四段落
リガの街 ユーゴ邸 深夜
「勇吾様ぁ…すぅ…」
まだ夜も遅い時間だが起きると凜が俺の体の上で、首にしっかりと腕を回して抱き着いて寝ていた。可愛い。
セラは…元に戻ってるな。ナイスバディのまま襲われたから、えらい目にあった。
「勇吾様ぁ」
む、凜の顔が近づいて来た。寝ぼけながらキスかな?かかってこい!
ちゅ
「はれ?」
キスした瞬間に凜の目がぱちくりと開いた。あ、顔がどんどん赤くなってきているぞ。
「あ、あ、あわわわわ!?」
自分が何をしたか分かったようで口ではあわあわ言っているが、抱き着いた体勢はそのままだ。夜の営みもそれなりやっているが、初々しいままだ。
「あ、あの!?勇吾様これはですね!?んむっ!?」
特に言い訳は必要ないのでこっちからキスして塞いだ。
「ぷは…。ゆ、ゆうごしゃまぁ」
たっぷりキスすると、凜の黒かった瞳が若干金色になり、おでこから角が小さく上に生えていた。結婚して分かったが、どうやら嬉しさを限界突破すると鬼の血が強まり、体の方にも影響が出る様だ。
「勇吾様ぁ…そのう…」
上目でチラチラと俺の方を伺うリン。もう一つ分かったことは、鬼の血が活性化すると凜がかなり積極的になり、普段の名前通り凛とした少女ではなく、艶にまみれた妖しい女性に変貌する。今も無意識だろうが誘われているのだ。
まだ夜だし、一人の男として答えよう!いざ!
◆
キュッキュ
あの後セラ達も起きてえらい事になってしまった…。もう朝だが皆ぐっすりだ。
ところでブラシ1等兵、寝湯というものをご存じかな?知らないか。寝転がれる台で薄ーくお湯が流れているのだ。子供の時にお袋に連れられて行った温泉にあってね。あそこは外にあったが、タオル一枚掛けたおっさんがすうすう言いながらそこで寝てたんだよ。俺もと思って体験したが、ありゃあ良かった。外での開放感もあってつられて寝そうになったね。お袋を待たせちゃいけないと思って耐えたが、一人で来てたら絶対寝てたわ。
どうしてそんな事を言い始めたかと言うと、家にも欲しくなったのだよ。まあ、本命は子供用の小さい浴槽だが。ほら、ここの浴槽大きくてそこそこ深いでしょ?浴室自体の余裕は結構あるから作ろうと思ってね。ついでに寝湯を作ろうかと。
なあに、くり抜いたり穴を開けるのは得意だからな…ははは、はは。
◆
side凜
お、女の方から誘惑してしまうとは、なんとはしたない事をしてしまったのだ!?
夜の褥を共にする時はいつもそうだ!接吻されたり耳元で愛しているとささやかれたり、さ、最中の時も!勇吾様の事を思って胸が高まりすぎると、鬼の血が疼いてしまうのだ!
父上ぇ…父上は男だったからよかったかもしれませんが凜は女子なのですぞぉ…。
「よっと」
「き、きゃあ!?」
廊下で悩んでいると後ろから勇吾様から横抱きにされてしまった!
「一名様ごあんなーい」
「ゆ、勇吾様!?」
そのままリビングの勇吾様がよく座っているソファに連れていかれたが、何故私はソファでなく勇吾様の膝の上なのでしょうか!?
「凜。普段のキリっとした凜も、俺を求めてくれる凜も、どっちも俺の大好きな凜なんだ、あまり悩むことはないよ」
「あうう…」
私の悩みを当てられてしまった。それに手が私の前に回されて、後ろから抱きしめられている。
「でも、その、はしたなくはないでしょうか?女の方からなど」
「そんな事はこれっぽっちも無いさ。それだけ俺の事を愛してくれてるってことでしょ」
あううう、勇吾様の顔が私の肩の上に。
「夫の俺が言うんだ。間違いないとも」
「はぃ。ゆうごしゃまぁ、愛してまひゅ。じゅっとでしゅ。じゅっと」
「おれもだよ。愛してる凜」
しあわせぇ。
◆
sideユーゴ
「すう…」
安心したのか凜は俺の膝の上で寝てしまった。凜は自己の肯定が少し出来ていないから、気を付けておいてよかった。
「旦那様。あらリンちゃんはお休み中ですね」
「リリアーナ」
リリアーナが微笑ましいといった感じで凜を見ている。リリアーナからしたら凜も娘みたいなものだろう。…歳の事を深く考えるのはよそう、それこそ天罰が降ってくる。なんたって聖女様なのだ。
「リンちゃんもここに来た時は随分と気を張っていましたが、こんなあどけない顔を出来るようになってよかったですね」
「そうだね。本当によかった」
重い物を背負い過ぎていたのだ。ゆっくり休み方も覚えたほうがいい。
布団叩き2等兵!薄い布団をよろしく頼む!彼もそのうち昇進だな。
「それじゃあ次は私ですね」
流石リリアーナだ。凜をソファに寝かせた後に俺の上に乗るとは、まさに機を見るに敏。
◆
特殊工作兵集合!
鋸、ハンマー、チョーク、設計図面工作兵達、よく集まってくれた。
以前作った木の風呂以来だが、また浴室の改造を手伝ってもらう。作成するのは寝湯と幼児用の小さな浴槽だ。工期は…まあ短めで。寝湯の方は好評だったら数を増やすが、幼児用のは最初から少し数がいる。なんたって目指せサッカーチームで対戦だ。特にリリアーナの計画がさっぱり分からん事にはある程度の数は欲しい。
あと、木製製作班は作業場で持ち運び出来る、小さな浴槽的なのも作って欲しい。ハイハイも出来ないような乳幼児用だ。
当然だが、本作戦は将来の大将育成のために必要な重要案件だ。諸君らの健闘を期待する。
以上解散!作業に掛かってくれ!
カッ!
うむ。一糸乱れぬ敬礼だ。
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