帰宅 新居
帰ってきました我が家。
「ここが我が家だよ」
「ここが…」
「ユーゴ様のお屋敷…ごくっ」
アリーさんや。興奮しているところ悪いのだが、引越しはもう確定事項なのだ。これ以上は無理だ。
「じゃあ入ろうか。他の奥さん達紹介するね」
連絡してないけど大丈夫だよね。
「うむ!」
「はい」
「ただいまー」
「ご主人様!!」
ルーがすっ飛んで抱き着いてきた。うりうり、愛い奴愛い奴。
「あなたお帰りなさい」
「旦那様!」
ジネットとリリアーナにもただいまのハグとほっぺにキスだ。
「紹介するね。新しい奥さんのセラとアリー」
「セラというのじゃ!よろしくお願いするのじゃ!」
「アリーと申します。どうぞよろしくお願いします」
改めましてよろしくね。
幸せな家族ってやつになるため、俺も頑張らなければ。
都合よく空いてる大きな家あるかな…。最悪土地だけでも。
◆
倉庫から色々取り出して親睦会だ!
「アリーさん、シルキーなんですか!?じゃあお家の事とか完璧なんじゃ!?」
「はい。力を使えば小さな城くらいでも私一人で回せます」
「セラちゃん、これ美味しいですよ」
「ありがとうなのじゃ。じゃがその…頭のおっぱいが重いのじゃ…」
メイドとしてか、アリーに結構話をしているルーと、外見は少女だから、膝にのせてセラを甘やかしているリリアーナ。うん。早速打ち解けているようで何よりだ。セラはちょっと埋もれてて表情が見えないけど。
「あなたどうぞ」
「ありがとジネット」
「それで床入りはどのように」
「あ、それはですね!」
「うう…初夜なのじゃ…緊張するのじゃぁ」
「大丈夫ですよセラちゃん。私も最初は緊張しましたけど」
いかん。お酒が入りすぎてイケない方向に話が。
悪酒ダメ。
◆
死ぬかと思った。
セラは血をちゅうちゅう吸ってくるし、アリーはアリーで手を恋人つなぎしながらベッドに押さえつけてくれと言ってくるし。
その上、セラとアリーに遠慮してた3人みたいだけど、セラとアリーが終わって眠ると、突撃我が家の寝室をして来た。居ない間、寂しい思いをさせてしまったらしい。男気を発揮したが…。
ほんとに死ぬかと思った。
「ここですねご主人様」
「うん」
皆と一緒に不動産屋だ。長く住むところなんだ。皆の意見を聞かねば。
お邪魔しまーす。
「ようこそいらっしゃいました。本日のご用件は何でございましょうか?」
「実は新居を購入しようと思いまして、出来れば大きな家か土地をと」
「それはそれは!どうぞこちらに。資料をすぐにお持ちします。君、お茶の準備を」
大人数できたものだから、目が点になっていた店主らしき人物だが、デカい家の購入と聞いたら目が金だ。
「エリー。こっちの方はどう?」
「あ、いいかも。でもトーマス、こっちもなかなか」
げえっ!?看板娘と雑貨屋息子のバカップル!!?お前らどうしてこんなところに!?新居を構えるのか!?店主の墓はどうするつもりだ!?
というか俺はこの歳になって、このバカップルと同じラインにいるのか!?
「こちらになります」
「あ、ありがとうございます」
いかん。思ったよりダメージがデカい。
「何か条件等はございますか?」
「そうですねえ。とりあえず大きければ大きいほど。皆は何かある?」
アリーが居るおかげで、最大の問題点である維持が解消されたのはデカい。
「はい!お部屋が沢山あればそれでいいです!」
「私も子供部屋があれば」
ルーとリリアーナは、部屋が沢山あればそれでいいらしい。他の奥さんも特に要望はない様だ。
「とりあえず一番大きな物件の資料はありますか?」
「は、はい…その…少しお待ちください…大きい方から順に持ってきますので」
目が金になってた店主が白目になってしまった。ははあ、さては訳アリだな?
