先輩、私の事を振りましたね？後悔しますよ♪

第１章 貴方との再会

１、まさかの再会

第1話 私は貴方が好きだから（編集済）

俺の名は波瀬という。

本名、波瀬大博（はぜもとひろ）。

１６歳、県立岩手高校２年生。

そこら辺の凡人というか路傍の石かな。

そんな感じの人間だ。

本当に一般的に居る男子高校生だから。

教室でもそんなには目立たない人物である。

座右の銘は、あまり人を信じるな。

だからそのせいなのかも知れないが少し浮いている。

友人は１人だけ居るが、だ。

そんな俺の容姿としては黒の短髪に黒縁眼鏡。

少し暗めな顔の自分なりには整った青年顔と思っている顔。

身長は１７０センチ、中肉の体格で。

少しだけ運動不足の少しだけ脂肪付きの傷だらけの体。

そんな容姿だ。

なんというか下手に目立つ存在で無かったのが逆に良かったと思っている。

そんな俺だが朝、教室に来た時の事だ。

なんか教室の全てが大変な事になっていた。

何が大変かと言えば.....教室中で俺の事で大騒ぎになっているのだ。

どういう事だ。

美少女年下に波瀬がどうやら告白された様だ、とだ。

そしてそれを振ったと噂になっており。

俺に死ね、と目線を送って来る馬鹿共が居た。

しかしそれは良いが一体.....何がどうなっている。

この事は全然、口外していないのに、だ。

クラスメイト達が俺を見てくる。

「波瀬。お前さ、後輩の告白を振ったんだってな？」

「波瀬。大騒ぎになっているぞ」

「人気者の美少女が可哀想だな。ハハハ（威圧）」

超が付く程にボロクソに俺の事が噂されていた。

と言うかマジに何がどうなっているのだ。

確かに美少女の後輩から告白は受けた。

だけどあの告白は人が居ない所で行われた筈なんだが。

何故こんな感じになっている？

その事を考えながら溜息混じりに周りを見る。

すると丁度メッセージがスマホに来た。

そのメッセージには.....こう書かれている。

（私を振った罰ですよ♪）

「.....野郎.....」

いや、罰ってお前。

告白して来たのお前じゃないか。

それで振ったのは事実だが.....。

これは酷いと思う。

幾ら何でも無いんじゃないか？

☆

この事態が起こったのは３月の前日の事。

下駄箱を開けるとそこに手紙が入っていたのだ。

その手紙は純白。

つまり真っ白で.....中に表の白の封筒と同じ模様の白の便箋が入っており。

読んでみると一文だけこう書かれていた。

（中学時代から憧れていました。先輩。今日の１６時に学校の屋上に来て下さい）

それだけ。

差出人の名すら全然無かった。

俺は首を傾げながらその手紙の裏表を読んだが。

それだけしか確認出来ず。

結局俺は、なんだこれは悪戯か？、と思いながら下駄箱から上履きを出してそしてそのまま教室へ向かった。

その手紙を無視していれば良いのだがそのまま俺は屋上に向かってしまった。

何故かその手紙の主を放って置けなかったからである。

放って置けば良いものを、だ。

何故なのだろうか。

それからゆっくりと屋上のドアを開けると.....そこには茶髪のロングの少女らしき女の子が髪を靡かせながら立っていた。

横顔を見るなり相当な美少女である事に気が付く。

身長は平均的だがスタイル抜群。

本気か、と言えるぐらいの美少女だった。

驚きながら居るとその少女は振り返った。

眉毛も細く、目が大きい。

そして唇は柔らかそうだ.....ん？

見た事の有る顔だった。

俺は目を丸くしてその娘に聞く。

「おま.....七水穂高（ななみずほだか）か？もしかして」

「はい。その通りです。名前覚えていたんですね先輩。お久しぶりです」

「.....マジか.....」

七水穂高と言えば。

中学時代に俺は美術部に所属しており。

頻繁に後輩として俺を静かに慕っていた女の子だ。

部活なんぞどうでも良いと思いながら.....結局３年間、所属していた美術部。

今となっては、頑張ったな、と自分で自画自賛出来るぐらいだが。

それにしても.....変わったな七水。

何故、美術部に入ったかと言えば先生が煩かったから、である。

部活に所属していたら高校の入学試験で有利だぞ、と散々に言われたから、だ。

だから俺は仕方が無く絵にも興味無くだったが所属していたのだ。

で、七水はその時の後輩で有る。

あまり目立つ存在じゃ無かった気がするんだが.....。

それも相当に、だ。

七水をもう一度見る。

「.....何だかお前、この学校では入学当初から相当な美少女としてされているぞ。絶世の、だ。イメチェンしただけでそんなに変わるとはな。整形して無いんだろ？」

「整形はして無いですよ〜。あはは。そうですね。髪の毛を伸ばして.....そして少しだけ痩せました。本当に男の子が寄って来ますよ。私に」

人って本気でイメチェンをやれば変わるんだな。

クルリと俺の言葉にスカートを翻す可愛らしい笑顔の七水。

それを溜息を吐いて見つつ.....俺は聞いた。

校庭をそのまま見つつ、だ。

「でもその、何の用だ？俺に」

「あ、そうですね。先輩。えっと私と付き合って欲しいです」

「.....は？」

「あれ？聞こえませんでした？私と付き合って下さい♪」

何？付き合って下さい？

俺は目を瞬きして驚愕しながら.....見つめる。

するとテトテトと効果音でも鳴りそうな感じで俺に七水は近づいて来た。

そしてニヤッとしながら.....見上げてくる。

