日々日々日々
リガの街 sideユーゴ
「ん」
そうか、夜遅くにこっそり帰って来たから、気が付いたのはジネットだけだったな。
それなのについジネットを求めてしまった。まあ、ジネットも喜んでたから無罪だろう。たぶん。
遅いのに無理をさせたんだ、ここは俺の出番だ。
そーっとそーっと。
よし。
まずは服の回収だ。
むっ!?これはこの前ジネットが着ていたセーター!なぜまだここに…。というかジネット、俺の性癖突くのが上手すぎる。これが夫婦愛?そうに違いない。
次は風呂と洗濯だな。
◆
シャッ シャッ
うむ。今日も風呂場はピカピカだ。
新婚旅行に行きたい。定番は海の国のコテージと船旅だが、あそこの大将軍は俺の事を知っているからな…。
必要な事だったが、海を割っちゃったからなあ。モーセか。
それに、海に出るまでが長いが、転移で行くのは味気ない。
真逆の港の国も悪くは無いが、海を渡って交易に来た東方人が多いから、話されると困るんだよな。東方人と言っときゃ楽だからそう通しているが、いざ会うと話が噛み合わんから困る。
美の国…だめだ。皆がモデルになってくれと言われて、身動きが取れなくなるのは目に見えてる。
うーん。事前に話をしとけば海の国に行けるか?でも、会っただけであの爺さん心臓止まりそうなんだよなあ。昔のやらかしが響く。
よし、次は朝食だ。
◆
スパン
ああやっぱり…。指で切った方が早いな…。
そもそも、包丁刺さらないのに猫の手する必要はなかったな…。
ま、まあいい。
お、ルーが起きたな。
「あれ!?ご主人様!?」
「おはようルー」
そろそろアナタとかでもいいのよ?頑なに譲ってくれてないけど。
「ルーがやりますのに!」
「ダメダメ。共同作業、共同作業」
そうとも、断じてヒモじゃない。近頃近所の奥様の目線が気になるが、断じてヒモじゃないのだ。
「じゃあお手伝いします!」
「ありがとね」
味付けの方はまだ不安が残るから、大変助かる。後でキスしておこう。
「そういえばお姉ちゃん知りませんか?お部屋にいなかったんですけど」
「俺の寝室にいるよ。少し…遅くなるかも…」
ルーが羨ましそうな表情しているけど、俺のせいじゃない。二人きりだからか、妙に普段より可愛らしかったジネットが悪いのだ。
「おはようございます」
「おはよう」
「リリアーナお姉ちゃんおはようございます!」
リリアーナも起きたか。家に帰って来てから柔らかい表情に戻った。キリっとした顔も綺麗だけど、やっぱりこっちだ。抱きしめてしまえ。
「柔らかい表情に戻ってよかった」
ついでにおでこにキスだ。
「あぅ…だ、だんなしゃま」
はっはっ可愛い!!
「ジネット起こしてくるね」
準備はほぼできた。あとはジネットを浴室に連れて行ったら完璧。
◆
「ジネットー?起きてるー?」
ダメだ。ごめんねジネット。朝ごはんは食べたほうがいいから。
「ジネットー?」
揺らすと目が開いた。よし。
「あなた…」
首に腕を絡ませてベッドに引き込まれそうになるが、そうはいかんぞ!くらえ!お目覚めのキスだ!
「ちゅっ…。あなたこのまま…」
逆効果だったかな?目が潤んで、妖艶さが一気に噴き出して来た。
致し方なし!このままお姫様抱っこで浴室だ!
「きゃっ」
「浴室に出発します」
シーツに包んで浴室へGO。
◆
sideジネット
どうしよう、二人きりなんて滅多にないから昨日は随分と甘えてしまった…恥ずかしい。
だ、だが夫婦なのだ。当たり前のことだ。
「あ、あなた!?」
ソファに座っていると、夫が自分の膝に頭を乗せて来た。
「リリアーナのお勤めまで、ジネットに甘えることにしたんだ」
「あなた…」
もう、可愛い人。
思わず髪をすいてしまう。
「耳を搔きましょうか?」
「え?ほんと?嬉しいな」
何処からともなく、耳掻きと紙が出て来た。
むっ!?いかん自分の胸が邪魔で見えない!
あ、膝の先に頭が。
は、恥ずかしい…。
「痛くないですか?」
「うん。気持ちいい」
ふふ、幸せだ。
◆
sideルー
ご主人様と一緒に、ポワーとしたリリアーナお姉ちゃんを神殿に連れて行ったけど、神殿に着いたとたんにリリアーナお姉ちゃんの表情が、聖女様の顔に変わったのは驚いた。歩いてる途中は、えへへ、とか言ってたのに流石だ。
「あれ?ワインどうしたんですか?」
たまにご主人様とお姉ちゃんが飲むワインを見に来たら、あまり在庫がない。珍しい。
「ああ、ルーちゃんいらっしゃい。それがね、夜の国が大量に買い占めてるらしくて、こっちまで回ってこないんだ」
「へー」
吸血鬼や日の光を嫌う者達が多い国とは聞いてるけど、やっぱり吸血鬼って赤ワイン好きなんだ。白は普通にある。
なんだかご主人様が妙なお顔をしている。なにか昔あったんだろうか?
一緒に居て段々わかって来たけど、御主人様は色々な国で因縁というか関りがあるみたい。
「じゃあ、御主人、白を4本ほど」
「はいよユーゴ君。少し待ってね」
それにしても、少し離れたこの国にも影響があるなんて。
「剣の国にも影響があるなんて、すごく買い占めてるんですね」
「うん。多分、吸血鬼の王族のパーティーがあるんじゃないかと思ってる。派手にやるし、ざるなのが多いからね。代替わりでもするのかな」
「へー」
王族のパーティーってどんなのだろうか。きっと陰謀渦巻く伏魔殿に違いない。
「じゃあ、帰ろうか」
「はい!」
◆
お昼も終わって、ご主人様の隣で座っているけど、またお膝に乗っていいだろうか…。
「わあっ」
ご主人様に抱えられて、お膝に載せて貰えた上に、包み込むように腕が回された。
愛してます。
「うーん。ぴったり」
「はい!ぴったりです!」
そう、私達はぴったりだ。
ご主人様も私もお姉ちゃんもリリアーナお姉ちゃんも。
ずっと一緒。ずっと。
永遠に。
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