倒錯している

「ペット飼ったの」

 ほう、と相槌を打つ。知己は嬉しそうに笑っている。鳥やら犬やら魚やら、色々なものを既に飼っていたのだが、また増やしたらしい。いきとしいけるものが好きだと言う。

「でもちょっと変わった子で」

「ほう」

「手足が邪魔だからいらないっていうの」

「……ほう?」

「まーいっかなーっておもって、切っちゃった。でもすごく喜んでくれたし、まーいいよなーって!」

 さわやかに笑いながら写真を差し出してきた。知己が手足を切り落とされた人間を赤ん坊のように抱いている写真だった。服は着ているのだが中途半端に余っており、デザイナー泣かせの有様だった。出っ張りがない人間の体はこけしに似ているのだと初めて知った。

 暫定こけしちゃんは抱かれて心底嬉しそうな様子だった。ハートフル家族だ。

「いい写真だね」

「でしょ!」

「こけしちゃんによろしく」

 知己は頷きながら写真を大事そうに鞄へ片付けた。

 今の悩みは冷凍室に放り込んだ手足の処理法と、ペットを恐れて近付かない家族への対応らしい。ちょっと無理かもしれないなと言いかけたが、まーいっかなーと思ったので親指だけを立てておく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る