ポチとタマ2

「うふふ。ポチちゃん。クリスが何か言ってますか?」


「わふ」

⦅分かんない!⦆


ソファで横になりながらリリアーナの足を揉んでいると、ポチが余ったスペースに乗り、リリアーナのお腹にそっと耳を寄せている。


「うふふ。早くポチちゃんと会いたいって言ってますよ」


「わん!」

⦅ほんと!?ボクも早く会いたい!⦆


思念も無しにポチと会話するとは流石リリアーナ。

よし終わった。マッサージはこのくらいでいいだろう。


「わんわん!」

⦅ご主人ボクも!⦆


「うふふ。あらあら」


ポチが床に降りてゴロンと仰向けになった。精霊とはいえ野生は欠片も感じない。

仕方ないなあ。それ、わしゃわしゃ。


「わふわふ!」


ポチのお腹をわしゃわはすると、体をくねらしながら喜んでいる。愛い奴め。そらそら。


「きゅーん!」


ついに舌までベロンと出してしまった。


「あ、そうだ。引っ張り合いっこする?」


「わん!」

⦅する!⦆


そういえば、犬は引っ張り合いっこが好きだったなと思い出して紐を出すと、ポチが飛び起きて尻尾を振っている。


「よし勝負だ。おお、意外と力が強いなポチ」


「うー!」

⦅負けないー⦆


やってみたらポチは大喜びだったが、思ったよりも力が強い。これなら頼もしい番犬になるだろう。今も尻尾を振ってだから可愛いだけだが。


「ははは。まだまだだなポチ」


⦅ご主人強いー!⦆


ポチも必死に四肢へ力を入れて踏ん張っているが、力比べにおいて俺に敵うものはそういないだろう。

あ、紐が千切れた。


⦅きゃうん!⦆


紐が切れた反動で、後ろに転がってしまうポチ。


「あらあらポチちゃん、大丈夫?」


「わん!」

⦅大丈夫!もう一回!⦆


すぐに態勢を立て直して、俺の足元でお座りするポチだが、さてもっと丈夫な物は…。ああ、いい物があるぞ。


「今度はこれでしよう」


「わんわん!」

⦅骨!骨!⦆


犬と言えば骨だ。例の亀擬きの骨なら頑丈さはピカ一だろう。


「じゃあもう一回だ」


⦅うん!⦆


一通り遊ぶと、骨はポチのものとなった。

どうやら生まれた時に、俺のイメージの影響で犬の好物もそのままになったようだな。

さて次はジネットだ。



「タマ、何か聞こえるのか?」


「にゃあ…」

⦅否。いつコレットに呼ばれてもいいように⦆


「ふふ。そうか」


ジネットは、ポチのいう事は分からない様だが、タマが何を言っているかは大体わかるそうだ。タマもコレットの事を気にしている。今もマッサージを受けているジネットのお腹に、ポチと同じように耳を当てている。


⦅残念無念。やはり聞こえない⦆


「生まれたらいつでも話せるさ」


「にゃ」

⦅待ち遠しい⦆


なに、気がつけばあっという間さ。


「にゃ」

⦅援護開始⦆


一通り満足したのか、俺が揉んでいるジネットの足とは反対側に移動し、その小さな肉球の付いたお手てで、ジネットの足を揉み始めた。やだ可愛い。


「ふふ。ありがとうタマ」


⦅どういたしまして⦆


お礼を言っているジネットだが、気持ちがいいというよりくすぐったそうだ。


「タマ。そーれ」


「にゃ!」

⦅標的発見⦆


マッサージを終えた後に、紐を取り出してタマの目の間でゆらゆらさせると、案の定、手で追い回し始めた。タマも俺のイメージ通りに生まれた様だ。


「それそれ」


「ふふ」


⦅標的複数⦆


つい両手にそれぞれ紐を装備して揺らすと、見事に両方に対処して猫パンチしている。やるな。


「ここか?ここがええんか?」


「ごろごろ」

⦅我満足⦆


満足したのか、タマが俺の膝に乗って来たので、喉元をくすぐると、ごろごろ言いながら満足そうに眼を閉じている。

可愛いのう。



「よし。どうだポチ」


「わん!」

⦅ご主人ありがとう!大好き!⦆


やはり犬と言えば犬小屋だ。急遽、屋敷内と外にそれぞれ犬小屋を、仕事用の木材を利用して作った。中には大きめのタオルと、ポチの宝物である亀の骨を入れてある。

タマの方はそういうのは要らんらしい。


「そろそろ夕飯だけどどうする?」


⦅ボクも行く!⦆


「よしよし」


⦅抱っこ!⦆


精霊だから食事は必要ないが、皆が居る所にいたいらしい。つい抱っこしながら運んでしまう。


「お待たせ皆」


「おやだんな様。ポチの尻尾が千切れそうじゃ」


「わん!」

⦅皆いる!⦆


もう皆集まっていた。

そして、セラの言う通り、ポチの尻尾が千切れそうなくらい振られている。どうやら皆に会えてうれしいらしい。

タマは…。

机の下でセラの足に抱き着いている。尻尾も巻き付いてる。


「離してくれんのじゃ」


「にゃあ」

⦅動かざること山の如し⦆


どうやら今はセラに甘えている様だ。しかし、セラも満更では無さそうだ。


「なかなか可愛らしいのう」


さて、俺もポチを下ろして椅子に座ろう。


「それでは頂きます」


おっと、ポチも机の下に潜り込んでしまった。


⦅はふう⦆


⦅快なり⦆


俺は風呂に入っているが、どうやら2匹とも風呂が好きらしい。普通の犬と猫は、あんまり好まないと聞いた覚えがあるような無いような。やっぱ俺の影響だな。

しかし、今の二匹は、大きめの桶にそれぞれ入って、桶の端に頭をのせてうっとりしている。

そうだ、ちょっと小さいタオルを頭にのせてみよう。

に、似合いすぎる。可愛い。


「そろそろ出るよー」


⦅はーい⦆


⦅了解⦆


さて、2匹を拭こう。

そりゃあ!


⦅きゃー!⦆


⦅ごろごろ⦆


タオルで拭くと2匹とも大喜びだ。ポチはニパっと笑ってるし、タマも目を閉じてごろごろ言ってる。

もっとしてあげよう。それそれ。


「それじゃあ俺たちは寝るからね。お休み」


「わん!」

⦅はーい!⦆


「にゃあ」

⦅お休みなさい⦆


就寝の挨拶をすると、2匹ともとことことリビングに入って行った。ポチは犬小屋に、タマの寝床はソファの上なのだ。

まあ2匹とも睡眠は必要ない様だが。

さて、今日はジネットとリリアーナと一緒だ。


朝か…。

今日も母子ともに異状なし!

いい天気だ!


ん?扉の前にポチとタマの気配が。


「わん!」

⦅ご主人おはよう!⦆


「にゃ」

⦅起床のラッパです⦆


扉を開けると、お座り状態のポチとタマがいた。


「おはよう」


可愛いやっちゃ。今日もよろしくね。

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