月影族 (つきかげぞく)
アカサ・クジィーラ
赤き、紅い月
日本の田舎町、
”月影族”
新月の日に突如として現れる人喰いの民族。そのような噂はのちにその地域だけでなく日本中、いや世界中に広まっている。
その噂が初めて広まりだしたのは、
7年前の藪ヶ崎高校の都市伝説研究部が発端である...
◆
ある日、その部活の部長、
新月の夜、塾の帰りに人を食らう人たちを彼女は見てしまったのだ。彼女は恐怖で足がすくんでしまった。その時、そいつらがこちらを向き、追いかけてきた。
彼女は重くなった足で後ろを見ずに必死に逃げた。家に着いたところで後ろを振り返ると、そいつらはどこにもいなくなっていた、新月の雲隠れの刻に。
その夜、彼女は母にこの夜の出来事をありのままに話して、通報してくれた。そして、その夜は恐怖でなかなか寝付けなかった。
そして次の日、いつも通りの授業を受けていつも通りの放課後がやってきた。
彼女は昨日の夜のことを一部始終、ありのままにたった3名の部員に言った。
芥川
鐘鶴 翔陽「まあ、おもろいネタやけどな、何か引っかかるねん」
麗 真帆「それって何なの?」
鐘鶴 翔陽「まあ、わかんないんだけどね」
麗 真帆「え〜わかんないの〜」
と、二人がイチャLOVEし始めた。私は内心、クソとかリア充消えろとか思ってたりするが、まあ私には彩葉くんがいるからと思うようにする。
話がかなり脱線した、というより私の理性が崩れてしまう前に本題に入るとする。
有賀 知恵「ということで、その謎を解きに行くのだけど、着いてきてほしいな」
芥川 彩葉「どこに?」
有賀 知恵「
私がそう言うと、彩葉ちゃんはオカルトマニアとしてぜひ行きたいと、即決だったが、翔陽と真帆は内心ビビってるのを感じた。二人はそんなにこの部活に興味はなかったのだけど、私がこの部活をやりたい、って言ったら心優しく付き合ってくれてるだけだから、あまり危険なことをして欲しくない気持ちは十分にあるので、
有賀 知恵「二人はどうする?」
と、あくまで強制ではないよと相手に伝わるように言ったら、二人は一瞬黙った。そして互いの顔を見合わせ、悩んでいるような顔を浮かべたが、すぐにいつもの優しい顔になり、一緒に行ってくれることになった。
そんな
その帰り道...
あの二人とは近くの駅までは一緒に帰っていったが、そこから私と彩葉くんは二人と別れ、自宅に向かった。
芥川 彩葉「本当に人喰ってたの?」
有賀 知恵「うん、本当だよ」
芥川 彩葉「そう・・なんで、人を喰ってたのかな?」
有賀 知恵「なんでって言われても・・困るよ」
彼がなぜ、このようなことを言ったのか分からなかった。私が見たあの光景は本当に現実だったのか、今でも疑問に思う。実はあれは私の夢、悪夢なのではと今日一日中ずっと考えていたがまだ解決してない。だから、私は今日の夜に確かめに行くのだ。そこに行けば彼の言ってることもわかるかもしれない、でも本当は怖い。あんな光景を見て、易々と確かめに行く神経も多少おかしいのではと、思っていたが、何も考えないことにした。
■
月の周期が進み始め、1日。
父は仕事、母も仕事で誰もいない食卓を過ごす。そしたら、テレビにある人が映った。”今日未明 八尺神社近くにて赤坂
私は少し頭を考える。帰り道に八尺神社の前を通ったが、警察はおろかメディアの集団も見かけてなかったのにいきなりニュースに載った。これはおかしい。
その理由をあれこれ考えていたら、いつの間にか8時半になっていた。食べかけの冷めたご飯たちを残し、私は家の鍵を閉め、その現場に向かった。
■
家から20分程度歩いたら、彩葉くんが河川敷の方を向き、目に何かきらめきがあるのを感じた。私は、恐る恐る近づき後ろから彼を驚かした。彼はビクッとし、後ろを振り向き、恐怖の顔から安堵の顔になった。
芥川 彩葉「もう、知恵ちゃん、驚かさないでよ!」
有賀 知恵「ごめんごめん、たまたま見かけたから後ろから驚かそうかなっ て・・じゃあ、一緒に行こう♪八尺神社にね」
彼は思いっきり、縦に振ったが、私には感じた。彼が悲しそうにしているのを。