俺は？！と目を丸くして見つめる。

「私、先輩が好きなんですよ。中学時代から、です」

「.....え？」

「昔から憧れの存在でしたよ？だからどんな男の子よりも先輩が好きです」

「.....いや.....え？本気でか？」

ええ、と。

ニコッとする七水。

俺は.....顎に手を添えた。

そして考える.....が。

ふと.....頭をその事が過ってしまった。

その全てが、で有る。

俺は息を吸い込んで目を閉じて開けた。

そして告げる。

「七水。有難いが俺はお前と付き合えないんだ」

「.....え？.....え！？」

「.....お前にはもっと良い彼が居る筈だ。それに俺はこの学校ではボッチなんだよ。だからお前の憧れはもう遠退いている。だから俺は.....お前とは釣り合わない。御免な本当に」

「.....」

その様に言われると思って無かった様だ。

少しだけ複雑な涙目をした七水。

それから.....俺を見てくる。

でも私、先輩が好きなんです、と必死めいた言葉を発しながら、だ。

俺は首を振る。

「駄目だ。付き合えない」

「そんな.....」

「御免な。.....本当にすまない」

「.....」

ゆっくり俺の胸に縋って来るが。

それでも駄目と悟った七水。

俺を涙を少しだけ流して見て来る。

そして、ゆっくり分かりました、と呟いた。

それから意を決した様に見上げてくる。

「.....でも先輩。悪あがきです。私を振った事.....後悔させますよ」

「.....え？」

「私は先輩が好きです。だから絶対に諦めませんからね！」

「.....オイ.....」

私は.....私の中には憧れの先輩しか居ませんから。

そんな会話で俺達はそのまま別れた.....のだが。

然し乍らアイツがこんな事をするとは思わなかった。

教室中が振った話で蔓延している。

困ったもんだな.....。

☆

「噂が噂を呼んでいるぞ。ハッハッハ。お前、本当にヤバイ事をしたな」

「.....俺が振ったからだろうけど.....酷い有様だ」

「あはは。何にせよ蔓延する話だっただろうしな。お前に死ねと思ったのは初めてだしな」

「.....お前な。圏外だから呑気だろ。しかも死ねって.....」

数少ない友人はゲラゲラ笑いながらからかう。

飯島智明（いいじまともあき）は俺を見てきた。

俺は溜息混じりでその智明を見る。

相変わらずのはっちゃけだ。

俺と同じ黒縁眼鏡。

そして雀斑が有り、俺を柔和に見て来る。

身長は俺よりも４センチ高い。

部活は帰宅部だ。

まあヒョロガリと言える友人だ。

智明は机に腰掛けて自らの足に触れつつ俺を見てくる。

「でもよ。何であんな絶世の美少女の告白を全面的にキャンセルしたのよ。おかしく無いか？」

「人には人の事情ってもんが有るんだよ。分かるかお前」

「うーん。でもさ。その子は間違い無くお前が好きだったんだろ？付き合えばよかったじゃねーか。後悔するのは良く無いぞ」

「考えても俺とは.....色々と釣り合わないんだ。.....分かってくれ」

何じゃそりゃ。全く意味が分からん、と歯を見せて笑う智明。

その事に苦笑する俺。

そして直ぐに表情を変えた。

実はコイツには知らせてないが.....俺は本当に複雑な人生を歩んでいるのだ。

だから.....無理だと悟ったのだ。

幸せにはなれない。

そういう事だ。

親父から強烈に過去に虐待された俺は、だ。

智明を改めて見る。

すると智明は窓から外を見て話した。

「うーん。それはそうと次の時間って何だっけ？」

「次の時間は.....体育だな」

「我らニートにとってはクソだな.....」

「我らって俺もか。でも授業だからな」

盛大に溜息を吐いてバタバタする智明。

面倒臭いけどな、と思いつつ俺は立った。

そして体育を受ける為に.....着替える。

因みに噂については.....全く収まる気配が無く。

どんどんと広まっていった。

「んじゃ、まあとっとと着替えようぜ.....あれ？」

「.....どうした？智明.....え？」

教室の外、つまりを言うなら智明の視線の先。

そこには.....七水が手を振って立って居た。

何をしているんだアイツは。

何だ.....？と男子達がヒソヒソと噂をする中。

俺は駆け寄った。

そして怒る。

「何をしているんだ。ってかお前な。あんな事しなくてもいいじゃ無いか」

「私、先輩を振り向かせたいですからね」

「.....お前.....ハァ.....で、何の用事だ。急ぎなんだよ俺は。次の時間、体育だしな」

「そうですね.....じゃあ端的に。.....私とデートして下さい♪」

流石にこればっかりは顎が落ちそうになった。

人の話を聞いているのかコイツは。

無理だと言ってんのに.....だ。

まさかと思うがこれも作戦じゃ無いだろうな。

今言えば確かに教室に火を点けれるから。

現に油に火が点いた様に喧しくなってきたしな.....。

智明まで、死ねぇ！、と逆三角形の目で叫んでいる。

アイツ後でシバこう。

思いつつ七水を見つめる。

「.....あのな.....無理だと言っただろう」

「でも断る事は出来ないですよね？今の状況で♪あはは」

「.....」

ニコッとする七水。

コイツの将来が不安だな。

本当に、だ。

その様に思いながら.....俺は顔を引き攣らせつつ。

盛大にそのまま何回目かも分からない溜息を吐いた。

本当に何を考えているんだ.....。