第7話
僕は周囲のざわつきを無視して、何事もなかった様に審査に取り組むが、しばらく逆転世界の美人が続いたので興味が削がれた…ユミカは丁寧に質問しているが、僕は彼女に任せてスマホでユミカvs桜を検索したら、勝者桜になっていたので思わず笑ってしまった。
「何か可笑しいですか亮介君?変わった質問といい審査に集中して下さいね」
「あぁ、すみません。思いだし笑いです」
怪訝そうに見られユミカに嫌味を言われた。
「その調子で記憶も思い出してね」
「頑張ります」
ここで、またCMになった。
「ちょっと、ブス1週させて何のつもり」
「なんだよ、本当は水着審査したいくらいなんだから良いだろ…!?
んっ、水着…そうだその手があった!」
「何よ突然」
「水泳をさせる」
「はぁ~? 何でよ」
「素っぴんが見たいんだ」
ユミカの目が点になっているドン引きした様だ。
「…あきれた…怖いくらい本気ね」
「チョー本気だよ!やっと人に愛されるんだから」
思わず愛されたいと言う昔からの願望が口に出てしまった。それを聞いて、当然ユミカは不審に思う。
「えっ、何それ…どういう事」
「なっ、なんだよ深い意味はないよ…記憶を失くしてから初めての恋愛って事」
ユミカは、少し何かを考えた様だ。
「…そっか…そうだよね……今までの恋愛の記憶も無いんだね」
「えっ…そうそう、そうなんだよ」
… 危ない危ない、下手な事言うと狂ったのかと思われちゃうからな…しかし、この生活、思った以上に面倒だな …
100人のPRタイムが終了して、この時点での視聴者の採点による仮の順位を司会者が発表する。
「それでは、いよいよ視聴者の採点結果を見て行きましょう」
上位10人が発表され、1位はぶっちぎりで桜だった。
「予想通り1位は桜さんですが、お二人はこの結果をどう見ますか?」
… ヤバい…僕の好みがまるで入って無い。何か上手くテコ入れして状況を変えなくては …
「私的には納得出来る順位になってると思います」
そう言ったユミカが僕を見るその目はブスが居ないよ、どうするの?と問いかけていた。
「僕の考えとは少し違いますね…皆さんの順位はそれぞれが活躍の場を持っている人ばかり……僕のワガママだと分かってますが僕が求めているのは全力で支えてくれる人です」
僕を見て少し微笑んだユミカが見透かした様に喋り出す。
「そうか…亮介君の言う通り、これだとサポートが片手間になるような人選かも知れませんね。理想より現実的に私も考えてみたいと思います」
… 来たぁ~~ナイスアシスト!これで流れが変わるはずだ …
「お二人の意見は分かりました。なるほど確かに視聴者の人選は人気者が多いです。才能溢れる人ばかり、しかしそのぶん自分の時間に追われる事も多いでしょう…それではサポートに撤しきれない、やはり審査は難航しそうですがここで一旦CMに入ります」
「ユミカありがとう。最終的に決めるのは僕達だけど僕好みが不自然にならないで済みそうだ」
「良いのよ。亮介の為の人選をしなきゃね…貴方はとにかく10人を絞って。私は世間も納得するよう帳尻を合わせるわ」
「わかった」
こうして一次審査の放送が終わった。僕は何とか10人に絞りユミカは16人を選んだ、その中には桜が入っている…僕は桜の事をすっかり忘れていたがユミカがあんなに嫌がってた桜を選んだのが意外だった。
一次審査合格者は26人、落選74人と言う結果になった。
ネット上は賛否両論で荒れまくった。
放送終了後 第一会議室
会議室に戻った僕は、直ぐにユミカにお礼をいった。
「ユミカありがとう。助かったよ」
「良いの、亮介は好きにやって…私がフォローするから」
会議室に美麗も戻って来た。
「二人ともお疲れ様」
「ユミカ…桜を残してくれてありがとう」
「気にしないで、美麗ちゃんのためじゃ無い…
今日は桜にやられたは…でも負けたままじゃ終われないから、だから残したの…」
「ユミカらしいわね」
「敵意丸出しだなぁ…いったい桜と何があったんだ?」
「……私はもう帰るから…後で美麗ちゃんに聞いて」
そう言うと、リベンジに燃えるチャンピオンの様に怒りのオーラをみなぎらせユミカ元チャンピオンが帰った。
「そりゃ気になるよね」
「教えてくれないか」
「ユミカは2年前、亮介に会って変わった…それまでのユミカは自分に自信の無いファッションモデルだったの化粧も地味でね…」
「僕に…山神亮介に会って変わった…」
「そう…救われたって言っても良いかもね。
亮介と付き合う前に、彼氏を桜に寝取られてるの。桜はその頃からすでにスターで美のカリスマとして男女問わず人気があった…
そんなおりユミカに化粧品のCMの仕事が入ったの、もともと桜がやるハズだったCMでね、それが気に入らなかったんじゃないかな。
桜は、イケメンだけど大した人気もないユミカの彼氏を寝取ってCMを止めるようにって彼氏に言わせたの…彼氏にCMを止めろって言われたユミカは何故って?当然問い詰めた…そして桜の差し金だと白状させ全てを知ったユミカは激怒して、その彼氏と別れた。
傷付いた彼女はそれでもCMの仕事に望んだ女の意地かな…亮介とはそのCMの現場で知り合ったのよ。
当時あんたは、SNSに上げる写真に凝りだしてプロの仕事を見たいってスタジオに来てたの」
「偶然か…運命的だなぁ~」
「フフッ冗談じゃなく本当に運命だとあたしは思ってる。だってユミカを見て写真を撮らせろってプロのカメラマンをどかして何枚も撮ってデータをユミカに渡した…凄く良く撮れた写真なのに本当の君はこんなもんじゃないって言って…
結局CMの写真は亮介が撮ったやつで決まった」
「えっ、そっそんな才能が僕に…」
「その化粧品のポスターが話題になってユミカはスターになったという訳。
亮介が恩人なら、桜はあだなす仇って事なの」
「……そりゃ、負けたままで終われないな。最初は意地悪で桜を残そうと思ったけど、やっぱりユミカに肩入れするか」
「甘いわよ」
「えっ、何が?」
「みんな桜の評判を聞くとムカつくだやな奴だ言うけど…実際二人で話したり会ったりすると桜が好きになる…怖い女よ」
「すごいな…まぁ、僕は好みが違うから問題無いと思うよ」
「桜は可愛いだけじゃ無いの、人としての魅力がある」
「あれ?何か桜びいきじゃない…もしかしてユミカには内緒で桜と仲良しだったりして」
「あたしは誰とも親しくない…亮介と一緒であたしには敵と手下しか居ないわ。
でも相手にはあたしと親しいと思わせてるけどね」
「桜とも上手くやってるって事か、ユミカが悲しむなぁ~~。そりゃ~敵が多い訳だ」
「単なる広く浅くよ…特別親しくしてるのは本当にあんたとユミカだけよ」
三者三様の思惑が複雑に絡み合いオーディションは二次審査に向かう。
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