第8話 特殊超級職

 あの後バルコニーでそのまま2人きりのお茶会をしながら様々な事を話した。

 俺の持つ特異な能力の数々そしてその起源。そして今後あのメンバーで中核にしていくべき連中。そして地球で発展していった技術や彼女の身辺や【大賢者】についての話。

 先の戦闘と合わせてかなりの時間が経過したように思えるが実際にはそれほどの時は経っていなかった。

「ところでかの魔人の名前に驚いておりましたが…何故です?」

「ちょっとした縁だよ。こっちにあの名前があって【魔帝】側尚且つ《武魔鋼将》と言うのに引っかかってな」

 …最悪の展開に近いからこそ【救世主】を開放したわけでもある。そして最悪の場合も考える必要がありもし……だった場合は不味い。

「だから今のところは【賢者】【封印神】の二天職デュアルマスターとしてこの世界の救済に貢献しよう」

 そして裏から支えよう。幸にしてその力は得たのだ。…基礎設計は頭にあるがアレはまだアイツらには早い…。

「助かります。そして現状の特殊超級職は【勇者ブレイバー】【聖女ヒロイン】【先導者ヴァンガード】そして未知の【救世主セイバー】の4つですね」

「ああ概ね正しい。後は【英雄ヒーロー】【妖精女王ティタニーア】【機王キング・マシン】【聖剣帝キャリバー・エンペル】【超将軍スーパー・ジェネラル】そして敵方の【|魔帝《マスター・エンペル】」

 と俺たちの現段階での話し合いではそうなっている。 

 ただもし俺が知る世界と同じならば…まだ色々と少ない。そして異端の極みたる【救世主】。俺はまだこれを使いこなせていない。多分そう言ったものだと言うことは推測が付くのだが…真の力を振るうことは少なくともこの世界ではないはずだ。

「無限級の1人や2人は欲しいものですね」

「確かにな。どれであっても強力だ」

 例えば【鍛治師】。俺の知る限りでの最凶の剣を製作した文字通りの世界最高の技術を持ちいくつもの兵器を作り上げて【魔帝】討伐などに貢献している。

「難しいと思うけどな」

「ええ。特殊超級職と同じで完璧なまでに才能ですから。才能拡張型とでも言うべき【勇者】それに【英雄】でも不可能」

 あくまで【勇者】や【英雄】や職に就ける数を増やすというもの。その真なる力はその組み合わせによるシナジーである。


「ふぅ。にしても貴方が居て助かりました」

 すっかり冷え切った紅茶の飲み切ると彼女はそう切り出した。

「先の《武魔鋼将》の戦闘とこれからについての方針が話せてよかったです。…それに貴方はいざと言うと躊躇わないでしょう」

「殺人的な意味でか?」

「ええ。【勇者】の出身地の多くは平和であると聞きます。それ故に最初の内は完全に躊躇います」

「俺も最初はそうだった」

 寧ろそうでない場合は怖いぞ。サイコパスか狂人である。もしくは国家権力すら真っ向から対立することも厭わない連中。

「…いざと言うと時はそう言う役割を押し付けるかもしれませんが…」

「大丈夫だ。アイツら…俺が勇者パーティーとして組むべきと指定した連中は」

「ですが…」

 エリスシア皇女の顔が陰る。まあ分からなくもない。あんな平和な国に居てそれでいて殺しを躊躇わないのは少しばかりおかしい。

「あの連中は多分だが物心付いた頃からそう言った事を叩き込まれている。特に勇はな」

「【勇者】の方ですよね?何故にそんな事に」

「天皇…俺らが居た国の王族の最強の盾と呼ばれる家系で天武の才を持つ男でな。多分その剣で殺した数は既に3桁はいるはずだ」

 何せ動乱期とでも言うべき時期を乗り越えているのだ。世間一般には知られていない影の戦争とは言えども歴とした戦果である。

「最悪の場合はこっちで上手くフォローするさ。それより戻らなくて良いのか?」

 風魔法で歓迎会の様子を聞いているが俺と皇女が居ない事はバレてないみたいだが。…湊たち以外には。

「ええ。堅苦しいの苦手ですしもう少しで諸國漫遊している姉が帰ってきますし兄も妹もいますから。皆仲良くて家族でピクニックなんかも行きますよ」

「兄弟多いんだな」

 王様頑張りすぎだろ。

 いや皇妃が多いのか?

「そうですね。ほぼ全ての国で一夫多妻もしくは一妻多夫ですから」

「…。なんか羨ましいな」

 色んな意味で。多分此処の国の皇族は確実に妾なんてないだろうし。

「そう言う願望があるのですか?」

 冷気を孕んだ双眸でじっと見つめてくる。なんかもの凄く怖い。

「違う。言ったろ。俺が他の世界を知ってるの。その時にも王家と関わることが多くてな。凄くギスギスしてて気持ち悪かったし仲良かった姉弟がいわゆる妾の子で…」

「ああなるほど。そう言い事ですか」

 てっきり……かと思いましたよなど言う呟きは聞いていない。ただ思っ切り顔を真っ赤ににしているので側からみるとかなりやばい構図であろう。

「それに俺も血が繋がる繋がった家族は居ないしな」

 勇の家…近衛家の分家の1つの前原に引き取られているだけで俺は自分の出生については何も知らない。誕生日すらもだ。家族の皆は良くしてくれるがそれでもやっぱり気が引ける。

「純粋に羨ましいが近いのかな。…話しておいてなんだが気にしないでくれ」

 初対面で話すことでもなかったはこれ。いやそれだけ彼女を信頼できると言うべきか。秘密の数々を共有したからこそ生まれた連帯感からか彼女には預けても良いのかもしれない。

「…はい。そろそろ戻りましょうか」

「だな。エリスシアさま」

「堅いの辞めて頂きませんか?共犯者なのですから」

 間違ってはないけどな。互いにかなり危険な爆弾を所有しているのは確かだし。

「分かったよ、エリス」

「ええそれでこそ私の…新一です」


 そして2人で会場に戻ると様々なところから関係を邪推された。

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