第26話亜門の怒り

俺が転生してから半年が過ぎた有るとき、それまでの暮らしが一変する出来事が起こった。


その日の朝、茜が出掛けて行き、中々戻って来なかったのである。クリスもラミアも心配していた、深夜に玄関先で何かが倒れる音がして、ドアを開けると其所には血まみれの茜が倒れていた。


「あ・・・茜。どうした・・・何があったんだ・・・。」


「・・・ク・・リス・・。ラミアと・・いっしょに・・にげ・・て・・・。」


「どういう事だ・・。茜・・・。」


そう訪ねようとした俺をクリスが遮り、「・・まずは、ベットに寝かせて休ませましょう・・。」と促した。


そして、茜をベットに横にして怪我の治療をしていると、ゆっくりだが、話してくれた。




「クリス、皇国は、負ける。帝国の奴等、とんでもない奴を召喚してしまっていた・・・。」


茜の話では、帝国は<佐々木 圭>という錬金術士を召喚し、その男は、よりによって、元の世界の重火器や大量破壊兵器を生みだしたそうだ。この世界のクリスには、理解できない事だろうが、元の世界の知識を持っている俺には、それが、どういう意味かを理解するのは簡単だった。


「あ・・れは・・ここに・・あっては・・・いけない・・・。このま・・ま・・では、この世界が・・・ほろび・・・る・・・。」


茜は、帝国の武器の破壊に向かったが、大量の銃によって返り討ちにあったのである。もし、このまま兵器開発を続けた場合、最終的に核兵器にまで進む可能性がある。そんな事は絶対にさせてはならない。


「亜門・・あなたなら・・解るでしょ・・・おねがい・・奴を・・たおして・・・それが・・できるのは・・・あなただけ・・・帝国は貴方のことを・・しらないし・・・貴方なら・・できる・・・。」


そして、俺の手をにぎり「お願い・・この世界を・・守って・・・。」


そう言って、気を失ったのである


<佐々木 圭>一体なにを考えているんだ。護身用ですまないぞ。




そして、よく朝、俺はこの日を絶対に忘れない。


俺は、茜に精の付くものをと思い、朝から狩りに出掛けた。今思えば、なぜ出掛けたのかと後悔ばかりが浮かぶ。


森に入って、しばらくした時、家の方角で大きな爆発音がして、その後、無数の銃声が響き渡った。俺は、一目散に戻った時、その目に映ったのは、盛大に燃える家と銃剣の付いたライフルを肩に担いで笑っている兵士たち。そして、その銃剣には、茜とクリスの頭が刺さっており、晒し首のようになっていた。その後の事は覚えていない、気が着いたら、その場にいる全ての兵士をぶったぎり、二人の首を取り戻して、大声で泣き叫んでいた。


「絶対に緩さねえ・・・帝国の奴等・・<佐々木 圭>・・おまえら全員・・・皆殺しだ・・。」

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