一章

「柚(ゆず)。僕とこれから先も、東京で暮らしてくれませんか?」



 それは大学3年の時から遠距離恋愛をしていた彼がプロポーズをしてくれた時の言葉だ。

 彼の名前は、山本 蒼 (やまもと あお)で、私はいつも「蒼さん」と呼んでいる。

 付き合ってちょうど3年経った時のことだ。彼はきっと記念日のことをしっかり覚えてくれていたのだろう。

 彼は男の人には珍しく、記念日などを大切にするまめな人だ。

 そして、大人で優しい声をしている。



 私は森下 柚(もりした ゆず)という名前だ。

 私は関西、彼は東京の武蔵野というところに住んでいた。

 年齢は、彼の方が5歳上だ。

 出会い方は、ネットだった。

 所謂マッチングアプリだ。私は真剣に今後付き合う人をそこで探していた。

 周りの人は色々言ってきたけど、私は出会い方に特にこだわりはなかった。

 出会いなんてどこで生まれるかなんてわからない。

 運命が、私達を巡り合わせてくれたのだと私は確信している。

 確かに私は少しロマンチックなところあるけれど、ただ二人の間に愛があれば、それでいいと思う。

 実際に、彼が私のことを愛してくれるいるのも感じることができた。

 私達は毎日電話し、2ヶ月に一度ぐらいの頻度でデートを重ねていった。

 いつも待ち合わせするのは、武蔵境駅の改札前だった。

 私はいつも彼に会いたかったから、すぐに飛んでいっていた。

 待ち合わせ場所に、特にこれという理由はなかったような気がする。

 けれど、いつもそこだった。

 たぶん、そこが彼の最寄り駅だったからだろう。

 駅はきれいに整備され新しいけど、駅周辺は閑静な場所だ。

 それでいて、私の暮らしている街とはまた違う趣きをしている。

 そこから私達はいつも電車に乗り、タピオカやロールアイスなどを食べにでかけていた。

 二人とも甘いものが好きだった。食べ物の趣味が合うことは、付き合う上で大切なことだと私は思っている。

 だって食べることは毎日のことだから、それを一緒に美味しいと感じたい。

 思い出していると、たくさんのところにデートに行ったなあと自然と笑顔になっていた。

 

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