そして、二人で一緒に神社に行ってる間、そんな大した話をしなかった。今日の帰りの会話とは違うのは確かだ。
私たちが9時ちょうどについた時、彼らはすでにいた。
鐘鶴 翔陽「おい、遅いぞ」
麗 真帆「私たちの方が早いって、どういう神経してるの?」
有賀 知恵「ごめん、少し興味深いニュースに見入ってね...」
麗 & 鐘鶴「ニュース?」
彼らの目は真っ直ぐに興味津々だが、彩葉はなぜか悲しい目をしてる、気がした。
有賀 知恵「昨日、私さ人が喰われてるの見たじゃん。その人がニュースで残酷な姿となって発見されたらしいの」
鐘鶴 翔陽「え?それって・・俺らやばくない?」
麗 真帆「うん、やばいよね。それ!もうやめにしない?」
有賀 知恵『でも・・気になるじゃない?』
私がそう言おうとした時、彼、芥川彩葉は言った。
「それね、僕の・・叔父だったんだ」
彼の一言は場を凍りつかせた。その状況下に彼は続ける。
「僕の叔父を殺した、いや喰ったのは、この国に伝わる人喰い文化のある”月影族”って民族に違いないんだ」
有賀 知恵「え・・嘘...だよね...」
麗 真帆「月影族・・?そんなの聞いたことないよ」
芥川 彩葉「だって、この民族・・政府に隠蔽されてるから、僕たちには一切そのような情報は入ってこないんだ」
鐘鶴 翔陽「隠蔽って...そんな危険な連中を?」
芥川 彩葉「多分、僕たちを守るためだと思う」
有賀 知恵「・・だから、昨日の事件が民衆に伝わるのが少し遅かったんだ・・・ん?待って、なんで月影族だってわかるの?」
芥川 彩葉「おじさんが、月影族の研究をしてたことを知ってたから。」
麗 真帆「そう...だったんだ...」
この空気感が重く感じられた。私も初耳な情報で困惑した。
有賀 知恵「彩葉には、申し訳ないんだけどさ、そのおじさんの研究資料とかってあるの?」
芥川 彩葉「...取られた、政府に・・」
鐘鶴 翔陽「は?なんで政府が・・」
麗 真帆「そんだけ隠したい事実があるの?」
芥川 彩葉「わかんない、おじさんは仕事のこと全く、教えてくれなかったから」
有賀 知恵「ますます謎が深まった・・」
鐘鶴 翔陽「とりあえずさ、調査しようや。そのために来たんだから」
有賀 知恵「そうだね、月影族とは何か、気になるしね。」
麗 真帆「彩葉くんは大丈夫なの?」
芥川 彩葉「うん・・」
その後、彼らは八尺神社の周辺を探索したが、手がかりは全くなかった。
その日は、ひたすらさ足で探しまくるのはやめて、次の日からネットで色々と調べることにしたが、なかなか情報を手に入れられず約15日が経った...
◆
私は、ずっとパソコンの前でひたすらに”月影族の謎”について調べていたが、何も成果は得られなかった。その時、部室に急いで入ってくる男子一名。
芥川 彩葉「思い出したよ、知恵ちゃん!」
有賀 知恵「え、どうしたの?」
芥川 知恵「前、おじさんがポロッと言ったことを思い出したの。」
有賀 知恵「本当に!?何なのよ?」
芥川 知恵「月影族は”空白の4世紀”に現れ始めたとされ、人間が人間を喰い、生きながらえた人々の末裔なの。そしてその文化が時が経つにつれ、”目が合った”者を喰い殺すという恐ろしい文化になった。」
有賀 知恵「目が合っただけで...」
芥川 彩葉「それでね、この月影族はなぜか、新月の時に活発に動くみたいなの。」
有賀 知恵「確かに前、それらしきものを見たとき、月はなかった...」
芥川 彩葉「そして、次に新月になるのが、〇△月30日...その時に真実を確かめるしかないよ。」
もちろん、私は行く。けど、死ぬかもしれない恐怖がある。まだ、覚悟はできてない。その旨を彼に伝えたら、一週間後もう一度みんなに聞く、とそれまでに覚悟を決めて欲しいとのことだ。
それから、一週間の間私は今までに感じたことのない恐怖を感じていた。もしかしたら、死んでしまう。今回の部活動は違う。
◆
一週間後、彼がみんなのいる部室に来て、『30日に真実を突き止める。覚悟があるものには、ぜひ来て欲しい。』と言った。翔陽と真帆はイエス返事だった。
それなのに、私は...
