番外編一話 水野裕翔の過去

小学一年生。


彼は一年三組だった。やんちゃな子が多く、クラスになじむことが出来なかった。

いつも教室の隅にじっとしているしか無かった。


彼の誕生日は4月18日。クラスの人も何人か持っているようだったし、ゲーム機をもらえるのだとばかり思いこんでいた。


しかし、彼の母は良いよと言ってくれなかった。彼が駄々をこねると、じゃあ誰が持っているのかと聞いた。


彼は答えようとした。しかし何も言葉が出てこない。もともと人の名前を覚えるのが苦手な上、ほとんど接点のない人の名前なんて覚えていられない。


答えないことに対し、母がどう考えたのかは知らない。けれど、結局その年の誕生日プレゼントは自転車だった。


その後9か月、彼が学校ですることは、目立つことを避け、黙って授業を受け、黙々と給食を食べることだけだった。


1月。彼はインフルエンザにかかった。39.7℃の高熱だ。彼は家のベッドで寝ていた。そして、誰かが来るのを待っていた。


途中で再発し、出席停止は11日間だった。彼は悲しい気持ちのまま2か月を終え、2年生に進級した。


そして4月19日。やっとゲームを買ってもらえた彼は、さっそく電源を入れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る