「まずこちらが、当店で取り扱っている一番大きな物件になります」
おお、写真擬き。資料にも金掛けてるな。
しかし、こいつはまた…金ぴかだな。砂の国の商人が好きそうだ。だがかなりデカい。すんごくデカい。こんな地方都市に何考えてこんなの立てたんだ?
リフォームすれば問題ないかな?
んん?
「あまり不動産は詳しくは無いのですが、それでもなかなかお安いのでは?」
「わ!お安いです!」
こいつか訳アリは。
「そのぉ…正直に申しまして…。前の持ち主は、砂の国の商人の方でして…。大変裕福の方ではあったのですが…国元で不審死を遂げられまして…。これだけ大きな物件となると大商人の方くらいしか需要が無くてですね…ですが、縁起が悪くて…同じ商人の方でしたから…」
あいつかああ!!!?
土地と建物に罪は無いが俺だって嫌じゃ!!!
却下!!
「すいません次お願いします」
次行ってみよう。
ゴメンね皆。でもここはちょっとないの。
「はあ…。その…次もちょっと…」
大丈夫かこの店?お祓い行った方がいいよ?ここに有難い元聖女様がいるけど、どう?
「どれどれ」
おお。さっきのとデカさは変わらんが、比べ物にならんくらい落ち着いた外観だ。庭も綺麗だし。
「わあ。ご主人様!いい感じですね!」
「だね」
店主殿さっさとゲロりなさい。さっきのも安かったが、こいつはさらに安いぞ。
「そのですね…どうも出るようでして…」
今度は幽霊屋敷かい!マジでお祓い行ってこい!
「出るって何がじゃ?」
「お化けとか幽霊とか…そういった類が…。夜中に物音とか掃除道具が勝手に動いて、一月以上居られた方は居ません…」
「ひょえ!?」
あら可愛い。セラってばそう言う類ダメなのね。今にもアリーのスカートの中に隠れそう。多分、もっと幼いころは隠れてたんだろうなあ。
「ただ、次に大きな物件となると、かなり落ちてしまいます。多分はこれはどこの店に行っても同じかと。この辺りのサイズともなりますと、業界でも入ってる入って無いは話題になりますから」
ううむ。確かにどれも、子供が生まれて来る事を考えると不安が残るな。リリアーナはサッカーチーム作れるくらい気合入ってるし。こっちにサッカーないけど。
「旦那様。一回こちらのお屋敷に行ってみませんか?低級な悪霊でしたらどうという事はありませんし」
流石リリアーナだ。これ以下の物件の部屋数では話にならんのだろう。家族が増えるのは俺も嬉しいけど、一応予定を聞かせて欲しいような。
「分かりましたご案内します。ただ、敷地内はどうか勘弁してください。屋敷の中で聞いてしまった笑い声がいまだに…」
「ア、アレクシア…怖いのじゃ…」
「はいはいおひい様。スカートの中へどうぞ」
お払いだな。
セラはやっぱり昔からそうしてたのね。
◆
「あなた、これはまたなかなかですね」
「そうだねジネット」
実物を見ると、さらに見事だ。というか屋敷自体が一番大きな物件に負けず劣らずなのに、庭とか敷地も合わせるとかなりのもんだぞ。なんで小川あるんだよ。
「出るという割に庭とか外観は綺麗なもんじゃのう。管理は出来とるなら、それほど大したことないのでは?」
「それがそのう…。私共はなにもしてなくてですね…」
「ぎょえ!?」
あ、今度こそスカートの中に隠れた。可愛い。
「申し訳ありません。私はここまでで…。こちらが間取りの資料となっております」
「はい。それでは行ってきます」
「おひい様。行きますよ」
「も、もう少し待って欲しいのじゃあ」
よろしい。ならば普通に抱っこだ。
「あっ。ユーゴ様…こんな白昼で…言って下さったら」
続きが気になるが、アリーのスカートからセラを回収して抱っこする。
「うう…目を瞑ってるから、終わったら教えて欲しいのじゃ」
大丈夫?血は出てないけど首筋カプッっとする?