有賀 知恵「今までの部活動とは違う、あまり危険なことは学校としては認めるわけはないはず、でも真実は知りたい。それがこの部活動の信念、それを易々と折ってしまっていいものなのか。私はずっとこのことについて考えた。そして導き出した答えは...”みんなで知って、生きて帰ろう”」
私の思いはしっかりとみんなに伝わった。
芥川 彩葉「ありがとう...知恵ちゃん、僕のわがままに付き合ってもらって...」
有賀 知恵「彩葉ちゃんのわがままではないよ。私の、いやこの部みんなのわがままだから。」
鐘鶴 翔陽「そうだぜ、忘れんなよ。俺たちは仲間だ」
麗 真帆「翔陽が初めていいこと言ってる、明日は雨だね」
鐘鶴 翔陽「真帆ちゃん、そりゃないよ〜」
久しぶりにこの部室に笑いが、希望で満ちたような気がした。
この光景が最後かもしれないと思うと、私は涙を流す。が、すぐにそれは引いた。
必ず、みんなで真実を知り、生きて帰ることを決心した。
◆
そして、新月の夜。
私たちは八尺神社前に集まる約束をした。
私は少し遅れた。寝坊したからだ。危機感がないのか私は・・・
そんなことはどうでもいいのだ。私が集合場所についた時、約束の時間とは五分遅れたが、誰もいなかった。不思議に思いながらも、そこで数分待った。しかし、誰も来なかった。鳥肌が立つ。もしかして・・・
そんな不吉な予感さえ感じた。その時、遠くで悲鳴が聞こえたような気がした。八尺山の中腹あたりだろうか、私は気になってそちらへ向かうことにした。
もうすぐ冬にさしかかる時期なので、かなり肌寒いながらも一歩一歩ずつ八尺神社の御神木のある頂への山道を登る。私はふと気づいた。この道に赤い血が道なりに沿って続いていた。恐怖を感じた。みんな、大丈夫なの?
そして、大きな血だまりを発見した。そしてあたりを見渡す。
グチャグチャと、何かを食べる生々しい音が草むらの奥から聞こえる。
そーっと、覗いたら恐ろしい光景が目の当たりにした。
無残な姿と化した翔陽くんが何者かに喰われていたのだ。
私は思わず、後ずさりしたら、落ちていた木の枝を踏み。音がなった。
そして、奴は振り向いた。私は必死に目を合わせないようにした。
そしたら、奴はそのまま彼を喰い続けた。私は目を合わせないようにその場からゆっくりと離れた。翔陽くん、ごめん。
私は怖くなり、急いで下山しようとしたら、彼の反対の位置にまた何かを喰う者を発見した。それが何なのかすぐにわかった。真帆ちゃん...ごめん。
私は涙ぐみながら急いで来た道を戻る。そして、何かとぶつかって、地面に座り込んだ。
芥川 彩葉「イッタ‼︎・・あ、知恵ちゃん」
有賀 知恵「・・彩葉ちゃん、真帆と翔陽が・・・」
芥川 彩葉「わかってる・・知恵ちゃん、お願いがある」
有賀 知恵「え?」
芥川 彩葉「このカメラのデータをインターネット上に載せて欲しいの、月影族の証拠動画だから」
有賀 知恵「・・待って、彩葉ちゃんはどこに行くの?」
芥川 彩葉「・・・僕は見ちゃったから・・・すぐにここから離れなくてはならない、頑張って生きて、知恵!」
有賀 知恵「え、嘘だよね。ねえ!」
私は泣きながら言った。彼は黙り込んだ。
芥川 彩葉「・・大丈夫、僕は生きて帰るよ。だから、待っていて」
有賀 知恵「・・うん、待ってるからね。私、待ってるから」
彼が立ち、山頂へ向かおうとした。そして、数歩歩いて振り向き、
『必ず、帰るからね。あと、知恵!・・大好き』
そう言って、闇夜に消えていた。
そして、下の方から聞きなれない言語を放つ人々が走り込んで来た。咄嗟に月影族と判断して、下を向いた。
奴らが通り過ぎた時、空は無数の星に三つの流れ星が流れた...
月影族 (つきかげぞく) アカサ・クジィーラ @Kujirra
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