My Dear Sister

はがね

第1話

 私の最初の記憶は、2歳になる少し前のある朝のこと。

 目が覚めたら、誰もいなかった。お父さんも、お母さんも。古いアパートの4階のおうちの中はしんとして、まるで知らない場所のよう。不安に胸が潰れそうになり、どんどん泣きたい気持ちになってきた。


 それでも数秒間はがまんして、だけどとうとうがまんできず今まさに泣き出そうとしたときに、玄関のドアがばんっと開いた。驚いて振り向くと、お父さんがどかどかと早足で入ってきて、そのまま私の前にかがみこんでぎゅうっと強く抱きしめて―。その瞬間、私の不安は霧散した。お父さんがいればだいじょうぶ、お父さんがいればこの世界に怖いものはない。きっと、守ってくれるから。


 抱きしめていた手を緩め、私の目を覗き込みながら、お父さんは言った。


「ごめんな、メグ。独りで心細かったろう。夜中にお母さんが産気づいて―」


 さんけづくって、なぁに? 聞くより早く、私を放したお父さんは大きなカバンを引っ張り出してあれこれ詰め込み始める。それから私を着替えさせて、手をつないで2人で家を後にした。


       ***


 着いた先は、病院で、お母さんは入院棟の大部屋のベッドに半身を起こして座っていて、その腕の中には何かを大切そうに抱えていた。それ、なぁに? もしかして、赤ちゃん? お母さんが、そっと、 “それ” を差し出して見せてくれた。


「あなたの妹よ。仲良くしてあげてね」


 赤ちゃん!! 私の、妹!? 頭が追い付かなくて、世界がぐるぐる回った。私、お姉ちゃんなのね。絶対、ぜえったい、大事にする! 興奮して叫んだ私の言葉に、お母さんはにっこり笑った。


「ええ、お願いね。私、運がいいわ、こんなに可愛い子たちを授かって」

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