日常編
はいよるかいぶつたち
リガの街 sideリリアーナ
「コレットー、クリスー。ハイハイはこうやってやるんだぞー」
旦那様がカーペットの上で、ハイハイのお手本を子供達に見せている。
気がつけば子供達は、寝返りも座る事も出来るようになっていた。その時の旦那様は大喜びで写真を撮っており、今も机の上には、いつでも撮れるように写真の魔具を置いてある。どうやら海の国に行っていた時に、成長を見れなかったのがとても悔しかったらしい。
「へっへっ。手足をパタパタさせても可愛いだけだぞー」
「あうー」
「あー」
「クリスー。コレットちゃんー。こっちこっちー」
お腹で体を手足を動かしている子供達が可愛らしかったので、思わず自分が写真を撮ってしまった。そろそろ新しいアルバムを買わないと。書斎の本棚は足りるかしら?
「ポチ!タマ!お手本だ!」
「わん!」
「にゃー」
ポチちゃんとタマちゃんが子供達の横に並ぶと、前足だけ交互に動かして前へ移動する。子供達は彼等のことが大好きなので、目は釘付けで尻尾をなんとか掴もうとしている。
「ほらコレット。追いつかないと」
「はいクリス」
ジネットさんと同じ様に、クリスのお尻を少し持ち上げて補助をする。
「あうあう」
「あー」
あら!?今!
「おお!いまちょっと前に動いたよね!?」
「ええ貴方。前に動きました」
「今もです!」
ゆっくりとだが少しずづ前に動いている!
「すごいぞー!パパのとこまでおいでー。…ってあら」
慌てて写真を撮り始めてこっちへおいでという旦那様だが、子供達は目の前の尻尾を振っているポチちゃん達の所まで来ると止まってしまった。動く尻尾をなんとか捕まえようとしている。
「これはこれでいっか!」
少し悲しんでいた旦那様だが、尻尾と戯れている姿にすぐに元気になりまた写真を撮り始める。
私達も子供達を座らせてあげる。
「そろそろお昼にしようか」
暫く子供達を見ていたが、もうそんな時間に。
離乳食を作らないと。
◆
「はいクリスちゃん。お口拭きましょうねー」
私の腕の中で離乳食を食べながら、涎で汚れてしまったクリスの口周りを旦那様が拭いている。
クリスもコレットちゃんもドロテア様の言う通り成長が早く、その分か食欲も旺盛でよく食べようとする。ドロテア様は、特に問題ないから好きなように食べさせていいと仰っていて、子供達も確かに太っている感じではない。
しかし、こんな乳幼児の頃から成長するなら、大人になったらどんな子になるのだろうか。勇者かしら?出来れば戦いからは遠ざかっていて欲しいけど、強い力は色々と引き寄せてしまう。良い悪いに関わらず…。
「大丈夫かいリリアーナ」
「え?は、はい大丈夫です」
「大丈夫さ。なんたってお、パパとリリアーナの子なんだ。きっと大丈夫」
「はい!」
本当に愛しい人…
「コレットちゃんはお腹いっぱいですかー?」
でも思った以上に子煩悩な人だった。そこがまた可愛らしいのだけど。
◆
「今日もいい天気だ」
「うふふ。クリスはお外が好きね」
「コレット?全く…寝てしまった」
晴れた日は毎日クリスを抱っこして散歩しているが、クリスは外が大好きだ。今も目があちこちに動いて興奮したように手足を動かしている。
反対にコレットちゃんは昼よりも夜の方が活発になるため、外に出ても寝る事が多い。だが試しに夜にジネットさんが連れ出してみると、今のクリスの様になっていた様だ。ダークエルフの血だろうか?
「あー!あー!」
「まあ蝶が」
「クリスは生き物に好かれるなー」
クリスが庭に出ると、よくこうやって生き物が寄って来る。今もクリスのお腹に蝶が止まって、お互いに見つめあっている。
この前は小鳥が私の腕に止まってクリスを覗き込んでいた。
「あー」
「まあまあ」
「きっとクリスとお話がしたいんだ」
更に、今までの興奮が無かったように止まっていたクリスの手に、蝶が飛んで止まった。
「このまま散歩しようか」
「そうですね」
「うふふ。よかったわねクリス」
クリスと蝶は、散歩が終わるまでずっと見つめあっていた。
◆
「クリス。今日はママとお寝んねしましょうねー」
子供達は段々と夜泣きしなくなったため、ついに旦那様が一緒に寝る事を許してくれた。常に起きている旦那様とアレクシアさんに申し訳ない気持ちもあったが、クリスと一緒にいる事も望んていたためよく旦那様に相談していた。
当のクリスは、あまり私の部屋に入った事が無かったため、周りをキョロキョロしている。環境が変わって泣き出さなくてよかった。
「さあ、ママが子守唄を歌いますからね」
クリスを揺らしながら、エルフがよく歌う子守唄を聞かせると、すぐにウトウトし始めた。昼によく動くようになったからか寝付きもいい。
「お休みクリス」
クリスをベビーベッドに移し、寝顔を見た後私もベッドに入る。
明日この子は、どんな新しい表情を見せてくれるのだろうか。
◆
「ぬおお!?コレット!クリス!パパも寂しかったぞおお!」
驚いたことに、次の日にはもう一人でハイハイできるようになった子供達だが、初めて旦那様が居ない夜を体験したせいか、一直線に旦那様の下へ向かった。
「ようし、今日はずっとパパといようなー」
抱き上げた子供達に顔をペシペシと叩かれながら、幸せそうにしている旦那様。
本当に幸せな日々。
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