私と誰かとやっぱり誰か

草森ゆき

依然として手詰まり

 なんか爆発するらしい。そのようなアバウトな説明を受けて首を捻っていたが、会えば直ぐに理解した。彼女が咳き込むと近くのゴミ箱が吹き飛んだ。

 すなわち人間爆弾である。

「すごい体質ですね」

 私の言葉に彼女はあははと軽やかに笑う。

「すみません、癖なんです」

 歩く爆弾魔はさっとマスクをはめ直した。隅に小花の刺繍がついた布マスクである。隣に並ぶと案外小さかった。

 風邪をひいた際に、くしゃみや咳によって、近所の廃工場が爆発した話を聞いた。それは大変そうだ。治らないのかと問い掛ける。

 彼女はうーん、と唸ってから、

「幼馴染といる時は平気ですよ」

 とさっぱりした声量で教えてくれた。

「抑圧物質の出ている人なのでしょうか」

「ああ、会えばわかりますよ、多分」

 彼女は鞄からすばやくスマホを取り出して、幼馴染さんを紹介すると言いながらむにむにと画面を触り始めた。

 早く良くなるといいですね。声をかけると、呆れたように笑われた。

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