第18話 王子と従者がガラスの靴を持って
そうして、王子と従者がガラスの靴を持って、シンデレラの屋敷にやって来た。
上の娘が、ガラスの靴を履こうとするが、つま先が引っ掛かって履くことができない。継母はそれを見て、
「あら、つま先を切り落せばいいのよ。妃になったら歩く必要はないんだから」
そう言って、娘のつま先を切り落としてしまいます。
そうして、ガラスの靴を履くことができた姉は、従者に連れられ、王子の元に行くのですが、その途中の森の中で、白い鳥の鳴き声を聞くのです。
「ガラスの靴が血に染まって真っ赤か。その人は、王子様の妃に相応しくない」
その声を聞いた従者は、シンデレラの家に引き返します。
次に下の娘が、ガラスの靴を履こうとするが、今度は、かかとが入りません。
そうです。継母は、今度は、娘のかかとを切り落としてしまうのです。
再び、 ガラスの靴を履くことができた姉は、従者に連れられ、王子の元に行くのですが、その途中の森の中で、白い鳥の鳴き声を聞くのです。
「ガラスの靴が血に染まって真っ赤か。その人は、王子様の妃に相応しくない」
再び、その声を聞いた従者は、シンデレラの家に引き返します。しかも、今度は、何度も誤報に騙され、頭に来ている王子も一緒です。
「さあ、この家にはもう一人娘がいるはずだ。その者にもガラスの靴を履かせるように」
「いえ、あれは娘ではございません。あの者は、住む所もない浮浪者、ここの台所に置いてやっているだけです」
「黙れ、娘の足を切り落とす愚か者め! この者をひっ捕らえろ!」
王子が叫び、遂に継母は捕まってしまいます。
そこに、灰まみれの汚らしい娘が、王子の前に進み出ます。
「わたくしに、ガラスの靴を履かせてください」
「このような汚らしい者、履くまでもない」従者は進み出たシンデレラを叱責するが、王子は従者を制して言ったのです。
「国中の娘に履かせるように申し伝えたはずだぞ。娘よ、履いてみるがよい」
「はい」
シンデレラは、ガラスの靴を履いてみる。シンデレラの足は、ガラスの靴に吸い込まれるように入り、ピッタリとフィットしています。
「「「な、なんと!」」」
娘は、ポケットからもう片方のガラスの靴を取り出して履いたのです。
すると、窓から数羽の白い鳥がやって来て、シンデレラのボロボロの服を引き裂きます。
娘は、宝石の光輝くドレスを身に纏います。
「あなたは、舞踏会で出会った方、もう、逃がさない!」
王子は、シンデレラを抱き寄せ、キスをします。
母を捕えられた姉たちは、手のひらを返したように、シンデレラに取り入ろうとするのです。
しかし、シンデレラの回りを舞っていた鳥たちに、目玉をえぐり取られてしまいます。
歩くこともできず、視力を失った姉たちも従者たちに取り押さえられます。
継母や娘たちは、牢屋で朽ち果てることになるのでしょう。
そして、王子とシンデレラは、結婚し、末永く幸せに暮らしたのでした。
幕が下り、客席からは拍手が鳴りやまない。
「なるほど、グリム童話は、最後にざまぁーがあるわけだ」
「そうね。残酷描写が結構あるわね」
「それにしても、足を切り落とそうとする時点で、従者、普通は、サイズが合わないことに
気付くだろう?」
「たしかに、あんなまぬけが側近だと、スパイが何人も入り込めるわね。あの王子様の国も長くはもたないんじゃないの」
そう言うと愛は、考え込んでしまった。
(こんなに、大々的にFGCを使ちゃった。たぶん、この会場の中にも、何人かスパイが紛れ込んでいるかも知れない。FGCを使ったお遊びも、そう長くは続かないかもしれない)
そして、会場の中では、佐藤とローズが興奮していた。
「見たか、あのシンデレラの衣装! あれは絶対に光子グラビティを使った光の演出だぞ」
「たぶん、間違いないワ」
「ビデオにも撮ったし、すぐに解析にまわす。引き続き、二人を監視していてくれ」
「わかったワ」
佐藤は会場を飛び出して行く。
「さて、あいつらに先を越される前に、私たちも動くとスルカナ」
ローズは、携帯を取り出し、どこかに電話を掛けると、英語で話を始めた。
「ハロー、ローズよ」
「ハロー、ローズ、今のは誰ダイ?」
「やっぱり、私たちを監視してイタノネ。別に日本での仕事仲間ヨ」
「でっ、俺たちも見ていたが、あれが、光子グラビティの威力か? あれが、なんの役に立つノヤラ?」
「私たちは、実働部隊ヨ。オツムの方は研究者に任せて、私たちは、頭から下を使えばイイノヨ」
「ローズ、お前の言う通りだ。日本の仕事仲間が動く前に、多少手荒なまねをするが、あのシステムいただくぞ」
「ええっ、異存はナイワヨ。それじゃ、打合せ通りニネ」
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