日々日々日々

リガの街 sideユーゴ


「ん」


そうか、夜遅くにこっそり帰って来たから、気が付いたのはジネットだけだったな。

それなのについジネットを求めてしまった。まあ、ジネットも喜んでたから無罪だろう。たぶん。

遅いのに無理をさせたんだ、ここは俺の出番だ。

そーっとそーっと。

よし。

まずは服の回収だ。

むっ!?これはこの前ジネットが着ていたセーター!なぜまだここに…。というかジネット、俺の性癖突くのが上手すぎる。これが夫婦愛?そうに違いない。

次は風呂と洗濯だな。



シャッ シャッ

うむ。今日も風呂場はピカピカだ。

新婚旅行に行きたい。定番は海の国のコテージと船旅だが、あそこの大将軍は俺の事を知っているからな…。

必要な事だったが、海を割っちゃったからなあ。モーセか。

それに、海に出るまでが長いが、転移で行くのは味気ない。


真逆の港の国も悪くは無いが、海を渡って交易に来た東方人が多いから、話されると困るんだよな。東方人と言っときゃ楽だからそう通しているが、いざ会うと話が噛み合わんから困る。

美の国…だめだ。皆がモデルになってくれと言われて、身動きが取れなくなるのは目に見えてる。


うーん。事前に話をしとけば海の国に行けるか?でも、会っただけであの爺さん心臓止まりそうなんだよなあ。昔のやらかしが響く。

よし、次は朝食だ。



スパン

ああやっぱり…。指で切った方が早いな…。

そもそも、包丁刺さらないのに猫の手する必要はなかったな…。

ま、まあいい。

お、ルーが起きたな。


「あれ!?ご主人様!?」


「おはようルー」


そろそろアナタとかでもいいのよ?頑なに譲ってくれてないけど。


「ルーがやりますのに!」


「ダメダメ。共同作業、共同作業」


そうとも、断じてヒモじゃない。近頃近所の奥様の目線が気になるが、断じてヒモじゃないのだ。


「じゃあお手伝いします!」


「ありがとね」


味付けの方はまだ不安が残るから、大変助かる。後でキスしておこう。


「そういえばお姉ちゃん知りませんか?お部屋にいなかったんですけど」


「俺の寝室にいるよ。少し…遅くなるかも…」


ルーが羨ましそうな表情しているけど、俺のせいじゃない。二人きりだからか、妙に普段より可愛らしかったジネットが悪いのだ。


「おはようございます」


「おはよう」


「リリアーナお姉ちゃんおはようございます!」


リリアーナも起きたか。家に帰って来てから柔らかい表情に戻った。キリっとした顔も綺麗だけど、やっぱりこっちだ。抱きしめてしまえ。


「柔らかい表情に戻ってよかった」


ついでにおでこにキスだ。


「あぅ…だ、だんなしゃま」


はっはっ可愛い!!


「ジネット起こしてくるね」


準備はほぼできた。あとはジネットを浴室に連れて行ったら完璧。



「ジネットー?起きてるー?」


ダメだ。ごめんねジネット。朝ごはんは食べたほうがいいから。


「ジネットー?」


揺らすと目が開いた。よし。


「あなた…」


首に腕を絡ませてベッドに引き込まれそうになるが、そうはいかんぞ!くらえ!お目覚めのキスだ!


「ちゅっ…。あなたこのまま…」


逆効果だったかな?目が潤んで、妖艶さが一気に噴き出して来た。

致し方なし!このままお姫様抱っこで浴室だ!


「きゃっ」


「浴室に出発します」


シーツに包んで浴室へGO。


sideジネット


どうしよう、二人きりなんて滅多にないから昨日は随分と甘えてしまった…恥ずかしい。

だ、だが夫婦なのだ。当たり前のことだ。


「あ、あなた!?」


ソファに座っていると、夫が自分の膝に頭を乗せて来た。


「リリアーナのお勤めまで、ジネットに甘えることにしたんだ」


「あなた…」


もう、可愛い人。

思わず髪をすいてしまう。


「耳を搔きましょうか?」


「え?ほんと?嬉しいな」


何処からともなく、耳掻きと紙が出て来た。

むっ!?いかん自分の胸が邪魔で見えない!

あ、膝の先に頭が。

は、恥ずかしい…。


「痛くないですか?」


「うん。気持ちいい」


ふふ、幸せだ。




sideルー


ご主人様と一緒に、ポワーとしたリリアーナお姉ちゃんを神殿に連れて行ったけど、神殿に着いたとたんにリリアーナお姉ちゃんの表情が、聖女様の顔に変わったのは驚いた。歩いてる途中は、えへへ、とか言ってたのに流石だ。


「あれ?ワインどうしたんですか?」


たまにご主人様とお姉ちゃんが飲むワインを見に来たら、あまり在庫がない。珍しい。


「ああ、ルーちゃんいらっしゃい。それがね、夜の国が大量に買い占めてるらしくて、こっちまで回ってこないんだ」


「へー」


吸血鬼や日の光を嫌う者達が多い国とは聞いてるけど、やっぱり吸血鬼って赤ワイン好きなんだ。白は普通にある。

なんだかご主人様が妙なお顔をしている。なにか昔あったんだろうか?

一緒に居て段々わかって来たけど、御主人様は色々な国で因縁というか関りがあるみたい。


「じゃあ、御主人、白を4本ほど」


「はいよユーゴ君。少し待ってね」


それにしても、少し離れたこの国にも影響があるなんて。


「剣の国にも影響があるなんて、すごく買い占めてるんですね」


「うん。多分、吸血鬼の王族のパーティーがあるんじゃないかと思ってる。派手にやるし、ざるなのが多いからね。代替わりでもするのかな」


「へー」


王族のパーティーってどんなのだろうか。きっと陰謀渦巻く伏魔殿に違いない。


「じゃあ、帰ろうか」


「はい!」



お昼も終わって、ご主人様の隣で座っているけど、またお膝に乗っていいだろうか…。


「わあっ」


ご主人様に抱えられて、お膝に載せて貰えた上に、包み込むように腕が回された。

愛してます。


「うーん。ぴったり」


「はい!ぴったりです!」


そう、私達はぴったりだ。

ご主人様も私もお姉ちゃんもリリアーナお姉ちゃんも。

ずっと一緒。ずっと。

永遠に。

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