動かして見ていると、女は渋井さんの体に手を這わせ、腰を緩やかにくねらせ始めた。
(あ、俺セックスしてるんだ)
そう思うと同時に、パンツの中身がガチガチになっているのに気が付いた。
女は渋井さんの上で髪を振り乱し、身をくねらせ続けた。
そのうち、快感が最高潮まで高まり、果ててしまったという。
その日からしばしば寝ていると金縛りになって、その女が現れ渋井さんの上に乗ってきたという。
特に仕事が忙しく、溜まっている日が多く、女が現れる直前には必ず柑橘系の甘い匂いがしたそうだ。
幽霊と交わるのはどんな感じなのかと興味本位で聴いてみると、渋井さんは待ってましたとばかりに微に入り細に穿ちその快感を詳らかにしてくれた。
ある程度割愛してそれをまとめると、締め付けられたり扱かれたりはしないが、性器の内側にある快感の芯を撫でられているようで、女性に挿入している時の感覚とはまた一味違う、何とも言えない恍惚感があったそうだ。
渋井さんは、出張で三か月しかその部屋にいられなかったことを今でも嘆いていた。機会があれば、そのマンションに永住したいそうだ。
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