第39話


亮介がマンションに着くとエントランスに帽子にサングラスにマスクと怪しさ丸出しの女がいた。



亮介はそれが、元の世界桜だと直ぐに気付いて最上階の自宅に案内する。



部屋に入ると元の世界桜が喋り出す。



「正直に言うけど、私の考えは桜とは違うの…」



「えっ、どう言う事…」



「あなたなら分かるでしょ! やっと生きる望みが出来たの…ちがう…今まで地獄にいた…でも、ここでは私が女王様…もう3年も居るのよ、今さら地獄には戻れない」



「地獄にに戻る…いったい何の話だ…君達は、何がしたいんだ」



「私には分からない…」



「どう言う事だ、君達は双子みたいなものだろ… 僕は会った事も無いのに逆転世界の亮介と同じだと感じる事がある…」



「ちがうの! そうじゃない…」



「何がだ! この前だって、桜を見た瞬間に自分だと思ったって言ってたじゃないか…」



「それは本当よ… でも今の桜はもう私には分からない…」



「今の桜… 桜が別人にでもなったって言うのか?」



「そうじゃないけど… 心が徐々に離れていて…それと同時に桜の性格が変わっていった…今では“貴方は何も心配しなくて良いのよ”って私には何も教えてくれない… だけど…たぶん桜は、世界を1つにしたいのか…もしくは人類滅亡を望んでるの…」



「何だって!!」



「そんなの嫌でしょ! やっとつかんだ幸せ! 亮介さんだってあっちの辛い生活なんてもう出来ないはず! そうでしょ! 今の生活を、皆から愛されて、私が好意を持てば感謝される…この生活を奪わせるもんか! 手放してたまるかぁ~!!」



取り乱す元の世界桜を亮介がなだめる。



「落ち着いて! 君の話を信じるから! ゆっくり話を聞かせてくれ…」



「ごっごめんなさい…」



「今は元の世界の僕と二人だけだ…何も隠さず話せるんだ…


 聞かせてくれないか…先ずは、桜に内緒で何の話をしたかったの…」



「元の世界を知ってる亮介さんなら桜と神様の目的を止めてくれると思ったから…」



亮介は神様のワードに改めて驚く。



「君達の神様の目的… それが、人類滅亡だと…」



「それは私の想像だけど、こうなる前は…最初に桜に会った頃は双子のような…そうね、テレパシーじゃないけど、何となく桜は今こうしたいんじゃないかな?とか思うと大抵そうだったりして、深い繋がりを感じてた…


 でも半年位前から何かだんだん彼女の気持ちが分からなくなって来たの… もう今じゃ、何も桜の事が分からない… 分かるのは最近の桜は人間の存在を否定ばかりしてる…私がちょっとでも人間を擁護すると怒って前の世界に戻りたいのかって脅すのよ… 


 また私を地獄に…許さない、そんなの絶対に許さない!!」



「おいおい、いくら気持ちが分からなくなったからってわざわざ呼んだ君を戻したりしないだろ」



「じゃぁ、何で前の世界に戻りたいかなんて脅すの…何で私に隠し事するの! おかしいでしょ…そう思わない?」



「もし…君が言う通り桜と神様が人類滅亡を望んでるなら、きっと僕の神様と戦いになる… そうなれば超人同士の戦いだ、巻き込まれたら命の保証は無い…


 桜はそれを気にしてるのかもよ」



「…ちがう、桜は変わった…私を籠の鳥にして…アイツは心を閉じた…そして変わらず神様と通じてる…怖いの、世界が変わるのも桜も、怖い…」



「話は、分かった…僕もこっちの神様と相談してみるよ」



「えっ…亮介さんも神様と通じてるの?」



「まさか、向こうごが勝手に会いに来るだけだよ…」



… 半分本当で半分嘘だ、まだ彼女に全ては放せないな …



「そうなんだ… いけない!もう帰らないと…桜が帰って来る前に…」



そう言って慌て出す元の世界桜。



「そんなに、桜が怖いの…」



「そうよ、恐ろしくて仕方ない…桜はたぶん…逆らえば私でも殺す…」



「バカな…そんな自分で自分を殺すような事、出来るわけない…」



「でも、すでに何人も殺してるし…」 



「まさか…」



「本当よ…今も芸能プロの社長を殺してるわ」



殺人の話についていけない亮介は、言葉を失う。



「今は桜の事、分からなくなったけど…逆らえば殺される、それだけは何故か分かるの…桜のその感情だけは強く伝わって来る…だから逃げられない…桜には神様がついてるし…


 もう帰らないと…お願い殺される前にアイツらから助けて…」




そう言って、元の世界桜は亮介のマンションを出た。






亮介は、電話で幸之助にすぐ戻ると伝え地下駐車場に向かった。







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