第22話
フジケンは説教を続ける。
「スポーツみたいにいい汗がかけるのか? 筋肉がつくのか? 人間関係や社会常識が学べるのか? お前の青春を無駄にしているんじゃないか? その先に何かあるのか?」
(ゲームをやっていないお前にその先に何があるのかわかるものか!)
フジケンは言葉をいったん区切って、俺の顔を見てからまた一言嫌なことを言った。
「そんなくだらないもので何を決められる?」
(わかるものか! やったことのないやつにわかってたまるか!)
俺は黙り込む。
フジケンは話を続ける。
「補導されたわけでもないから、今のうちにそういうくだらんことは辞めておくんだな。このままいけばお前は時間を無駄にして、後悔したまま人生の敗者になるんだぞ。お前はゴミみたいな人生を送りたいのか?」
(ゲームを続けていくことはゴミなんかじゃない! 間違いなんかじゃない! 辿り着いて証明させてやる!)
俺はフジケンの話を聞きながら、フジケンを睨む。
「なんだその目は?」
威圧感のある表情でフジケンは俺を怒りが見える表情で俺を睨み返す。
「……いいえ……何でもありません」
「もういい、さっさと教室に戻れ。いいか? ゲームは意味のないことだ。ゲームなんぞさっさと卒業しろよ」
(誰が卒業してやるか! ゲームは楽しい。それをフジケンにも伝えて解らせてやりたい。けど上手く言えないんだよなぁ。あの感じとか興奮や熱気とか……でもゲームをやっている先にはフジケンの言うように本当に何もないかもしれない……)
そんなことを考えながら、俺は職員室から出て行った。
そして熊倉さんのことを思い出し、自分の中である決めごとを作った。
(もう一回だけサボって、全国に行くための地域大会に参加してみよう。それで何もつかめなかったら俺はゲームを辞めよう。そこに何かあれば、例えそれが一瞬で通り過ぎるものだったとしてもゲームを続けよう)
職員室から出ると志穂と大槍が待っていた。
志穂は心配そうな表情で俺に話した。
「大丈夫だった?」
「まぁ、なんとか」
大槍は楽しいことでもあったかのように喜んでいる。
「途中から聞いてたけど、ゲームバカのお前ことだからさっき話してた熊倉って人の言うように地域大会出るんだろう? お前のことだからとっくにそう思っているじゃんか」
「やっぱりバレてたか」
「友達だからな。まだ友達になって一か月くらいだけど、お前の考えくらいわかるじゃんか。地域大会優勝して全国大会行けよな。途中で試合に負けんなよ」
「ああ。地域大会に優勝して参加することが出来る全国大会にも俺は必ず出る」
志穂が笑顔で答える。
「やっぱり沖田君はそうじゃないとね。大会終わったらお弁当作ってくるから、ゲームセンターから4月に一緒にお出かけしたあの公園に来てほしいな。大会終わるの何時くらい?」
志穂の楽しそうな笑顔を見ると、ちょっと気持ちが複雑になる。
付き合わないでただのお出かけで弁当まで作ってくれるのは、世間一般では彼女が彼氏にすることなんだろうけど志穂の場合は違うんだろうな。
もちろん大槍も志穂から俺の告白のことなどを入学して間もない頃に話していて、それを知っているので仕草や表情がいつも通りなので何とも思わなかったようだ。
「17時頃には終わると思う。その時間あたりにに公園行くよ」
「うん。約束だよ。沖田君の好きな焼きビーフンとサンドウイッチ作るね」
そう言って俺たちは昼休み終了のチャイムが鳴って教室に戻った。
※
朝起きて、スマホのカレンダー画面を見て金曜日であることを確認した。
この日は全国大会に出場できる権利が、今日の地域大会の優勝者にしか与えられないという俺にとっては大事な一日だ。
(いよいよ大会だな。大会は初めて出るが、はたして俺の実力がどこまで通じるのか疑問だ)
一応大会前に自分の部屋でアーケードコントローラーを使って、オンライン対戦で実戦の中で色々試してそれを学んだ。
朝早くカバンを持って親に学校行くと言って地域大会のアドアーズのゲームセンターに向かった。
カバンの中には私服が入っている。
流石に平日の学校がある時間帯に制服のままゲームセンターで試合をしていたらまずいので、志穂と一緒に4月にお出かけしたあの公園のトイレで制服から私服に着替える予定だ。
母親からはあんたが早起きするなんて珍しいこともあるのねっと言われ不思議がられた
が、俺だってたまには早起きして学校くらい行くさっと答えたら、まだ朝食の準備が出来ていないということで外食用の食事代500円をくれた。
いつものように行って来ますと言って外に出た。
途中で自販機で買った缶コーヒーを飲んで、コンビニのごみ箱に捨てる。
公園に行ってトイレで私服に着替えて、制服をカバンに入れてアドアーズのゲームセンターに向かった。
(その前にあれをやっておくか)
俺はスマホで母親の電話番号を入力した。
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