第36話帰還命令

「アティさん、ギルドからお客さんですよ~。」


ラミア商会の宿屋の私の部屋でリリとモモと今後の話をしていると、店員からの知らせが届いた。


「わかりました~。今、いきま~す。」


「ギルドから、客?何かあったのでしょうか。アティさま。」


「さ~?とにかく、行ってみましょ。」


そう言って、リリとモモとロビーへ向かうと、そこにはジェシカさんがいた。その表情は緊張からか何かあったように感じることがわかった。


「何かあったのですか?」と訪ねると、無言で頷き、「ラミア様より火急の知らせが入っております。ギルドにて、ドリトル様と共に、とのことですので、お急ぎください。」


(ラミア姉さんから急ぎ?しかもドリトルさんと一緒に?)


私達がギルドに到着すると、すでに連絡が入っていたのか、マスターの部屋に直ぐに通してもらえた。すると、そこにはドリトルさん、シェーンさんと、もう一人懐かしい顔のSSS冒険者のミリアさんがいた。


「お久しぶりですね、ミリアさん。王都から戻られたのですね。」


「久しぶりねアティちゃん。戻ったと言うよりは戻されたって感じかなあ、ラミアちゃんにね。」そう言うと少し苦笑いをしていたが、表情は固かった。


(私達だけじゃなく、ドリトルさんやシェーンさん、ミリアさんまでも呼ぶなんて・・・。)


そこには、ただならない重い空気が漂っていた。


「では、これを見てください。」そう言うとジェシカさんは一つの水晶玉を机に奥と、そこからラミアの姿が浮かんできた。どうやら商会の通信用アイテムのようだ。


「アティちゃーん、元気?どう、寂しくない?ねえ、シルカ。この通信用の水晶、私とアティ用にちょうだいよ~ね~。」


「なにをふざけた事を言っているのです。そんな事のために繋いだのではないのですよ。」


「だって~久しぶりにアティちゃんとお話できるんだよ。本当は毎日お話したいのに~。」


「アティ様が里を出てまだ数日しか経ってませんよ。」こんな会話でさっきまでの緊張感がとても残念な空気に変わった。


「あの~ラミア姉さん。そのような事で呼び出したのですか?」私はこの重い空気の中すごく恥ずかしくなって問い詰める。すると「いや~ね・・そんな訳ないじゃない~・・・。」と言い訳した後に、顔つきが変わり一気に緊張が増した。


「ドリトルさん、ミリアさん、そしてシェーンさんアストラル教国について非常に危険な情報を手にしたので、情報共有をしたあと、王にも伝えて頂きたいのです。」


その言葉にドリトル、ミリアの二人は顔を見合わせ、「王にも伝えろとは・・・。それほどの事態が・・・・。」


ドリトルの言葉に頷くラミア。そして、話を続けた。


「今、アストラル教国を中心に広がっている<阿片>による中毒事件は教国教皇<佐々木 圭>によるものです。」その言葉に驚愕だったが特に<佐々木 圭>と言う名前に驚きを隠せなかった。それは、ドリトルさん達も同様だったようで「佐々木 圭だと・・・。奴は亜門が殺したはずだ・・・。」と聞き返したぐらいだった。


「残念ですが、事実です。どうやったのかはわかりませんが、奴は生きていたのです。そしてアストラル教国教皇となって、この世界に存在しない阿片を広げたのです。これにより、ラミア商会及び御劔の里は戦いに入る事になるでしょう。そして、アティ。貴方は直ぐに里に帰ってくるのです。わかりましたね。」


そして、私への突然の<帰還命令>だったのである。

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