第5話
会見の司会として美麗が加わって質問を仕切る。
「ここからは2人の共通の友人であるわたくし小川美麗が間で仕切らせてもらいます。ご質問は挙手にてお願いします」
ほぼ全員が挙手をする。美麗は前列の右端の記者を指して質問を受け付けた。
「亮介さんに伺います。この1ヶ月は何処でどの様に過ごされてましたか」
「まず、今日の脳科学の先生による診断では異常が見付からず…僕の記憶喪失は原因不明との事です。先生いわく異常が無いと言う事は明日にでも記憶が戻る可能性があるとの事ですが保証は一切無し…
そして、今の僕には一週間前からの記憶しかありません…
その一週間は自宅に居ました…ただ見て分かるように体重が10キロ以上落ちてますので、まともには食事をしてなかったと思います」
「ご自分の認識も無いのですか?」
「…そうです…ただ、日常的な事は分かります」
「それでは、次に隣のかた質問をどうぞ」
「お二人の当面の予定を教えて下さい」
待ってましたとばかりに、美麗が企画の話を始める。
「その事なんですが、この度ニジTVで亮介さんのフォローをしてくれるのサポーターのオーディションを生放送します。これについては、二人の会見終了後に私から詳しく説明させて貰います」
僕のサポーターオーディションの話で、後の質問はお座なりになって僕とユミカは早々に会見を切り上げた。
ニジTV第一会議室
会見を終えた僕とユミカはニジTVに戻って先ずは、SNSでオーディションの募集をかける。
「僕達で募集かけたら、とんでもない人数の応募が来るんじゃないの…」
「何万人来るかしら…でも安心してニジTVで100人に絞ってくれるから私達はその中から選べば良いの」
… 助かった、何万人もの応募に対応するのかと思ったけどTV局でやってくれるなら安心だ…!?
いや、ダメだ逆転世界の人間が選んだらブス地獄だぁ!ヤバいどうしよう…僕の美意識の事を早く話さないと …
「その事なんだけど…」
「…どうしたの?」
「意識が戻ってから、とんでもない事に気付いたんだ」
… 逆転世界を楽しく生きる為のカミングアウトだ!ユミカよ聞いて驚けぇ~~! …
「どうも僕の美意識と言うか、美的感覚が皆とは真逆になってるんだ」
「はぁ……美意識?」
「まぁ、美術とかファッション…美人とブスの感覚」
「なにそれ…美人とブス……
もしかして……私は貴方にとって…真逆だから…まっまさか、ブス!?」
「別の言い方をすると僕は自分がブサイクだと思っている」
「えっ、えぇ~~~!!!!!!」
ユミカがどえらく驚いた!相当自分に自信があったのだろう。フッフッ残念だが、お前はブスなのだぁ~~!と心の中で叫んでからユミカをフォローする。
「ごめんね、驚かして」
「ちょっと…それって今後致命的な事になるんじゃない」
「そうかも知れないけど、それが今の僕の感覚なんだ…だからオーディションはブスの子でお願いします」
動揺しながらも僕に対応するユミカ。
「じゃ~オーディションの選考をまさか、ブスにしたいの?」
「そうゆう事」
「でも…それって何か不審に思われるよ…カミングアウトして世間にブスが好きって言ったって信用されないと思うよ…私がそうだし」
「分かってるだから半々で選んで欲しいんだ」
「なるほど…半々かぁ…でも、記憶が戻っても大丈夫?」
「オーディションで10人合格させる。半々で選べば何とかなるよ」
「分かった…美麗ちゃんに言っとかないとね」
「やっぱり皆、驚くよね」
「そりゃそうよ! しかも貴方、男性のファッションリーダーなんだから!……はぁ~こりゃ、優秀なスタイリストを探さないとダメね」
「スタイリストか……美麗に頼めば何とかなるか」
服のセンスなどはスタイリストを雇う事にした、美麗のニジTVなら優秀なスタイリストが腐るほどいる。これで僕は好みの女を抱けると有頂天…でも、そんな僕をユミカが不安そうに見つめる。
「私が何で貴方に肩入れすると思う…」
「えっ……やっぱり好きだから?」
「違うわよ! 打算があるの、貴方に貸しを作って味方にするためなんだけど……これじゃ記憶が戻るまで使い物にならないわね」
… けっ、どうせこっちの亮介には敵わねぇよ! しかも逆転世界の亮介は良い奴だ、僕はやな奴なのに …
僕はイラついて、ユミカに対してやな奴を発動した。
「今はどうあれ恩があるのは間違いな無いだろ」
「…なにそれ、もっと感謝しろって言ってんの」
「いや、恩があると言うことを言ってるだけだよ」
「性格まで変わって…まるで別人ね」
… おっ、敵意を出してきた…しかし別人かぁ~流石だ!良く見抜いたな…どうやらこの子は敵に回さない方が良いな …
「別人か……確かに、ユミカの話を聞いてると自分とは思えない……僕は…そんなに立派な人じゃない…」
ユミカの様に泣いて見せようとしたが、全然無理だった。でもユミカには僕が悲しんでると伝わったようだ。
「ごめんなさい、言い過ぎたわ。記憶を失くし苦しんでるのは亮介なのに…」
「良いんだよ、僕が君に甘えすぎてたんだ…ごめん」
しばらく沈黙で空気が重くなると、ユミカが気を使って話し出した。
「少し切り替えましょう…貴方…女好きは変わって無いでしょ?ディスってるんじゃないわよ、楽しい話オーディションの事よ」
「オーディション…」
「好みの女を選び放題」
思わず顔がニヤけてしまう僕なのだ。
「分かりやすいのね」
「ちょっと待ってよ、女好きと言うか普通に健全に好きなだけですよぉ~」
「フフっ、オーディションを急ぎましょう。サポーターが決まれば少しは余裕が出るでんじゃない」
僕はオーディション番組の会見をしてる美麗にメールで放送日を早める様に頼んだ。ユミカはスマホで熱心に何かを検索してニヤけると僕に画像を見せた。
「どう、可愛い?」
素っぴん美人の画像だった。
「可愛い!だれ誰、友達?」
「ちょっと冗談でしょ!亮介これで本当に立つの?」
… 立つのって下品な…でも本気で驚いてるな、こっちはお前の方が立たないってんだよ …
「亮介の好みそうな画像を検索したんだけど……流石にこれはないと思ったらアリなのね。やっぱり私に今の亮介の好みの判断は無理みたい」
オーディション対策で僕の好みを確認してくれたみたいだ。
「ありがとう。でもユミカはユミカの感覚で選んで、その画像みたいな子は僕が選ぶから、そうすればちょうど半々になるでしょ」
「そうね、その方が良いみたい」
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