難攻不落のリビングデッド

 着信があったので受けた。ざりざりざりと酷いノイズが続いたあとに、懐かしい声が聞こえてきた。

「どうも、ご無沙汰してます」

『こんにちは、お久し振りです』

 声がかなり遠い。ぼそぼそ小声で話されているようにも聞こえるが、単純に距離の問題だと思われる。聞いてみればベガってわかりますか? と問い掛けられた。格闘ゲームのキャラを指すわけではないことは理解した。

 ベガ周りの惑星にいるらしい。それは声が遠いはずだと納得する。

「何をしてるんですか?」

『怪我をしましたね』

「あらら、痛いですか?」

『上半身と下半身がわかれましたが、まあ、大丈夫です』

 ははは、と張りのある笑い声が響く。元気そうだ。

『少し寝たらまた行きますよ』

「わかりました」

『じゃあ、また』

 通話は唐突に途切れて、あとは漣のようなノイズだけが続いている。

 夜空を見上げてみた。ベガアルタイルデネブ。どれがベガだか忘れてしまった。

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