カプッ
甘えんぼさんめ。
◆
おじゃましまーす。
おお、中も綺麗なもんだ。
「変ですね?邪な者の気配は感じませんが」
確かに、でも見られてるなあ。
アリーを。超見てる。
「これは…」
アリーも何故か戸惑っているが、なんじゃろかい?
ん?なんか一杯こっち来てるぞ?
掃除道具やら庭道具?はさみとか鎌もだ。そりゃ一般の人はビビるわこりゃ。
「あなた!こちらになにかが!」
「うん。でも敵意は感じないなあ」
ぞろぞろ飛んできたぞ。セラは大丈夫かな?
ちうちう
大丈夫そうだ。
「間違いない。総員整列!!!」
サーイエッサー!!!
危ない声に出すところだった。
道具達の反応はさらに劇的だったが。一列に高く飛んで並んでいる。掲げ筒?
「諸君達はこれより私の指揮下に入る!異論は!?」
サーノーサー!!
ガチャン!!
道具達も隣の同胞にぶつかり合い音を立てる。
「ユーゴ様。彼らはブラウニーのようです」
「あ、ああブラウニーね。実物を見るのは初めてだったけど、物に宿ってシルキーと一緒に家事したりするんだっけ?」
「はい。お化けの正体は彼等のようですね。どうやら私にここにいて欲しいようですが」
2等兵の集団じゃなかったか。
「うん。中もこれだけ綺麗なんだ。皆で見て回って決めよう」
これは期待大だ。
セラ、正体はブラウニーだったよ。
ちう~~~
よし行こうか
◆
案内役の箒君に先導されて見て回ったが、どこも見事なものだ。ルーとリリアーナも満足している。
アリーは軍曹の目でチェックしていたが。
「それではここに住むことに賛成の人挙手!」
満場一致。セラの分は俺が代わりにやっといた。
◆
「店主殿。ここを購入することに決めました」
「本当ですか!?いや、本当にありがとうございます!試しに住むという方はそこそこいらっしゃったんですが、購入されるとは!!」
屋敷の門を出て不動産の店主に声を掛けるが、驚愕と満面の笑みだ。よっぽど頭痛の種だっただろう。
「それでは店の方に戻りましょう!煩わしい手続きもこちらでやっておきます!帰りの際は旦那様の靴も磨かせてもらいます!」
どういうこと!?
「いや、靴の方は」
「どうかやらせてください。先代に、購入する方には靴を磨いてから帰って貰えとキツく言いつかってまして。私も次の者にはそう言う予定でした!」
先代の頃からお祓いが必要だったのか…。
「ささ、どうぞどうぞ」
慌てなくても気は変わりませんよっと。
終の棲家という分けでは無いが、ここなら皆でずっと幸せに暮らしていける、そんな気がするのだ。
種族辞典
ブラウニー
ブラウニーは、古い屋敷の道具に宿る妖精の一種として考えられています。東方ではこれを付喪神と表現しているようです。
魔法の国の学会では、ブラウニーの存在は半信半疑と言った所で、これはブラウニーの存在をシルキーしか感じる事が出来ないからです。
通説では、彼らはシルキーが居なくてもほぼ完璧な仕事をこなしますが、これは誰かに住んで欲しいという分けではなく、宿った道具の本懐を遂げようとしているだけであり、新たな入居者が気に入らなければ、平然と追い出そうとします。
どうやら、屋敷の維持管理において、自分達より上手のシルキーに対しては絶対服従のようで、シルキーが能力を使っていないにも関わらず、道具が独りでに動いているようであるなら、そこにはブラウニーの働きがあるはずです。
ギネス伯爵夫人著 "大陸の種族"より一部抜粋
ー間違いない!見たんだ!部屋の隅で何か黒い物が動いているのを!!ー
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